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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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俺の妻は

不倫しているかもしれない。

郁人(イクト)

………………………

風呂にも、トイレにもスマホを持ち込んでいる。

郁人(イクト)

なぁ、かえで

かえで

何?

郁人(イクト)

あんまり五月蝿く言いたく無いんだけど、

郁人(イクト)

最近、帰りが遅いよな?

かえで

…!

かえで

ごめんなさい

かえで

かえで

習い事で、しばらく後片付け当番になっちゃって…

郁人(イクト)

郁人(イクト)

刺繍教室の?

かえで

…そうよ

郁人(イクト)

…そうなんだ

郁人(イクト)

(怪しい)

かえで

郁人さんが、想像しているようなことはないから

かえで

安心して下さい

郁人(イクト)

…分かった

郁人(イクト)

(そんな言葉、信じられるかよ)

郁人(イクト)

(うちの親と、かえで仲良いみたいだから)

郁人(イクト)

(探り入れてみようかな)

郁人(イクト)

ねぇ、母さん

郁人 母

どうしたの?

郁人(イクト)

かえでと、最近会った?

郁人 母

最近?

郁人 母

いつだったかしら…

郁人 母

どうして、そんなこと聞くの?

郁人(イクト)

…最近、帰りが遅いから

郁人(イクト)

心配なんだ

郁人 母

そうだったのね

郁人 母

あなたが送り迎えすればいいじゃない

郁人 母

習い事、毎日行くわけじゃないんだし

郁人(イクト)

水曜日は送迎できるけど

郁人(イクト)

金曜日は忙しいから送迎できないし…

郁人 母

嫌ね

郁人 母

妻の習い事の送迎もできないオトコなんて

郁人(イクト)

(母さん、かえでの味方かよ)

郁人(イクト)

(…まぁ、専業主婦同士、仲が良いから仕方ないのかな)

郁人(イクト)

母さん、もしかえでが何か話したら、俺にも教えてくれないか

郁人 母

なあに?

郁人 母

あなた達夫婦なんだから…面と向かって話しなさいよ

郁人 母

あなたがそんなんだから、かえでさんはいつまで経っても再就職しないんじゃない

郁人(イクト)

いや、それはアイツの意思だと思うけど

郁人 母

そうじゃないわ

郁人 母

郁人 母

はぁ、まぁいいわ

郁人 母

とにかく、習い事くらい好きにさせなさい!帰りが遅くて心配なら、あなたが送迎すること

郁人 母

以上よ

郁人(イクト)

分かったよ

郁人(イクト)

(くそ…)

郁人(イクト)

(あとは…実際に尾行して確かめるしかないよな)

探偵を雇う金は無い。

もし今日不倫しなければ、毎日の仕事を定時退社すれば、尾行は容易い。

郁人(イクト)

(目立たないように変装しなくちゃな)

郁人(イクト)

(念の為、カメラも用意して…)

俺は、妻の尾行を始めた。

罪悪感すら、全く感じない。

郁人(イクト)

(怪しい行動を取るほうが…悪いんだからな)

▲月2日

今日は妻の刺繍教室の日だ。妻は16時に●●ビルの2階に入った。普段なら、18時くらいまで授業をしているらしい。

17:55

刺繍教室の生徒たちが、階段を降りてきた。自前のバッグに刺繍が入っているから分かりやすい。

18:25

妻がようやく降りてきた。本来なら、家に帰るのならば、紙洲町駅に徒歩で向かうはずだが…

郁人(イクト)

(なっ、タクシーに乗った?!)

18:30

タクシーに乗り込む。俺も慌ててタクシーに乗り、追跡をする。

郁人(イクト)

(どうか、見失わずに追跡できますように…!)

…追跡成功を祈るような気持ちと、できれば不倫は俺の勘違いであってほしいという願望が入り乱れ、感情がメチャクチャだ。

郁人(イクト)

あっ、かえでが降りた!

郁人(イクト)

運転手さん、止めてください!

郁人(イクト)

え?ここって…?!

不思議だった 何故こんな所に来ているのか

郁人(イクト)

郁人(イクト)

(俺の実家…?!)

郁人(イクト)

(母さんに探りを入れたこと、すでにバレてるとか…?)

郁人(イクト)

(いや、いくら仲良しな嫁と姑でも、そこまで話さないよな…?)

かえではインターホンを鳴らした。

郁人 母

はい、かえでさん、お疲れ様

かえで

今日も、刺繍作りました

郁人 母

早速だけど、見せてほしいわ!上がって上がって

かえで

はい

このままだと、部屋の中に入ってしまう。

郁人(イクト)

(俺も、室内に入らなきゃ)

郁人(イクト)

(仕事で、偶然近所に来たフリをしよう)

郁人(イクト)

あ、母さん!俺だよ

郁人 母

あら、郁人?!

郁人 母

珍しいわね、突然来るなんて

郁人(イクト)

取引先がこの近くだったから、

郁人(イクト)

ついでに寄ろうかと思って

郁人(イクト)

(変装して来たから、変な格好だけど…別に良いよな、実家だし)

郁人 母

ちょうど、かえでさんも来てたのよ

郁人(イクト)

郁人(イクト)

あ、そうなの?

郁人 母

お茶入れるわね

郁人 母

上がって

郁人(イクト)

…かえで

かえで

郁人さん

郁人(イクト)

今日、刺繍教室の日だよな?

郁人(イクト)

そこから、直接来たのか?

かえで

そう

かえで

いつもね、お義母さんに刺繍を見てもらうの

郁人 母

はい、二人の分のお茶

かえで

ありがとうございます

郁人(イクト)

いただきます

郁人 母

あら、かえでさん今回はバラにしたの?

かえで

はい、ありきたりですが、

かえで

お義父さんが、好きだったから…

郁人 母

かえでさん

かえで

はい

郁人 母

いつも主人のことを考えてくださって、ありがとうね

郁人 母

でも、そんなに思いつめなくていいのよ

…あれ?おかしいな

何故 死んだ父さんの話をするんだ?

かえで

…今でも、夢に見るんです

かえで

かえで

私が、あの日に結婚式なんかやらなければ

かえで

お義父さんは亡くならなかったのに…

かえで

かえで

毎日毎日、夢を見るんです

一体 何の話をしているのだろう

かえで 不倫は?

していないのか?

それなら何で

風呂や、トイレにまでスマホを持ち出すんだ…?

約1年前

二人の結婚式

神父

…二人は、愛を誓いますか?

郁人(イクト)

誓います

かえで

…誓います

結婚式は、天気にも恵まれ、

予定通りに進行していた。

郁人 父

………………っ

郁人 母

あら、お父さん大丈夫?

郁人 母

顔色が悪いわね

郁人 父

大丈夫だ、緊張したみたいだ…

郁人 母

息子の晴れ舞台ですからね

郁人 母

終わったら、お水貰いましょう

郁人 父

…ああ

結婚式終了後

新郎新婦 控室

かえで

式、無事に終わって良かった…

かえで

やっぱりドレスって動きにくいね

郁人(イクト)

ヒールも高いの履いてるもんな

郁人(イクト)

…あとは、披露宴だな

かえで

自作ムービー、楽しんでもらえるかな?

郁人(イクト)

もちろん!かえで、もっと自信持ってよ

コンコン

式場スタッフ

失礼いたします

式場スタッフ

まもなく、披露宴会場へ移動します

式場スタッフ

新婦様、お手洗いは大丈夫ですか?

かえで

はい、お手洗い済ませたいです!

郁人(イクト)

俺もトイレ行っておこう

この時、誰が想像しただろう

幸せいっぱいの結婚式の後に、

親父が…倒れるなんて。

市立 総合病院

郁人 母

お父さん…

郁人 母

どうして、こんなことに…

郁人 母

郁人(イクト)

母さん!遅くなってごめん!

郁人 母

郁人、二次会があるんじゃなかったの?

郁人(イクト)

そんなの、行ってる場合じゃないよ!

郁人(イクト)

…父さんの容態は?

郁人 母

それがね、まだ不安定なの

郁人 母

さっき、お医者さんからチラッと説明は受けたけど

郁人 母

どうなるか分からないみたい

郁人(イクト)

そんな…!?

郁人 母

とにかく、今はお父さんとお医者様を信じましょう

元々 父は心臓が弱かった。

俺が小さい頃にも、度々このようなことはあった。

郁人(イクト)

最近までは、安定していたのに…そう見えたんだけど…

郁人 母

…今、季節の変わり目でしょ?

郁人 母

それに、お父さんも、私も年老いたからね

母さんは濁したけれど

俺たちの結婚式に 緊張して発作を起こしたことは間違いなかった。

郁人(イクト)

…母さん、ごめんね

郁人 母

嫌ね

郁人 母

何あなたが謝ってるの

郁人(イクト)

俺が父さんを緊張させたな、って

郁人 母

バカね

郁人 母

あなたが一生独身でいるほうが、

郁人 母

私達にとって一番心臓に悪いわよ

郁人(イクト)

………………

郁人 母

それにね、私、孫も見たいのよ

郁人 母

手芸仲間が、みーんな孫の自慢してくるのよ

郁人 母

私だけ孫いないから、仲間はずれ

郁人(イクト)

………………………

郁人 母

だからね、郁人

郁人 母

お願いだから、この件は気にしないで

郁人 母

あなたから、かえでさんにも伝えてあげて

郁人 母

郁人 母

結婚式を挙げたこと

郁人 母

後悔してほしくないのよ

郁人(イクト)

…分かった

丁度、このタイミングでかえでが到着した。

かえで

遅くなって、すみません…!

郁人 母

ごめんね、かえでさん

郁人 母

二次会あったのに、中止になっちゃったわね

かえで

そんなことより、お義父さんは…?!

郁人 母

まだ、不安定な状態よ

かえで

そんな

郁人(イクト)

…昔から、心臓弱かったんだよ

郁人(イクト)

かえで、あまり気に病まないでね

かえで

………………………

郁人 母

私、飲み物買ってくるわ

その後、父は心臓手術をしたが、

数日後、帰らぬ人となった。

結婚式場から病院へ直行したため、

自宅に戻ることなく、亡くなった

かえで

…私のせいだ

かえで

付き合った記念日に、式を挙げたせいでこんなことに…!

郁人(イクト)

かえで

かえで

真冬に、結婚式なんかしたから、

かえで

体に、心臓に…負担だったんだ…

郁人(イクト)

…かえで

かえで

山の中の式場がいいって、私が言ったから

郁人(イクト)

かえで

かえで

緊急搬送が遅れて…

郁人(イクト)

かえで!

かえで

かえで

…!

郁人(イクト)

そんなこと、考えなくていいんだよ

郁人(イクト)

…親父の葬式の花、選んでやろうよ、二人で

郁人(イクト)

…何が、いいと思う?

もしかしたら、

かえで自身が一番辛かったかもしれない

式場を選んだのも、日取りを決めたのも彼女だったから。

かえで

…お義父さん、黄色と紫が好きだったから…えっと…

…この一件以来、

かえでは一切笑わなくなった。

結婚式後に行く予定だったハネムーンをキャンセルし、

順調にキャリアアップしていた仕事も辞めた。

しばらくは、部屋にひきこもって生活をしていた。

郁人(イクト)

かえで、まさかまだ気にしてるのか

郁人(イクト)

あの事…

かえで

………………………

郁人(イクト)

かえでのせいじゃない

郁人(イクト)

何回も言うけどさ

かえで

………………………………

郁人(イクト)

父さんは、幸せだったはずだよ

郁人(イクト)

孫は見せられなかったけど

郁人(イクト)

嫁さんには…会えたんだし

郁人 母

そうよ!

郁人 母

うちの隣の櫻井さん家、息子さんが49歳なんだけど、独身なのよ

郁人(イクト)

おい、勝手に人の家庭の話をするなよ…

郁人 母

ご両親、すっごく心配しててね、

郁人 母

奥さんじゃなくてもいいから、せめて誰かと暮らしてほしいって話してたわ

郁人 母

親は先に逝っちゃうから、いつまで経っても子供が心配なのよ

郁人 母

…比べちゃいけないけど、かえでさんは立派よ

かえで

…え?

郁人 母

今どき、結婚式なんて挙げないカップルも多いのに

郁人 母

きっちり挙式してくれて

郁人 母

…私とお父さんの夢、叶っちゃったもの

郁人(イクト)

え、その話俺も知らないなぁ

郁人(イクト)

聞きたいな

郁人 母

あなたが生まれたときにね、

郁人 母

「せめて郁人が大切な人を見つけられるまでは、元気でいたい」って

郁人 母

しょっちゅう話してたの

郁人(イクト)

そうだったんだ

郁人 母

そして、できれば「郁人の結婚式を見たい」って話してた

かえで

………………………

郁人 母

かえでさん、落ち込まないで

郁人 母

あなたが元気に生きることが主人の望みなんだから

かえで

ありがとうございます

郁人(イクト)

…へっくしゅん!

郁人 母

あら 寒かった?

郁人 母

あなた達、今日は泊まっていきなさい

郁人 母

着替えもあるし

その日の深夜

郁人(イクト)

なぁ、かえで

かえで

何?

郁人(イクト)

俺、馬鹿な考えをした

郁人(イクト)

かえでが、毎日こうやって実家に来て父さんに線香をあげてること知らなくて、

郁人(イクト)

お前が 不倫してるんだって思ってた

かえで

え?

郁人(イクト)

だから…今日は実は、かえでの後を付けてきたんだ

郁人(イクト)

気持ち悪いことをして

郁人(イクト)

ごめんなさい

かえで

…いいの

かえで

結果的に、あの日のこと話せたから。

かえで

まだ、一人じゃ受け止められないの…

かえで

弱い女で、ごめんなさい

郁人(イクト)

ううん

郁人(イクト)

ゆっくりでいいよ

郁人(イクト)

…しかし、何でかえでは風呂やトイレにもスマホを持ち歩くんだ?

かえで

あの家、たまにトイレの扉と洗面所の引き戸が開かなくなるの

郁人(イクト)

…え?!

かえで

アパート、古いでしょ?

かえで

たてつけが悪いみたい

かえで

隣の人も、閉じ込められたって話てたからスマホをどこにでも持ち歩くの

郁人(イクト)

…何だ〜そういうことか〜

かえで

ごめんね

かえで

心配かけちゃったのね

郁人(イクト)

いや、俺の勘違いで良かった

郁人(イクト)

…こんなに真っ直ぐな妻を疑うなんて…俺、自分が恥ずかしい

かえで

そんなことないよ

かえで

いつも側にいてくれて、ありがとうね

郁人(イクト)

良いんだよ、気にしないで

かえで

これからも、家事頑張るから…

翌朝

かえで

(なんだか気持ち悪い)

郁人(イクト)

おはよう、かえで

かえで

……………………

かえで

何か、吐きそう

郁人(イクト)

大丈夫か?!

郁人 母

二人とも、おはよう

かえで

…おはようございます

郁人 母

あら、かえでさん顔色が悪いわね

かえで

…はい。なんだか気分が悪くて…

すりごま

クゥーン

郁人 母

あら、すりごま?どうしたの

郁人 母

かえでさんの足元、行ったり来たりして…

すりごま

クゥーンクゥーン

郁人 母

普段あんまり鳴かないのに…

郁人 母

郁人 母

(これ………もしかして!)

郁人 母

郁人、帰りにドラッグストア寄りなさい

郁人(イクト)

え?

郁人 母

もしかしたら、そうかも

郁人(イクト)

???

郁人(イクト)

母さんすごすぎ

郁人(イクト)

かえで、妊娠してた!!

郁人 母

すりごまがソワソワしていたからね

郁人 母

犬や小さい子供って、妊婦さんが分かるのよ

郁人 母

不思議よね〜

郁人(イクト)

俺、一緒に暮らしてるのに気づかなかった…ショック

郁人 母

仕方ない息子ね、まったく

母からの罵倒も、今では全然嫌ではない。

郁人 母

きちんと、かえでさんをサポートしなさいよ

郁人(イクト)

御衣(ぎょい)

郁人(イクト)

最近は、習い事にも、送り迎えしてるよ

かえでの妊娠が分かってから、かえではよく笑うようになった。

かえで

…楽しみ

かえで

女の子でも、男の子でも。

かえで

元気なら、それが一番いいよね

郁人(イクト)

そうだな

郁人(イクト)

…アパートも建て直しが決まったし、引っ越す準備もしなきゃだな

かえで

色んな意味で、新生活がこれから始まるんだね…!

つい先日まで、妻の不倫を疑っていた事なんて、

全く思い出せなくなってしまった。

郁人(イクト)

幸せだな

かえで

うん!

郁人(イクト)

かえで、顔色、すごくいいよ

郁人(イクト)

つわりも今のところないみたいだし、

郁人(イクト)

良かった…

かえで

うん、きっとお義父さんが守ってくれてるんだよ

郁人(イクト)

そうかな

かえで

そうだよ!

かえで

…なんだか、安産になりそう

郁人(イクト)

そうだと良いな…!

父さん

俺たちは、今

最高に幸せです!

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