―僕はいるよ。
普段は小さなその声が、やけに大きく響いた。
―好きな人。
真っ直ぐ前を見て呟くように吐いて、それから足元に視線を落とす。
隣の影を少し見て、それから俺は尋ねた。
―誰?
―言わないよ、
そう返ってくることは、 わかっていた。
俺は、その真っ直ぐな瞳が映す誰かをとても羨ましく思った。
俺はいつか、その眼に映ることが出来るのだろうか。
それとも、映ることはないまま、この横顔を眺め続けるのだろうか。
どちらにせよ、幸せにはなれない。
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