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ゆずき
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#恋愛
ばたっちゅ
3,479
ライ(?)
観客たちの歓喜が、ようやく一息つく。 飛び交っていた記者たちの声も止まり、無数のカメラが二人へ向けられた。 ライは当然のように出口へと足を踏み出す。 けれど。 ソルトは俯いたまま、その場から動けずにいた。
ライ(?)
ソルト
顔を上げる。 ソルトが口を開こうとした、その時。
ヴァローナ
別の声が、その言葉を遮った。 人混みの向こうから、ヴァローナが歩み出る。
ライ(?)
ライ(?)
ライ(?)
ヴァローナ
ライが言い切るより先に。 ヴァローナは封筒から一枚の紙を取り出した。 先ほど受け取った婚姻届。 それを、ライの目の前へ突き出す。
ソルト
ソルトが驚き、咄嗟にヴァローナの袖を掴んだ。
ヴァローナ
返事はない。 ソルトが見上げても。 ヴァローナの目は、真っ直ぐにライだけを睨みつけていた。
ライ(?)
ヴァローナ
ライ(?)
ライ(?)
ライ(?)
ライは爽やかに笑う。 周囲へ見せるための、隙のない笑顔。 そのままヴァローナとの距離を詰めた。 顔を寄せる。 耳元へ。
ライ(?)
低い声。 周囲には届かないように。 脅すように唸る。 しかし。 ヴァローナは声を潜めなかった。
ヴァローナ
はっきりと。 周囲にも聞こえる声で返した。
ライ(?)
ライは僅かに眉を動かす。 けれど、すぐに余裕の表情へ戻った。 先ほどの言葉は、誰にも聞かれていない。 そう確信している。 だからこそ。 何も知らない観客と記者たちの前で、変わらぬ笑顔を貫いていた。
しかし。 ヴァローナは何も言わず、端末を操作した。 次の瞬間。 『それとも何か? 今ここで俺様が君たちを、侮辱罪や傷害罪で訴えたっていいんだ?』 先ほどのライの声が、その場にはっきりと再生された。 ライの表情が止まる。
ヴァローナ
ヴァローナ
ヴァローナ
ヴァローナが片手を上げる。 上級魔術-空間収納魔法の取出口が開いた。 そこから次々と引き寄せられるのは、今までソルトの元へ送り付けられてきたものたち。 録音機。 小型カメラ。 アクセサリー。 そして、婚姻届。 一つ。 また一つ。 人々の目の前へ、物的証拠が並べられていく。
ライ(?)
ヴァローナ
最後にヴァローナが取り出したのは、一枚の書類。 接触解析を済ませた結果書類だった。
ライ(?)
ライ(?)
現在。 ローゼとソルトが同一人物であることは、世間には知られていない。 それも当然だ。 ローゼは男性として生活している。 対して、ソルトは女性として表舞台に立っているのだから。
ソルト
ヴァローナ
ヴァローナ
ヴァローナの声に、ライが口を閉ざす。
ライ(?)
ヴァローナ
ヴァローナ
鋭い声が、その場を切り裂いた。 爽やかに受け流そうとしたライの言葉を、 ヴァローナが真正面から切り上げる。
ヴァローナ
ライ(?)
ヴァローナ
ヴァローナ
敬称が落ちた。
ライ(?)
ヴァローナは隣へ手を伸ばす。 ソルト――ローゼの肩を引き寄せた。
ヴァローナ
声が、エントランスホールを貫いた。 ヴァローナはアスーカルから預かっていた写真データを開き、ライにだけ見えるよう、その眼前へ突き出す。
ライ(?)
ライの顔から、初めて余裕が消えた。 観衆が鎮まる。 誰も声を上げない。 ネットの書き込みも。 生配信を埋め尽くしていたコメントさえ。 一拍。 止まった。 そして。 盤上が、ひっくり返る。
ヴァローナ
ヴァローナ
ヴァローナ
ライ(?)
理解が追いつかない。 ライは口を開いたまま、言葉を失っていた。 ヴァローナはそれ以上、相手にしなかった。 ローゼの手を取る。 そのまま、立ち尽くすライの横を通り抜けた。
ヴァローナ
ソルト
ローゼもまた、唖然としたまま。 けれど、引かれる手には逆らわない。 駆け足でヴァローナの横へ並ぶ。 二人はそのまま。 騒然とする人々を置き去りにして、テレビ局を後にした。
ローゼ
ヴァローナ
テレビ局を出てすぐ。 二人は人目を避けるように路地裏へ入り、そのまま家のそばまで転移した。 先ほどまでの喧騒が嘘のように遠ざかる。 記者も。 野次馬も。 無数に向けられていたカメラもない。
ローゼ
ローゼ
ローゼは僅かに視線を逸らしながら、ぽつりと礼を口にした。
ヴァローナ
ローゼ
その言葉に。 ローゼは思わず、先ほどの光景を思い出した。 ――僕の”お嫁さん”。 大勢の観衆。 無数のカメラ。 生配信。 あの場で、はっきりと言い切った言葉。 『後々』。 その先を意識した途端、頬に熱が集まった。
ローゼ
ヴァローナ
ヴァローナが不思議そうに首を傾げる。
ローゼ
ヴァローナ
そこでようやく気が付いた。 どうやら、まだ仕事の空気を引き摺っていたらしい。 ヴァローナは赤らむローゼの顔を見る。 張り詰めていた表情が解け、頬が緩んだ。
ヴァローナ
ヴァローナ
コメント
1件
あー、もう24話、すごかったですね……! ヴァローナがあの場で録音データとか指紋鑑定とか全部出して、ライの脅しを真正面から返す流れ、本当に気持ちよかった……。しかも「僕のお嫁さん」って公言するところ、ドキドキしました。ソルト=ローゼって知らない観客の前で言っちゃうの、かっこよすぎです。 最後の「ロー。おかえり、お疲れ様」の優しさにじんわりきました……。この二人の関係、少しずつ温かくなってて見守りたくなります。