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椥守蕊月
204
瑠璃マリコ
18,658
#お兄ちゃん大好き
M
77
ヴァローナ
ローゼ
朝。 ふたりはヴァローナの家で、向かい合って朝食を取っていた。 テーブルには焼いたパンとコーヒー。 その傍らで点けっぱなしになっているテレビは、相変わらずメルシィとライの放送事故を取り上げている。 画面の端には、現在のSNSトレンド。 昨日からほとんど変わらない単語が、順位を入れ替えながら並んでいた。
ローゼ
ローゼはパンを齧りながら、呆れたように呟く。 テレビでは、専門家だかコメンテーターだかも分からない者たちが、好き勝手に憶測を並べていた。
ヴァローナ
ローゼ
ローゼが半眼を向ける。 けれど、ヴァローナは気にする様子もなく食事を続けた。
ヴァローナ
ヴァローナ
図星を突かれ、ローゼの口が僅かに止まる。
ローゼ
ローゼ
ローゼ
ローゼには、実の兄をいじめで殺された過去がある。 その復讐のため、普段は男性の姿――亡くなった兄を模した姿に化けて生活している。 今、そんな事情を知る者はヴァローナしかいない。 それほどまでに、大昔の過去だった。 けれど。 時間が経ったからといって、無かったことになるわけではない。
ヴァローナ
ローゼ
兄が起こした失態。 それを理由に、何もしていない弟妹が標的になる。 ローゼにとっては、決して笑って流せる話ではなかった。
ヴァローナ
今度は、ヴァローナが静かに返す。
ローゼ
ローゼは残っていたコーヒーを飲み干し、最後のパンを口へ押し込んだ。
ローゼ
玄関へ向かいかけていたローゼが、ふと足を止めた。
ヴァローナ
ローゼ
ヴァローナ
歯切れの悪い言葉に、ヴァローナが首を傾げる。 ローゼは少しの間、何かを迷っていた。 やがて意を決したのか、ヴァローナの前まで歩み寄る。
ローゼ
ローゼ
ヴァローナ
ぽかん、と。 今の今まで考えていなかったらしい顔で、ヴァローナは瞬きをした。 この世界で、性別を自在に変えられる種は少ない。 ましてや、世界に名を知られるローゼ・シュテアネは、本来ならば世界から追い出されたはずの妖怪種――化猫の末裔だ。 その妖気と科学力を恐れる者も少なくない。 加えて、ローゼとヴァローナには長年にわたる不仲説が定着している。 『ヴァローナ・プログレッシブと争うと街が更地になる』 『西のローゼ、東のヴァローナ』 そんな言葉まで生まれるほど、ふたりは犬猿の仲として知られていた。 しかし、アイドルユニット『メルシィ』のソルトといえば、塩対応で口下手が売りの、シャイな女性アイドルだ。 種族すら公表していない。 そして本来、神種であるヴァローナと、妖怪種であるローゼは触れ合うことさえできなかった。 聖魔構成門と暗魔構成門。 互いに触れれば、消滅し合う。 それが、ふたりの種族に存在していた絶対的な差だった。 けれど、神の悪戯か。あるいは奇跡か。 互いに進化を遂げ、新種『神魔』となった今、ふたりは混成魔構成門へと変わっている。 今ではこうして、当たり前のように触れ合える。 ――と。 簡単に並べるだけでも、事情はひどく複雑だ。 いくつもの偶然と奇跡が折り重なっている。 相当な根気を持って情報を拾い、考察を重ねでもしない限り、ローゼとソルトが同一人物だという結論へ辿り着くには程遠い。
ヴァローナ
頭の中でひとつずつ事情を整理しながら、ヴァローナがぽつりと呟いた。
ローゼ
ローゼも否定しなかった。 それ以上、ふたりとも言葉を続けない。
ヴァローナ
ローゼ
ヴァローナ
ローゼ
ココアの入ったカップを両手で包み、のんびりと手を温めるヴァローナ。 その姿を、ローゼは不服そうに見つめた。 自分はこんなにも真剣に考えているというのに。
ヴァローナ
ローゼ
ローゼ
ヴァローナ
突然上がった声に、ヴァローナの肩が跳ねる。 ローゼは勢いよく上着を羽織り、鞄を手に取った。
ローゼ
ヴァローナ
ヴァローナ
バタンッ!
激しい音を立てて、玄関の扉が閉まった。 取り残されたヴァローナは、しばらく扉を見つめる。
ヴァローナ
困惑した声だけが、静かな部屋に落ちる。 驚いた拍子に、ココアが少し零れていた。 ヴァローナはただ、黙って布巾を手に取る。 今の彼にできることは、テーブルに零れたココアを拭くことくらいだった。
コメント
1件
みぅです🥀読ませてもらいました。 このエピソード、二人の“すれ違い”がすごく丁寧に描かれてるなって思いました。ローゼが真剣に悩んでるのに、ヴァローナが割とさらっと返しちゃう感じ、リアルでちょっと切なくなる…。でもその“どっちでもいい”の中に、ちゃんとローゼを想う気持ちが詰まってるのも伝わってきました。 最後、ローゼが怒って出て行くシーン、心臓ギュッてなりました。二人の距離が縮まってるからこそ生まれるすれ違い、これからどうなっていくのか気になります…!🌙