遠くから―― サイレンの音が、雨の音を切り裂くように近づいてきた
ピーポー、ピーポー
元貴の腕の中でぐったりとした涼架の身体が、かすかに震えた
元貴
元貴は必死に呼びかけながら、涼架の頬を優しく叩いた
外の光が窓を照らす。 赤いサイレンの点滅が、濡れたカーテン越しに滲んで揺れた
元貴
元貴が玄関を開け放ち、声を張り上げる
雨が室内に吹き込む中、救急隊員が慌ただしく駆け込んでくる
救急隊員
元貴
元貴が涼架を抱えたまま床を指さす
隊員たちはすぐに涼架の意識確認とバイタル測定を始めた
救急隊員
救急隊員
テキパキと動く隊員たちの声が、まるで遠くに聞こえるようだった
元貴は涼架の顔を見つめながら、ただ震える手でその手を握っていた
元貴
元貴
呼びかけながらも、自分の声がかすれていくのがわかった
その時、ストレッチャーが運ばれてきた
救急隊員
元貴
隊員たちは元貴の目を見て、一瞬だけ頷く
涼架の身体がストレッチャーに乗せられる
濡れた髪が頬に張り付き、唇の色はまだ薄いままだった
救急隊員
救急隊員
サイレンが再び鳴り響く
元貴は涼架の手を握ったまま、ストレッチャーの横を離れずについて行く
元貴
玄関を出た瞬間、冷たい雨が顔に当たる
けれど元貴は傘をさす余裕もなく、ただ涼架の隣で走り続けた
救急車のドアが閉まる直前、隊員が元貴に言った
救急隊員
元貴
中で酸素マスクをつけられた涼架の顔を見つめながら、元貴は濡れた髪をかき上げ、声にならない祈りを呟いた
元貴
救急車が発進し、雨の夜の中に赤い光が遠ざかっていく
救急車のドアが開いた瞬間、病院の明るい照明が一気に差し込んだ
救急隊員
隊員の声が響く
ストレッチャーが押され、涼架の体が緊急処置室へと運び込まれていく
酸素マスクをつけたままの涼架の唇は、まだ青白い
その姿が見えなくなるまで、元貴は立ち尽くしていた
看護師
看護師の声に、はっと我に返る
元貴
看護師は一瞬だけ元貴の表情を見て、頷いた
看護師
ガラス越しに見える処置室の中では、医師たちが忙しく動き回っていた
涼架の名前を呼ぶ声、モニターの電子音、血圧計の音——
それらが交互に重なり合って、耳の奥で鳴り響く
看護師
医者
医者
元貴は両手で自分の腕を抱くようにして、ただガラスの向こうを見つめ続けた
ずっと強く見える人だった。 泣き虫だけど、心は誰よりも頑張り屋で、優しくて
それなのに——あんなに壊れそうな顔、初めて見た
元貴
呟いた声が震えた
数十分後、処置室の扉が開いた
白衣を着た医師が出てきて、マスクを外す
医者
その言葉に、元貴の膝から力が抜けた
元貴
気づけば、目の端が熱くなっていた
医者
医者
元貴
元貴は深く頭を下げた
看護師
看護師がそう言うと、元貴は一瞬だけためらい——それでも頷いた
扉を開けた先、白いシーツに包まれて眠る涼架がいた
酸素マスクは外されていたが、呼吸はまだ少し弱々しい
元貴はそっと椅子を引き寄せ、涼架の手を握る
元貴
声を押し殺して笑おうとしたけど、うまくできなかった
元貴
その時、扉がノックされた
高野が立っていた
彼の目も赤くなっている
髙野
元貴
その一言に、高野は深く息をつき、涼架の寝顔を見て小さく微笑んだ
髙野
元貴
二人の声が、静かな病室に落ち着いて響いた。雨音だけがまだ、窓の外で優しく続いていた
コメント
2件
とりあえずよかった〜!!
めっちゃ気になるぅ~💦 次 お願いします😭✨