テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

先生

今月のイジメ当番は、リサさんに決まりました

先生がそう言うと

クラスメイトは一斉にわたしを見て

それから

何事もなかったように目をそらした。

この街には

目に見えない階級がある。

大人は誰もそれを教えない。

天はヒトの上にヒトを作らず

ヒトの下にヒトを作らず

それが公平なのだと繰り返す。

大人たちの作る幻想を信じている子どもは

この街にどのくらいいるのだろう。

イジメ当番は毎月決まり

展覧会は不定期に開催される。

イジメをする子どもに美しい絵を描くことができるのか。

自然発生するイジメを管理する方法を考えるための

取り組みの一環なのだと先生は言う。

例えば

イジメ当番に当たった子どもが精神的に深い傷を負ったとして

または

自ら望んで死出の旅路に出たとして

イジメを行った者たちには

何の罰もありはしない。

むしろ展覧会では

そういう子どもの描く絵が高く評価された。

定期的にイジメの対象を与えることで

心の何がわかるのだろう。

昨日まで親友だったあの子が、わたしの腹を蹴り上げた。

少年

関節ってさ

少年

どっち側に曲がるか知ってる?

そう言ったのは

わたしが好意を寄せていた男の子だ。

痛いのは

心とカラダ、どちらだろう。

先生

骨折が13カ所

先生

内臓の損傷も激しい

先生

イジメ当番で運ばれた子は何人も見てきましたが

先生

ここまで酷いのは久しぶりです

学校に通える階級の子どもであれば

どんな医療でも受けることができる。

そうね

どんな医療でも。

先生

私としては

先生

後遺症の残る手術よりも

先生

本体ごとお取り替えすることをオススメします

残念だわ

私、ハハオヤとして

この子のことは気に入っていたのよ

先生

そうでしたか

先生

では、パーツのお取り替えということで?

いいえ

本体ごと取り替えてちょうだい

先生

かしこまりました

先生

本体のお取り替えであれば

先生

髪の色や目の色をカスタマイズすることも可能ですが

そうね

髪も目も同じのでいいわ

先生

なるほど

先生

いや、これは私見なのですが

なにかしら?

先生

お子さんの世代は比較的

先生

黒髪黒目が流行したということは、ご存じでしょう?

先生

いくらイジメ当番だったからといって

先生

本体ごと取り替えるほどの損傷は、ほとんどありません

先生は何がおっしゃりたいの?

先生

僕は、一種の同族嫌悪ではないかと思うのです

同族?

先生

ええ。生体としての個体差が少なく

先生

あまりにも似ていたため

先生

集団ヒステリーのような状態に陥ってしまったのではないかと

先生

あ、いや

先生

これはあくまで、僕個人の意見ですが

では新しい本体は

金髪碧眼にしましょうか

先生

それはオススメできません

なぜです?

先生は今

似すぎていたために、こんなことになってしまったと

おっしゃっていたじゃないですか

先生

あまりにも違いすぎると、集団は異物を排除しようとする

先生

今までのデータを見ると

先生

その傾向が強いのです

……

先生

いかがしますか?

私にはわからないわ

先生

決定権を放棄するのは、あまり賢明ではありませんね

……

栗色の目と、明るい茶髪にしてちょうだい

先生

かしこまりました

先生

記憶の移植はどうなさいます?

もちろん、そのままよ

イジメ当番のことも何もかも

先生

そうですか

先生

退院は10日後です

先生

次の展覧会が楽しみですね

カラダごと新しくなったわたしは

本当のわたしだろうか。

記憶は、ある。

優しいパパ

美人なママ

そして、イジメ当番。

鏡の中の

色素の薄い眼球に写るのは、偽物のわたしだ。

その記憶が本物である確証なんて

どこにもない。

女の子

リサ

女の子

よかった

女の子

退院できたんだね

あの日まで親友だったあの子が

わたしを見て、弱々しく笑う。

イジメ当番不在の間

イジメを受けていたのは、きっとこの子だ。

わたしは持っていたボールペンを

彼女の眼球に突き刺した。

声にならない悲鳴が教室を支配する。

親友だった彼女が血の涙を流していても

何の感情もわいてこない。

痛いのは

心とカラダ、どちらだろう。

また失敗だわ

キーボードを叩いていた女が、ため息混じりにそう言った。

欲しいものは全部与えてるじゃない

仕事も娯楽も、命だって

なのにどうして

バグが発生するのかしら?

女はパソコンの電源を落として、コーヒーを淹れた。

学生

先生

学生

あまり根を詰めるのも

学生

よくないですよ

白衣の青年が、眩しそうに目を細めて言う。

学生

先生が休んでくれないと、僕らも休めませんから

あら。あなたまで、あたしのせいにするのね

学生

そういうつもりは、ありませんが

まあいいわ

どうせ今日はもう、仕事にならないもの

学生

行動や思考を制限された仮想現実ですら

学生

バグが発生するんですから

学生

現実が難しいのなんて、当たり前です

わかってるわよ

それより

気が抜けたらおなかが空いちゃった

ラーメン、食べに行きましょう

学生

先生、正気ですか?

学生

夜中の1時ですよ

ダメかしら

学生

夜中の食事は暴食です

今更、罪悪感もないわね

無駄に摂取するって意味では

わたしは仮想空間で

大量に子どもを消費しているもの。

学生

はいはい。わかってますよ

学生

先生はそう言いながら、リサのことを愛してますもんね

学生

先生が望むような、すべてのリサが幸せになるような

女は強く頷いた。

そんな未来がくる

この作品はいかがでしたか?

52

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚