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森の奥へ踏み込むほど、空気は重くなる。 湿った匂いに、鉄のような苦味が混じり始めた。
霧谷シン
木の上から、気の抜けた声が落ちてくる。
三条凛
凛が顔を上げると、枝に逆さにぶら下がった男が笑顔でひらひらと手を振っていた。 この男は霧谷シン。自由奔放で軽薄なやつだ。三条凛が所属している技術の国─ネオ・アルカディアの対呪特別技術部隊の1人だ。白い軍服は相変わらず汚れ一つなく、ここが戦場だという自覚があるのか疑わしい。 ここだけの話、いつも煽ってくるため、凛からは好かれていないらしい。
霧谷シン
三条凛
霧谷シン
凛は足を止め、腰に手を当てて、木の上の霧谷を睨んだ。
三条凛
霧谷シン
霧谷は枝から音もなく地面に降り立つ。着地の瞬間ですら、枯葉一枚鳴らさない。 凛は視線を森の奥へ戻した。
三条凛
霧谷シン
霧谷は笑った。 いつもの軽い笑み。だが目だけは笑っていない。
三条凛
霧谷シン
霧谷は指先で空をなぞった。
三条凛
霧谷シン
三条凛
凛は剣を握り直した。 柄越しに伝わる感触は、いつもと同じ。なのに、胸の奥が落ち着かない。
三条凛
霧谷シン
三条凛
霧谷は平然と言った。
霧谷シン
三条凛
霧谷シン
その瞬間だった。 森がざわりと鳴った。 気配が動く。 今まで地面に沈んでいた黒い霧が、同時に浮かび上がった。 周囲一体に大量に現れた。 霧谷が凛に目配せをする。
霧谷シン
三条凛
二人は同時に前に出た。 凛が最初の一体を切り裂く。 霧谷は背後から回り込み、影のように呪いの“首”を落とす。 息が合う。無駄がない。 何度も一緒に戦ってきた、それだけの動きだった。 だが─
三条凛
倒したはずの呪いが再び形を成す。 さっき斬った核の位置がずれている。
霧谷シン
霧谷は冷静だった。
霧谷シン
三条凛
霧谷シン
冗談めいた口調。 だが、その言葉は冗談に聞こえなかった。 凛は一瞬迷った。 そして、決めた。
三条凛
霧谷シン
凛は地を蹴った。 速度を最大まで引き上げる。視界が狭まり、世界が線になる。 一閃。二閃。三閃。 黒が弾け、森が震えた。 ようやく呪いが消えた。
三条凛
凛は息を整えながら、ぽつりと言った。
三条凛
霧谷は答えなかった。 代わりに、通信機を指で弾く。
霧谷シン
少し間があって、ノイズ混じりの声が返る。
星宮ルカ
淡々とした声。 感情のない、いつもの調子。 星宮ルカ。凛たちと同じく対呪特別技術部隊所属、上層部から実験体扱いをされている。無口で天然っぽい子だ。
霧谷シン
星宮ルカ
凛が眉をひそめる。
三条凛
星宮ルカ
星宮は一拍置いて言った。
星宮ルカ
凛は剣を鞘に戻した。 胸の奥で、何かが静かに軋む。
霧谷シン
霧谷は珍しく笑わなかった。 森の奥。 光の神の宮殿がある方角から、低く、長い振動が伝わってくる。 まるで世界そのものが息を整えているようだった。
霧谷シン
三条凛
不可解なことが続き、少し気まずい空気が流れる。 しんみりした空気をぶち壊すように霧谷が盛大にため息をついた。
霧谷シン
三条凛
一気に気の抜けた空気に凛は文句を言う。凛が色々言うのを軽く流しながら、霧谷は凛の横に並んだ。
霧谷シン
三条凛
先程までの張り詰めた空気が嘘のように明るくなった。 さあ、向かうはネオ・アルカディアの中心にある、対呪特別技術部隊本部。霧谷からの報告で凛と霧谷を除いたトップたちが集まっているだろう。 なぜ呪いは増えているのか。 その答えを知るのは呪いか、 はたまた別の何かか…