親友の恵美が行方不明になった。
今から2日前のことだ。
隣町に心霊スポットとして知られている空き家がある、恵美はそこに向かっていた。
恵美の両親も友達も、ただの家出だと思ってるけど、私は知っている。
1時間前に届いた恵美からの最後のメールは、ただ一言…たすけて
恵美は多分、まだあの空き家にいるんだと思う
あの時引き止めなかった私のせいだ
助けにいかないと
そう決心した私は、例の空き家へ入ろうとしていた。
ユキ
先輩
ユキ
つきましたよ、家の前にいます
田淵
よし、覚悟はいい?
田淵
何度も言ってるけど、そこは本物の心霊スポットだよ
ユキ
大丈夫です
ユキ
あの…
ユキ
先輩、本当にありがとうございます
田淵
なに、どうしたの
ユキ
こうしてアドバイスしてくれて…
ユキ
正直心細かったので、本当に助かってます
田淵
気にしなくていいよ
田淵
僕なんてただの心霊ヲタクなんだからw
でもできる限りのサポートはする
田淵
些細なことでもメールで報告してね
田淵
でも絶対に、電話は駄目だよ
ユキ
はい、気を付けます
ユキ
ところで…ここってどうして心霊スポットになったんですか?
ユキ
外から見る限りはごく普通の、ちょっと立派なお家ですけど
田淵
田淵
まぁ簡単に言っちゃえば…
田淵
事故物件、だね
ユキ
事故物件…
田淵
昔住んでいた仲睦まじい普通の家族がね、ある日突然、全員自殺したんだ
田淵
全員違う方法で
ユキ
それは…惨いですね
ユキ
事故物件になってからここは心霊スポットに?
田淵
まぁそうなんだけど…
田淵
これがちょっと妙な話
田淵
心霊スポットと呼ばれるようになったのは、その家族が死んで事故物件になってからなんだけどね?
田淵
その家族が住んでいた頃から、あの家には なにか がいたらしい
ユキ
本当に不気味ですね…
ユキ
恵美はどうしてこんなところに来たんでしょう?
田淵
分からないけど…早く見つかるといいね…
ユキ
はい
ユキ
そろそろ、家の中に入りますね
田淵
あ、待って!
ユキ
どうしましたか?
田淵
入る前に、知っておいてほしいことがいくつかあるんだ
田淵
いいかい?
田淵
絶対、絶対、忘れないでね
ユキ
はい
田淵
まず1つ、灯りを絶やさないこと
田淵
不思議なことに、あの家には電気が通ってる
田淵
自分がいる場所の電気は必ずつけて
田淵
それだけで、ヤツらは君に手出しできないから
田淵
スマホのライトも常にONにして、気休め程度だけど無いよりはマシだよ
ユキ
分かりました。灯りを絶やさない、ですね
田淵
もう1つ、音はなるべく立てないで
田淵
だから電話も駄目なんだ
ユキ
はい、分かりました
ユキ
じゃあ、いってきます
田淵
気を付けてね
ユキ
ユキ
入りました。中は思ったよりも普通の家ですね…広いし綺麗ですし、誰か住んでいてもおかしくないくらいです
田淵
電気は?
ユキ
今廊下にいるんですけど、廊下と玄関の電気はつけてます
田淵
その調子でね、廊下や玄関には何かあるかな
ユキ
ユキ
特に変わったものはないですね
田淵
そっか、今どこ?
ユキ
これからリビングに入ります