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僕は売れない画家だ
画家としての収入では 生計を立てる事がままならず
アルバイトをしながら 1人で細々と何とか暮らしている
店長
樹
店長
店長
樹
店長
樹
店長
樹
樹
街灯の下に誰か居る…
少し近づいてみると 白い服の少女がしゃがみ込んでいた
もう子供が出歩くような 時間じゃないのに…
樹
少女
彼女は何も言わず俯いたままだ…
樹
少女は少し首を横に振った
樹
するとさっきより強く首を横に振った
樹
樹
放っておく訳にもいかないか…
樹
樹
そう言うと彼女は頷き、 ゆっくり立ち上がって 僕の服の裾を掴んだ
その腕は今にでも折れそうなくらい 細かった
樹
少女
少女は俯いたままだが 少し頷いた
樹
少女
樹
そう言うと俯いたままの少女は 少し頷き、テーブルの前に座った
僕は店長に貰った料理を彼女の前に 並べ、向かい側に座った
相変わらず俯いたままなのと 長い髪で顔はよく見えない
樹
そう言うと彼女は顔を上げた
樹
両目が無い…!?
瞳があるべき場所には 黒く深くポッカリと 穴が空いているだけだった
僕はその姿に衝撃と恐怖を感じると 同時に意識を失った
気が付くと僕は部屋にある キャンバスの前に座っていた
樹
樹
と思ったが隣りには少女が立っていた
樹
少女
樹
樹
樹
樹
少女
樹
樹
少女
少女は何も言わず 僕の絵筆を持っている
樹
樹
樹
平然を装い、少女に話しかけた
すると少女は
僕の絵筆を 彼女の瞳があるべき場所へ 勢い良く突き刺した
樹
恐怖で声が漏れる
少女
少女は自分から絵筆を引き抜き そのか細い腕からは 信じられないような力で 僕に絵筆を握らせた
少女
そして少女は僕の背後に廻り、 僕が描くのを待っている
僕は恐怖に震えながら キャンバスに向かい、筆を当てた
そして
今までに無い感覚を味わった
筆は躍るように進み、 ドンドンと描いていく
描いているのは僕だが、 自分には描けない絵が仕上がってゆく
とても不思議な感覚だった
樹
とても綺麗な絵だった
少女
振り返り少女を見ると 少し微笑んでいた
僕はその笑みに喜びと恐怖を覚えた
樹
いつの間にか寝ていたようだ
樹
樹
部屋には少女の姿は無い
樹
だが
昨日の絵は目の前にあった
それとテーブルの上の 料理はキレイに無くなっていた
画商
樹
画商
樹
画商
画商
樹
画商
樹
画商
樹
あの絵がそんな値段になるなんて…
確かにすごくよく出来ていた
でも
樹
樹
樹
樹
樹
少女がいる
少女
樹
樹
少女
相変わらず返事は無い
樹
樹
樹
樹
樹
樹
少女
彼女は何も言わず テーブルの前に座った
樹
そして彼女の前に奮発して購入した お寿司を並べた
樹
少女
樹
樹
少女
彼女は何も言わず、 僕が差し出すものを食べた
樹
少女
樹
少女
樹
彼女はスっと立ち上がり、 キャンバスの横に立った
樹
少女
少女はコクリと頷く
樹
僕が絵筆を取ると 少女はガッシリと僕の手を掴み 彼女の瞳があるべき場所へと 筆を突き刺させた
樹
少女
キャンバスに絵筆を当てる…
そこからは昨日と同じだった
瞬く間に綺麗な絵が仕上がっていく
そして
僕が少女をこの世のものではないと 気付かせてくれるには充分過ぎる 出来事だった
また彼女は少し微笑んだ
画商
樹
画商
樹
画商
樹
樹
画商
画商
樹
樹
樹
樹
樹
樹
樹
少女
樹
少女
樹
彼女はまたテーブルに着いた
樹
少女
食事が済むと少女は やはりキャンバスの横に立つ
樹
少女
少女はコクリと頷き
そして、また繰り返す
昨日と同じ事を
描き終わるとやはり彼女は少し微笑む
唯一、彼女が見せる感情だ
そこからは繰り返しの日々だった
少女と一緒に作品を描く
その作品は飛ぶように売れる
トントン拍子とはこの事だろう
そうして僕は 少し名の知れた画家となった
始めはあんなに抵抗のあった 少女を絵筆で貫く事も
今は何も感じなくなった
でも僕は売れる画家になった
心を壊しながら
樹
少女
樹
少女
樹
樹
少女
樹
少女
少女は曇った表情をみせた
樹
樹
少女
その日から彼女は微笑む事は 無くなった
そして
ある日、僕は夢を見た
少女
樹
樹
樹
少女
少女
樹
少女
少女
樹
樹
樹
樹
樹
少女
樹
樹
少女
少女
樹
樹
樹
少女
樹
樹
樹
樹
少女
少女
少女
少女
少女
少女
樹
少女
樹
少女
樹
樹
目が覚めると同時に僕は泣いた
これが夢で良かったと思った
だが
どこを探しても少女はいなかった
彼女は消えてしまった
ただ1枚の絵を残して
そこからの僕の作品は賛否両論だった
ゴッホやピカソのように揶揄され 往年の作風と打って変わってしまった
そんな風に言われたりもしたが
違う
僕の絵に戻っただけだ
昔のように高値が付くことも飛ぶように売れる事も無くなった
ただ、ありがたい事に 有名になったおかげで画家としての 収入だけで暮らせるようなった
アルバイトと掛け持ちの時に比べたら少しはマシになったぐらいだ
住まいも元々住んでいたアパートに 逆戻りした
でも
樹
彼女が残してくれた
透き通るような瞳の少女の絵が
僕が楽しそうに描いている姿を
微笑みながら見守ってくれている
今はそれだけで充分だ