波紅〇〇
( やってしまった… )
つい気が抜けて敬語に戻ってしまった。
罰遊戯と云う話を太宰さんは憶えているだろうか。
太宰治
罰遊戯だね?
波紅〇〇
あ、ハイ
憶えてたー。
太宰治
うーん、そうだなぁ
太宰治
じゃあ珈琲を飲んで貰おうか
波紅〇〇
うぅ、本気…?
太宰治
本気だよ、一口だけで良い
太宰治
其れに香りが苦手でも味は平気かもしれないよ?
そう云うと太宰さんは珈琲が入った割賦を私の方へ差し出した。
仕方ないか。気休めに目をぎゅっと閉じて 珈琲を一口飲んだ。
波紅〇〇
うえ、苦い…!
太宰治
ブラックだからねぇ
口いっぱいに広がる独特の苦味と 鼻腔を通る苦手な香り。
太宰治
で?関節口吻は如何だった?
波紅〇〇
ゲホッ!?
関節口吻!?え、あ、確かに、 太宰さんの飲みかけの珈琲を私は…。
波紅〇〇
之は勿体ないけれど残そう!
波紅〇〇
其れで新しいものを注文…
太宰治
ズズッ (飲
波紅〇〇
あ"ぁっ!!
私が止めに入ったのに、其れを楽しむ様に 太宰さんは割賦に口を付けた。
太宰治
之でお相子だね、?
波紅〇〇
此の女誑し!
太宰治
女誑しは酷いなぁ
太宰治
そうだそうだ、聞いてよ〇〇
太宰さんは面白可笑しそうに笑ってから ちゃっかり話を変える。
太宰治
明日の仕事帰り、空いてるかい?
波紅〇〇
え、まあ…
太宰治
じゃあ其の儘空けておいてくれ
太宰治
何時もの様に正面玄関で待ち合わせね
波紅〇〇
飲みに行くの?
太宰治
いいや?
「まあ待ってい給えよ」と太宰さんは微笑んだ。