おどみん巫女パロ

うたいが振り返ると、入口が無くなっていた。

コマイヌが向いていた方向には、霊力のこもったバスケットボールが浮遊していた。

バスケットボールが弾丸のような速度で、うたい達に襲いかかる。

うたいは、コマイヌから離れながら狗祓棒を構える。

うたいが構えを取ると、身に纏う霊力が凪ぐ。

そんなこともお構いなく、バスケットボールが、うたいのところに向かってくる。

土狗秘伝、「夢想天嶺」 霊力を体内で圧縮して、物体が体外に僅かに残した霊力に触れた瞬間に触れた点に集中して霊力の一部を解放し、体に物体が接触する前に破壊するという技術。

発案者は人間時代のニグであり、当時は習得難易度が高く、「夢物語」と呼ばれたことと、

そのうえでこれを使えるかは神能力戦において勝敗を分ける大きな分水嶺となっていたことより、名付けられた。

バスケットボールがうたいの周りに僅かに残った霊力に触れると、バスケットボールが跡形もなく消し飛ぶ。

うたいの掛け声とともに、コマイヌはその爪に霊力を込めたと思うと、壁を思いっきり引き裂いた。

化鯨の動揺による結界の揺らぎ

結界がなければ体育館が崩壊する程の衝撃

結界が　崩壊する

姿を現した化鯨は、空に浮き、校舎を丸々飲み込んでなお余りある大きさだった。

その言葉を放った瞬間、狗祓棒を伸ばし棒高跳びの要領で化鯨の頭上に飛び込む。

うたいが修行の末に身につけた伸縮自在の棒を扱う棒術。うたいの数倍もの長さとなった霊力を込めたその先は…

空を切った。

化鯨がそう宣言すると、うたいの頭上から大量の水が雨のように降り注いだ。

25mプール1杯分の水。当然うたいはそれに耐えられるわけがなく、地面に叩きつけられる。

コマイヌはうたいの呼びかけを受けると、体が一気に膨張する。軽自動車程のサイズまで膨らむと、うたいを背に乗せ、ひたすらに駆ける。

校舎の中を駆けるコマイヌ達の目の前に、突如無数の包丁が出現する。

うたいは狗祓棒を取り出すと、霊力を込める。

うたいの想像通り、狗祓棒はまるでムチのように柔らかく伸び、包丁を全て打ち落とした。

ドアを開けると、空いっぱいを化鯨が埋めつくしていた。

コマイヌは、パンプアップした腕で、思いっきりうたいを放り投げた。

うたいが巫女服の袖から取り出したのは、かるた札だった。

その掛け声と共に札に込められた霊力が爆ぜ、レーザーのように化鯨を切り裂いた。

高密度の霊力による斬撃。それは、ただの雲をアヤカシとして成り立たせていた骨格のような霊力を切り裂き、崩落させた。

霊力によって無理やり止められていた莫大な量の水蒸気が一気に結露し、数秒の間に学校は大雨に包まれる。

コマイヌは霊力の粒となってどこかに消えていった。

軽く手を振ってコマイヌを見送っていたうたいの元に、凸もりが現れる。