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#惚れ薬
KMTK
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#伝奇
翌日のノクターン・フリークショー
今回の舞台でも、ナビゲーターの少女が現れる
ミラードール
多くの観客が、少女に目を奪われていた
観客
観客
観客
少女を綺麗だと思う客もいれば、以前と振る舞い方が変わった少女に違和感を覚える客もいた
しかし、「気のせいか」と気に留めることはなかったんだそう
ブタイnの立っているのは、同じ少女なのに、観客の見え方は違うようだった
子供には優しい姉、男には理想の少女、老人には娘…といった感じで、それぞれの客が違うものを見ていた
そんな変わり果てた少女の姿をアンディは観客の後ろから見ていた
アンディ
アンディ
アンディは何一つ喋ることはなく、悔しさに溢れた表情を浮かべながら、その舞台を見つめる
静かに大きな拳を握り締めた
そして、最後に一言だけ、小さな言葉を呟いた
アンディ
一方その頃、楽屋の中では、ジョーダンがその場にしゃがみ込んでいた
ジョーダン
ジョーダンは、アリスをここから逃してやれなかったことに、とても後悔していた
その時、ジョーダンの影が歪み、また「奴」が現れた
影の人格
ジョーダン
ジョーダンは静かに、影の人格を睨みつけた
???
???
影の人格はジョーダンの耳元で囁くように言う
今すぐにでも反論してやりたかったが、その言葉は間違っているようで的確であり、ジョーダンは何も言い返すことができなかった
ジョーダン
ジョーダン
???
ジョーダン
ジョーダンが何かを言い返そうとしたが、影の人格はジョーダンの言葉を遮る
???
???
ジョーダンの感情はぐちゃぐちゃになっていた
まるで、不味そうな野菜でできたミックスジュースのように
ジョーダン
ジョーダン
ジョーダンはアリスに何をして欲しかったのかが、わからなくなっていた
ジョーダン
???
???
「関わるな」と警告し、フリークショーからの脱出を協力した一方で、壊れることを促し、異形側に引き寄せようともした
外の世界で普通に生きてほしいが、ここで壊れたままでいてほしい
その矛盾に、「自分が二人いる」というのを押し付けられたような気がして、気持ちが悪かった
そんな話をしていると、楽屋にかつてアリスだった少女が戻ってきた
あの頃と何も変わらない姿だが、表情や立ち振る舞いに違和感を感じた
前のアリスに戻って欲しいと思っているはずなのに、心のどこか奥底では「同じになった」と喜んでいる自分に、ジョーダンは嫌気が差した
ジョーダン
それだけを言い残して、ジョーダンは暗闇へ行ってしまった
相変わらず、互いに対して歪んだ感情を持っている双頭の歌姫
エリザベスはぼーっと一点だけを見つめており、グレイスは自分の爪を眺めていた
エリザベスは少女に気づくと、勇気を振り絞って、彼女に声をかけた
エリザベス
弱々しいエリザベスの声に、少女は反応する
いつもなら「うん!ありがとう!」と、子供らしい反応をするはずだが、今回は違った
ミラードール
ミラードール
エリザベス
エリザベス
少女の口調は、不自然なほどに丁寧だった
そんな様子の少女に、エリザベスは当然困惑する
ミラードール
少女は不自然なほどに完璧な笑顔をした後、そそくさと去っていった
戸惑うエリザベスの横で、グレイスが突然笑った
いつも不機嫌なグレイスが、笑顔を見せるということは、珍しいことだった
グレイス
グレイスは腹を抱えて、大笑いした
エリザベス
エリザベス
グレイス
グレイス
そう語っていたグレイスの表情は、一部の人によっては狂気に満ち溢れているように見え、一部の人のとっては哀れみに満ち溢れているように見えるだろう
エリザベスは、グレイスのことが理解できなかった
それは元からだったが、今回のことでさらに、彼女のことがわからなくなっていた
グレンは、舞台の掃除を完璧に行う少女を見かける
グレン
グレンはいつものように、少女の元へ駆け寄った
ミラードール
グレン
一瞬首を傾げたグレンだが、すぐにいつもの笑顔に戻った
そして、グレンはいつものように、自分のパーツのスペアを少女に突然渡していた
ミラードール
グレン
そのスペアとは、指でも足でもなく、頭だった
なぜかはわからないが、アリスの頭のスペアが、箱の中に入っていた
いつもなら、驚いて箱をグレンに返すであろう
しかし、この少女はそうしなかった
ミラードール
グレン
ミラードール
グレン
完璧な笑顔を保ったまま、少女はグレンの目の前から去っていった
グレンは少女を呼び止めたが、少女が止まることはなかった
グレン
グレン
一瞬、まるで曇りの空のような哀れみの表情を浮かべたが、すぐにいつもの笑顔に戻り、楽屋の方へスキップをしながら移動したのだった
セリーナは、掃除を終えた少女に声をかけた
セリーナ
ミラードール
変わり果てた少女の立ち振る舞いに驚き、セリーナの瞳が揺れた
セリーナ
セリーナ
ミラードール
セリーナ
セリーナは、いつもと違う少女を目の前にして、焦り始めていた
そんな様子のセリーナを見ても、少女は気にも留めなかった
ミラードール
セリーナ
セリーナ
セリーナは、いつもの穏やかな声からは想像できないほど、大きな声を出した
ミラードール
ミラードール
その瞬間、少女の声は、かつてのアリスの声に変化した
セリーナは、かつてのアリスに戻ったと錯覚していたが、安心したのも束の間だった
セリーナ
セリーナの頬に、ヒビが入った
立ち尽くしている間に、どんどんセリーナの体にヒビが入っていく
そんな姿のセリーナを目にしても、少女はただ、じっと見つめているだけだった
セリーナ
セリーナ
セリーナ
セリーナが喋る度に、片腕に大きなヒビが入り、勢いよく床に落ちた
しかし、少女の答えは残酷だった
ミラードール
ミラードールはこう言っているが、前までの振る舞いは嘘ではなかったのは、確実だった
しかし、セリーナはそれを信じ込んでしまい、大きなショックを受ける
少女に対する重い感情をただ、ぶつけていた
セリーナ
片腕が崩れ落ちる
セリーナ
両脚が崩れ落ちる
セリーナ
その言葉を言いかけたその瞬間、セリーナの体が完全に崩れ落ちた
今の彼女は割れた窓ガラスと同様の存在
もう、言葉を発することはなかった
ヴィクター
ヴィクター
ヴィクターが現れ、割れたセリーナをかき集める
一方、少女はというと…
割れたセリーナを見ても、悲しそうにするわけでもなかった
ミラードール
そのまま、立ち去って行った
あれから、セリーナはどうなったのかというと、体がガラスでできているからか、「形だけ」は元に戻すことはできた
しかし、命は一度きりしかない、貴重なものであった
もう、前のように感情を持たず、ただのガラス人形になってしまった
置き物になってしまったセリーナは、肖像画と共に、楽屋の椅子に座らされている
元から容姿が美しかったので、ヴィクターのお気に入りなんだとか
翌日、今日も歪んだフリークショーで、新しい舞台が始まろうとしていた
少女は手鏡を持ちながら、自分の身だしなみを整えていた
ヴィクター
ヴィクター
少女は完璧な笑顔を向けた後、そのまま楽屋の外に出た
ミラードール
ヴィクター
ヴィクターは去っていく少女の姿を見ながら、独り言を呟いた
さて、次はどんな異形がこのショーに迷い込むのか…?
その異形は、どんな風に壊れるのか…?
その真相は、知る人ぞ知る
〜完〜
コメント
1件
読了しました……「普通になりたい」と願った先があの結末とは、本当に胸が締め付けられますね。特にセリーナが「嘘だったの?」と叫びながら崩れ落ちる場面、あの残酷さが凄まじかったです。グレイスが「最も普通で異常な存在」と嘲笑う皮肉も、ああ、そういうことかと。アンディの「また守れなかった」という一言に悔しさが詰まっていて…全員の想いが空回りする終幕、忘れられない読後感でした。完結お疲れ様でした、本当に美しくて痛い物語でした🌷