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変わらぬ君と2人きり

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変わらぬ君と2人きり

1 - ねぇ脹相

♥

313

2024年03月15日

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真人

ねぇ脹相

脹相

…なんだ

いつも通りの気怠げな顔をした脹相。 初めて会った時は「きっと冷え切ったやつなんだろうなあ」と思っていたのだが、実際そんな事はなく弟思いのガッツのある男だった。

そのギャップが面白くておかしくて。 脹相"は"裏表がないから、一緒にいて楽で楽しい。 …向こうはどう思ってるのか 知らないけど。

真人

出かけようよ

脹相

脹相は先程まで読んでいた本をゆっくり閉じ、自室へと戻っていった。

ガチャリ。 ドアを開ける音が聞こえた

脹相

行くか

真人

遅いよ。脹相

なんて冗談を口にしても、脹相は気にする素振りも見せずにスタスタと俺の前を歩いていった。

真人

ちょっと、待ってよ

脹相

前言撤回。やはり脹相は冷たいやつなの かもしれない。 俺が何を言っても、振り向くことすらしてくれないのだから。

まぁ、いつものことなんだけどね

真人

で、どこ行くの?

脹相

言い出しっぺの真人が決めろ

真人

ええ〜

そういえば、別に行きたいところがあるわけでもないのになんで「出かけよう」なんて言ったんだろう

真人

う〜ん…

…強いていうなら、このまま帰らずに永遠と2人でブラブラ歩いてたい

脹相は、今何を考えているんだろう。

真人

思いつかないや。脹相はどこか行きたいところないの?

脹相

俺か………。…アレがしたい

真人

アレ?

「アレ」と言って指を差したのは、至って普通のどこにでもあるブランコだった

真人

あぁ。ブランコ?

脹相

ブランコと言うのか。アレは

…そうか。脹相は受肉してからあまり日が経っていないからものを知らないのか

久々だなあ。ブランコ

真人

いいね。行こう

ブランコに腰掛け、鎖を掴んだ。 すぐに漕ぎ始めようとした俺だが、隣からやけに視線を感じ俺はそっちを見た。

真人

…漕ぎ方わかる?

脹相

…わからない

真人

なら押してあげる

俺はブランコから立ち上がり、 脹相の背後に周り、背中を押してやる。

脹相

おお。

真人

ブランコが前に出たら体を前に乗り出して、後ろにいったら後ろに体重をかけるの。

真人

できそうになかったら俺がずっと押してやるよ

脹相

いや、できそうだ

そこは嘘でも「できない」って言って欲しかったなあ。 でも脹相は、そういう空気読めないところがいいんだよね

真人

ならもう押さなくていいよね

諦めて俺はまた、 ブランコに座ろうとした。その時

脹相

いや、もう少し押していてくれ

真人

真人

はは。なんだ、やっぱり押して欲しいんだ

脹相

真人の手は、暖かいからな

真人

あぁ。そうなの

体温なんかある訳ないけど。 脹相からしたら俺の手あったかいんだ。

真人

真人

あ、そうだ

俺はそう言ってブランコに乗る脹相を止め、脹相の目の前に立った。

脹相

何だ?

真人

二人乗り、してみようよ

脹相

それ、いいな。楽しそうだ

表情はこれっぽっちも楽しそうじゃないのに。脹相も楽しいって思ってるんだ

俺は勢いよく、脹相が乗っているブランコに乗った。

脹相

これじゃ真人で、前が見えないな

真人

前見るとしても、木とガキしかないじゃん

真人

そんなん見るより俺見る方がマシだろ

脹相

ふっ、そんな訳無いだろ

今日初めて見た、脹相の笑顔。 別に冗談言ったつもりはなかったけど、笑ってくれるならそれでいいや

真人

そういやさ、結局弟どうなったの

脹相

……どうなった。とは?

真人

いやぁ、この前遊んでる途中に「弟が死んだ」とか言ってたじゃん

真人

アレ、マジでわかるもんなの?

脹相

…あぁ。死んでしまった

真人

寂しい?

脹相

そりゃあそうだろ

真人

俺が埋めてあげよっか?

脹相

お前には無理だ

真人

試してみないとわかんないよ?

脹相

これは断言できる。お前じゃダメなんだ

真人

…俺はあの気色悪くてクソ弱い2人より役に立ってあげられると思うけどね

つい、カチンときたんだ。 こんな些細なことで?って自分でも思う。でも何故かどうしても耐えられなかったんだ。

脹相

…これを止めろ

真人

これってブランコのこと?それを止めろって?どう考えても座ってるやつが地面に足つける以外の止め方ないでしょ?

真人

はは、それくらいわかるだろ。考えなよ

きっと長くなるだろうなあ。 このしょうもない喧嘩

脹相

ッ……

脹相

俺は、お前のそういうところが嫌いなんだ!!

真人

俺は好きだよ

脹相

……………

脹相

……は?

真人

…?……

今自分が言ったことを、俺は理解することができなかった。

脹相

…?……?…

ポカンと空いたその小さな口。 いつも眠たそうにしているあの目は、今は思い切り見開いている。 そのリアクションは単純な驚き? それとも俺に引いてるの?

真人

……

長くなるだろうと思ったこの喧嘩は、意外にも早く終わってしまった。

あの後。 俺たちは一言も発さず、気まずい空間を漂わせながら2人でアジトに帰った。

帰ってから、その日はこれいったことは全く起こらなかった。

脹相

…おはよう

真人

…はよ

今俺、人間みたいだよなあ

というか、まさか俺が脹相のこと好きだったなんて驚きだよなあ。 …………アホらし

真人

……

真人

脹相

脹相

真人

こっちきて

手招きをしながらそう言った。脹相は頭の上にクエスチョンマークを浮かべながら言われた通り俺の方へくる。

俺は近付いてきた脹相の手を握った

脹相

………何がしたい?

真人

真人

あったかい?手

脹相

あぁ…あったかい

握る角度を変えてみたり、揉んでみたり、両手で握ってみたりして楽しむ。

脹相

……

脹相

……やはり俺のことが好きなのか?

真人

うん

真人

なんで?

脹相

…昨日真人がそう言っただろう?またいつもの悪ふざけなのかと…

真人

結構ガチ目に言ったでしょ?好きって

真人

まぁ、俺も昨日気付いたんだけどね〜

真人

言うつもりもなかったし。

脹相

そうなのか…

その顔、何の顔?やっぱり脹相は何考えてんのかわかんないね。

真人

…脹相は?

脹相

………俺にはよくわからない

真人

だと思った。脹相って、知らないことばっかだよね

脹相

……

俺の手が握って離さない脹相の手に キスを落とす

真人

俺が教えてあげよっか

これは弟には、出来ないことでしょ?

真人

そこに寝転んで

脹相

わかった

まだ夜が明けたばかりで 電気を付けていない部屋は薄暗い。 衣服とシーツが擦れる音がする。 そして目の前にある、 まるで雪のように白い肌。

なーんか…脹相えっちだなあ

真人

……

思わず俺は思い切り脹相を抱きしめる

脹相

少し痛い。真人

腕の力をどんどん強めていく。 離れないように、離さないように

脹相

!!痛ッ

骨が軋む音がした

脹相

離せ!!真人!!

もう少し脹相の痛がる顔を見ていたいけど、…しょうがない。と俺は脹相を解放してやった

脹相

ッ俺は痛いことを知りたいんじゃ無いんだ

脹相

こんなことをするなら俺は部屋に戻る

真人

わかったわかった。悪かったよ

と言いながら、 俺は今までにないくらいの笑顔で脹相の右足の骨を折った。

脹相

あ゛ッ!?

俺だってこんなことするつもりで脹相を部屋に呼んだんじゃないよ? でも、脹相の反応が面白くってつい。

真人

あははっ。良い顔してるね

脹相

ッ殺すぞ……

真人

脹相には無理だよ

そう言いながら、術式を使って脹相の足のカタチを直していく。

脹相

………

真人

言い返せないの?ちょーダサくて可愛い

俺は脹相の頬をやさしく撫でる。 ひんやりしていて気持ちいい

脹相

…ッ………

真人

骨しかないと思ってたのに、意外ともちもちだー…

脹相

……

真人

脹相が俺の見様見真似をして 俺の頬を優しく撫でた。

真人

んふふ

思わず口元がゆるんでしまう。

脹相

…これの何が良いんだ

真人

…俺にもよくわかんない

脹相

なんだ。それ

真人

はは。だからわかんないって

やっぱり、 脹相のそういうところがいいなあ

一緒にいて不快じゃない。むしろ楽しい。このまま2人でどこかに消えてしまいたい。俺から離れないで欲しい。 そんな思いを込めてまた俺は脹相抱きしめた。

脹相

!…

真人

はは、流石にもう関節外さないって〜

今なら人間の気持ちがわかる気がする。恋なんて馬鹿らしいなんて思っていたけど、悪くないのだな

2人きりの部屋に響くリップ音

それを無言で受け止めてくれる脹相

真人

一緒に地獄に堕ちよう

なんて馬鹿げた提案をしても、 きっと脹相はなんだかんだ言って俺に着いてきてくれるんだろうな

脹相

弟達もいいか?

真人

4人じゃなくって、2人きりがいいの!

真人

察しろよ

やっぱりこういうところが、 いいんだなあ

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