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私の名前は、 沙霧久留美(さぎり くるみ)。
私には、 和佳奈(わかな)という 双子の妹がいる。
和佳奈は、 成績優秀でスポーツ万能という 絵に描いたような人気者だった。
小学生の頃から、 習い事でテコンドーとヴァイオリンをやっていて、 テコンドーに至っては オリンピック出場も期待されていた程だった。
それに引き換え私は、 何をやってもダメで根暗な少女だった…
強いていうなら、 絵を描く事が好き という取り柄があるけど、 コンテストに参加しても 今まで入賞したことなんて微塵もないし、 Twitterに載せてもいいね1つすら付かなかった。
その差が理由なのか、 周りの人達は私と和佳奈を比べて 「本当に双子か?」 と思っているように感じた。
沙霧 和佳奈
霜月 夏子
沙霧 和佳奈
霜月 夏子
葵井 伊弦
福尾 博人
藤村 椿
吾妻 柚子希
和佳奈のクラスは、 東京オリンピックの話題で持ちきりだった。
沙霧 久留美
母
沙霧 和佳奈
母
母
父
沙霧 和佳奈
沙霧 久留美
沙霧 久留美
母
母
父
父
母
沙霧 久留美
両親の嫌味がまた始まった。
悪意はないんだろうけど、 一言一言が心に刺さり、 とても傷つく。
沙霧 久留美
沙霧 久留美
沙霧 久留美
いつも親や親戚、 学校の友達にちやほやされるのは和佳奈だ。
…私だって、あんな風に注目を浴びたいのに。
私は和佳奈との差に劣等感を感じ、 嫉妬するようになった。 そして、だんだんと心が荒んでいった。
7月23日
この日は 親戚の真希おばさんたちも来ていた。
夏休み前から9月いっぱいまで、 うちに留まるそうだ。
母
悠哉
月美
ついに東京五輪の開会式が始まった。
和佳奈も、テコンドーの日本代表として 大人に混ざって出場していた。
今この瞬間、 世界中が五輪ムードで包まれている中… 華々しい音楽が、 国立競技場に響き渡る中で
たった一人だけ、 私は暗闇に取り残されていた。
沙霧 久留美
沙霧 久留美
沙霧 久留美
小さい頃にたくさん見てきたオリンピックが嫌いになった。
華やかな世界で たった一人私だけが残されているような感じがしたからだ。
これも全部、和佳奈のせいだ。
ベッドから起き上がり、 ふと自分の部屋のテレビをつけた時だった。
静まり返る競技場で、煌々と燃え上がる聖火を背景に、 和佳奈が大勢の選手の前に立ち、 彼らのクラスが合唱コンで歌う課題曲を ヴァイオリンで演奏し始めた。 ピアノ伴奏もついていた
けれども、 心が荒んだ今の私には、 その音色は聞こえてこない。
沙霧 久留美
と 願い続けている毎日だった。
数日後───
その日も スマホで絵を描いていた。 途中で寝落ちしていたらしい。
どれくらい寝落ちしていただろうか。
いつも見ていたネットニュースに、 こんなニュース速報が届いた。
無情にも私の願いは打ち砕かれた。
和佳奈がメダルさえ獲らなければ……
オリンピックさえ開催されければよかった。
私はいつしか 人の幸せや成功を憎み、 人の不幸を喜ぶようなひねくれ者になった。
Twitterにて
ユーザーA
ユーザーB
ユーザーC
ユーザーD
数週間後…
一階のリビングが賑やかになってきた。
金メダルやビクトリーブーケ、 お店で買ってきたであろう、 マスコットキャラのぬいぐるみを抱えた 和佳奈が帰ってきた。
その日は丁度、 和佳奈の友達も来ていた。 金メダルの獲得祝いだろう。
真希おばさん
洋一おじさん
沙霧 和佳奈
沙霧 和佳奈
悠哉
悠哉
月美
月美
凜香
沙霧 和佳奈
正雄
霜月 夏子
霜月 夏子
沙霧 和佳奈
葵井 伊弦
沙霧 和佳奈
母
父
吾妻 柚子希
藤村 椿
福尾 博人
悠哉
凜香
ますます劣等感に苛まれ落ち込む私を後に、 和佳奈に対する祝賀の声が絶えず響き渡ってきた。
母
父
沙霧 久留美
沙霧 久留美
私は、居ても立っても居られなくなり、 寝室に入っていった。
和佳奈を仲良しの双子ではなく 憎悪の対象として見るようになった。
姉である私を差し置いて 輝き続けるあいつを。
むかつく
ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく
リプライ欄にて
ユーザーA
ユーザーC
ユーザーD
ユーザーE
沙霧 久留美
沙霧 久留美
沙霧 久留美
沙霧 久留美
沙霧 久留美
それからというもの、 私はTwitterで有名な絵師の作品をトレパクし続けた。
あんな奴らは、 努力しないで注目を浴びられるんだろうな。 もちろん、和佳奈も。
今までの私の努力が無駄に思えるほど、 この「作業」は楽だった。
こうして、 人の作品をパクり続けた 矢先のことだった……
ある投稿のリプライ
沙霧 久留美
沙霧 久留美
沙霧 久留美
沙霧 久留美
沙霧 久留美
私は正しい
「パクられた」と騒ぎ立てた野次馬どもが悪い
と正当化し続けた。
私は 気がつけば金槌とハサミを持って、 和佳奈の部屋に来ていた。
そこには あの日あの時、表彰台の一番高いところで輝いていた 金メダルとビクトリーブーケが、飾られている。
沙霧 久留美
沙霧 久留美
沙霧 久留美
沙霧 久留美
ガシャン‼︎バキッ‼︎
私はありったけの恨みをこめて、
和佳奈の金メダルを ズタズタに破壊してやった。
ついでに、 ビクトリーブーケの花もむしり取ったり、 和佳奈の部屋も荒らしてやった。
沙霧 久留美
沙霧 久留美
沙霧 久留美
沙霧 久留美
憎悪の対象をぶっ壊すのは
すごく気分がよかったw
そして、 メダル破壊の一部始終を 意気揚々とTwitterに投稿した。
沙霧 久留美
沙霧 久留美
あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは‼︎
滅茶苦茶に荒らされた あいつの部屋のテーブルの上に立って、 高笑いをしていた矢先のことだった。
スマホに こんなニュースが届いた。
例のリプライ欄にて
ユーザーF
ユーザーG
ユーザーC
ユーザーC
ユーザーE
ユーザーE
ノエル
ノエル
ユーザーH
私のTwitterアカウントは、 炎上してしまった。
過去のツイートにも飛び火している。
その炎は、私を焼き尽くすまで消えてくれない。
二学期にもなって、 まともに学校へ通えてすらいない。 「五輪選手の努力を踏み躙った最低女」 と後ろ指を指されるのが怖いからだ。
通知に怯えていたある日、和佳奈からDMが届いた。
スマホに映る一文一文から、 怒りの叫びが聞こえてくるように感じた。
私が和佳奈に向けたのは、嫉妬心じゃない。 ただの逆恨みだったのだ。
注目を浴びたいがために、 兄弟を超えたいがためにした事への代償は あまりに重すぎた。
ピロン♪ ピロン♪ ピロン♪ ……
沙霧 久留美
沙霧 久留美
ガン‼︎
自暴自棄になって、 床に叩きつけたオルゴールが鳴った。
「まっすぐ まっすぐ 大空に伸びてゆく枝は 蕾をつけた 力強く 咲き誇ってるように見えるけど 花は 切り離され 風に流されてく サヨナラは もう言わないよ あの桜の大樹は ソメイヨシノ…」
その音色は、 私たちが小学校時代に歌った 「ソメイヨシノ」という曲だった。
ふと、Twitterを覗いて見ると 私が作品をパクった「ノエル」と言う人のツイートが目に入った。
「メダルを奪っても、本当のメダリストにはなれない。 人の作品を盗む事は、それと同じだ。 あなたがその証拠を消そうとしない限り、“犯罪者”という烙印は永遠に残り続ける。」
その言葉は私の心に刺さった。 気がつけば涙を流していた。
沙霧 久留美
沙霧 久留美
そう呟いた瞬間、 閉ざしたカーテンの隙間から 僅かに一筋の光が差し込んだような気がした。
私の呟きに答えるかのように…
fin
作者より
自分が注目を浴びたいがために、 周りの人を傷つけていませんか?
一見、 何でも成功させてるように思える人でも 実は裏で努力をしていたのです。
「自分はこんなにも頑張ってたのに、なんであの子だけチヤホヤされるの?」 と思っている貴方へ
自分より圧倒的に注目を浴びてる人に嫉妬するより、 その人に近づけるような努力をすれば、 大きな目標を成し遂げることができるはずです。
メダルを奪っても、本当のメダリストになんてなれるはずがありません。
この小説は、 他者に一方的な嫉妬心を抱く人間の心理を題材にした作品です。
最後まで読んでいただき、 ありがとうございましたm(_ _)m