ナツ
ナツ
引っ越し作業中。 肝心な同居人は手伝ってくれず リビングでゲームばかりしてる。
仁
ナツ
仁
右か!うわ、ちくしょー
仁
仁
ナツ
ナツ
くれてもいーじゃん!
仁
仁
仁
ジンはピシャッとそう言い切って またゲームを進めようとした。
ナツ
ナツ
仁
ナツ
恩着せがましく嫌味ったらしい 言い方しか出来ないあたしの性悪。
仁
ナツ
仁
仁
舌を出してベーっとしてみせて、 リビングから出て行った。
ナツ
ナツ
拗ねたような、 まだ納得いかないという表情に 胸がギュッと締め付けられた。
拗ねたジンは自分の部屋に戻って行ってしまった。あたしも部屋に戻って荷物を詰める作業に取り掛かる。
ナツ
整理してると、アルバムが。 幸せそうに笑うお姉ちゃんと 仁のお兄ちゃん。家族の写真。 あたしと仁は、義理の兄妹になる。
幼なじみだったあたしたち。 お姉ちゃん達が結婚したのは3年前。 仁とあたしはお互い実家から少し 離れた大学だったから 家賃も浮くし安心だからと、 両親の意向でほぼ強制的に決まり 2人暮らしする事になった。
ナツ
同居して2年、アルバイトをして コツコツ貯めたお金で、 引っ越す事に決めた。
…限界だった。 あたしの初恋の相手は仁で、 自信がなくてずっと押し殺していたら いつの間にやらその初恋は 叶えてはいけない恋になってしまって ジンが他の子と遊んでいるのを 見ているのもどうしようもなく、 ものすごくしんどかった。
ナツ
本棚に置いてある漫画や本や アルバムをダンボールに詰め込んで、玄関先に運び込もうと部屋を出た。
仁
ナツ
ドアを開けるとでかい図体した仁が すぐそこに立ってて。 ちょっと気まずそうに 視線をそらして、
仁
ナツ
ナツ
仁
なんちゅーマイペースな男。 ちょっとイラッときてジンを無視して 通り越して歩いてくと、 ガッ、とダンボールを掴まれた。
仁
仁
ダンボールを持ち上げて少し笑った。 ずるいなぁと、思いながらも 嬉しかった。嬉しかったけど。
ナツ
ナツ
作ってあげてもいーよ?どお?
仁
ボソッと呟くとそれから黙々と ダンボールを玄関まで運び出し、 詰める作業も手伝ってくれて 掃除機まで掛けてくれるという 珍しく見事な仕事っぷりだった。
とりあえずひと段落終わって、 あとは明日の昼に両親が手伝いに きてくれたら新しいアパートに 荷物を運び出すだけ。
ナツ
仁
オムライスを作りながら、 あれ、もしや仁に料理作るのは これで最後かな…? そう思うと少し寂しいけど 一生懸命心を込めてオムライスと オニオンスープを作った。
ナツ
ナツ
テレビを見てた仁に そう話しかけると、 少し不機嫌そうな表情をしてる。
ナツ
もっと嬉しい顔してよねぇ
せっかく気合い入れて
作ったのに…
仁
またいつでも来れるだろ
てか来いよ
ナツ
仁
ナツ
ナツ
仁
おもむろにオムライスに口を付けて、 美味しそうに頬張ってくれてた。 同居してからはその顔を見るのが 嬉しくて、あたしは慣れない 料理を頑張ってた。