小悪魔エンジェル

そう言って渡されたのはドッジボールのボール。

こういうのは使った人がしっかり戻してもらいたいものだ。

馬鹿にしたように笑う友人達。

後でしばいておこう。

体育館に向かっている途中、見覚えのある特徴的な金髪にピンクグラデーションが目に入った。

気づかれないようにと別ルートを行こうとすると、黄色の瞳と目が合った。

そう言って頬をツンツンしてくる。

それと同時にまた甘い香りが鼻を通った。

俺は「やめろ」と言うようにみこちゃんの手をゆっくりと退ける。

みこちゃんは一瞬だけ不服そうな顔をしたが、またすぐ笑顔に戻った。

みこちゃんはニマニマと不敵な笑みを浮かべている。

額にデコピンを喰らわした。

みこちゃんは痛そうに額を抑えている。

ﾍﾟﾁﾝｯ

ｶﾞｺﾝｯ

俺はボールをボールカゴに入れた。

…てか、ほんとに匂い強いな…

倉庫に充満する甘い香りに少し頭がぼーっとする。

突然みこちゃんにマットの上に押し倒された。

俺の言葉を無視して、みこちゃんは馬乗りになり、ネクタイを緩めた。

ネクタイを緩めると、みこちゃんの白い肌と鎖骨が露わとなった。

みこちゃんに両手を抑えられ、完全に逃げられなくなってしまった。

みこちゃんは首を預けるように俺の口元へと近づいた。

甘い匂いでくらくらする。

早く食べてしまいたい。

目の前のご馳走様を、なにも気にせず食べられたらどんなに楽か。

ｶﾞﾌﾞｯ、

ﾄﾞｻｯ…

噛まれた衝撃で力が弱まったところを狙い、みこちゃんの両手を掴んでマットに押し倒した。

ﾊﾟｯ

俺はみこちゃんの両手を離し、ゆっくりと立ち上がった。

ﾁｯ、（舌打ち

重い体を引きずりながら、倉庫の扉に手をかける。

そして、マットの上で座り込んでいるみこちゃんを見て、一言放った。

ﾊﾞﾀﾝｯ…

らんらんが俺の眉間をぐりぐりとしてくる。

いるまちゃんが俺の頭をワシャワシャと犬のように撫でる。

これ、メイクの前にらんらんがセットしてくれたやつだ…

いるまちゃんが10悪いのになんでそんな強気なの…

ﾊﾞﾀﾝｯ

仕事が終わり、またいるまちゃんの車で家まで送ってもらうことになった。

モデルできそうな人か…

顔も良くてスタイルも良い人…

いや、この人だけは無いな。

できそうな人を手当たり次第誘ったが、全員答えはNO。

先輩や後輩も俺と同じ事務所なんてやっていける気がしないとのこと。

もう心当たりがある人が1人しかいなくなってしまった。

昨日あんなことを言ったばっかりなのに…

今回ばかりは仕方がない。

俺は重い足を運びながら教室を出た。

たしかC組って言ってたよね…

変に緊張するな…

俺が扉に手をかけた時、教室の扉がゆっくりと開いた。

ラッキーなのかアンラッキーなのか。

どちらにせよ丁度良かった。