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ゾム

はぁはぁはぁ

ゾム

結局……戻ってきてもうた

外で走り回り、サクラを探していたゾム

時に変な空間へは行ったが、最初に出会った城下町へ戻ってきていた

ゾム

どないしよ……連絡が無いって事はまだサクラは見つかってないやろうし……

ふと顔を上げるとそこにはゾムを驚いたような顔で見ている人間がいた

ゾム

叔父さん……

オシタニア

ゾム……なのか?

ゾムの育ての親

血の繋がりのない似つかない親

サクラと出会うきっかけとも言える人間

ゾムにとって、サクラを存在を教えてくれたオシタニアはサクラ同様に大切な人のはずだった

ゾム

……なんで、城下町におるんや

ゾム

西部の街から出てくんなって言ったやろ

オシタニア

ここの城下町に仕立てて貰っていた服を取りに来たんだ

そう言ってオシタニアは持っていた紙袋を持ち上げた

一般貴族とは違い、召使いを雇うお金も荷物を持ち帰る馬車を借りるお金もない

古びて広い館を1人で管理している

ゾム

ない金で服を仕立ててどないするんや

ゾム

パーティなんて、縁遠い話やろ?

ゾム

へーベルトの名前やったら、尚更

オシタニア

仕事着さ……畑仕事だけじゃ無くなったしな

ゾム

名高くなったもんやな……翡翠村の人間から信頼は取り返せたんか

オシタニア

まぁ元からの信頼があったからな

ゾム

(知ってんぞ、信頼を金で買った事実は)

ゾム

そうか……で?今から西部に帰るんか?

オシタニア

ああ、そんなところだ

オシタニア

しかしゾム

オシタニア

お前は本部の役人だろ?

オシタニア

こんな城下町で走り回って、何をしている

ゾム

(此奴……なんで、俺が走り回ってるなんて知ってるんや?)

ゾム

(確かに走ってはいたけど、息が切れてた所はコイツは見てないはずやのに)

ゾム

色々あってや、見回りを早くしてたんや

ゾム

仕事はしやなアカンねんやろ?叔父さん

オシタニア

ほぉー、いい軍人になっているじゃないか

オシタニア

弟とは、違う道を進んでいるみたいで良かった

ゾム

親父かて、立派に仕事してた人間や

ゾム

お袋もな

ゾム

叔父さんみたいに、館だけを相続して自由に生きてた訳やない

ゾム

その年になって、やっとまともな仕事してるもんな?

オシタニア

ああそうだな

オシタニア

若いうちに苦労しておけば、こんな事にはならなかったのかも知れない

ゾム

(気味悪いわ……へらへらして……こんな所に来やん癖に)

ゾム

(此奴がお気に入りの宝石店も、雑貨屋も、全部違法性が見つかったから潰したのに)

ゾム

(此奴だけ、ずっと生き残ってる……)

オシタニア

(弟に似た、私への憎悪)

オシタニア

(そして少なからず感じている恩で、私を生かしているだけだろうな)

オシタニア

(ゾムの力なら、簡単に私を殺せる)

オシタニア

(しかしな?ゾム)

オシタニア

(私はまだ、死ぬ訳にはいかないんだよ)

オシタニア

(これは、当主の仕事をしない、サクラやゾムの為でもあるんだからな?)

ゾム

さっさと、西部に帰るんやで

ゾム

東部も、警備人数が多いとはいえ、安全とは言いきれへんし

オシタニア

優しいな、私はてっきり嫌われているのかと思っていたよ

ゾム

(嫌いに決まってるやろが)

ゾム

まぁ……恩があるしな

オシタニア

その恩を感じているのなら、少し来てくれないか?

ゾム

……

ゾム

俺、任務中で忙しいんやけど

オシタニア

見回りだけだろ?さっき、そう言ったじゃないか

オシタニア

城下町で、本部方面に動いていたと言うことは、ある程度仕事は終わったんだろ?

ゾム

(運が悪いなぁ……悪い予感しかしやん)

ゾム

ええで、さっさと終わらせてや

オシタニア

もちろんだ

オシタニア

こっちに来い……【殺人鬼】

ゾム

!?

全身の神経が全て取られたような感覚になった

まるで、自分の身体では無いように

言葉も何も発せなかった

ゾム

(何が起こったんや?!なんで、叔父さんは俺の事を【殺人鬼】だなんて)

ゾム

(それに、身体の自由が効かへん!何がどうなって)

オシタニア

何をしている、着いてこい

ゾム

(くっそ……)

ゾムの身体は勝手に動き出す

オシタニアはその様子にニヤリと笑いながら歩き出した

着いた場所には青く光る紋章があった

何個もの路地を抜け、廃屋の中に入ってすぐに視界に入る

まるで、魔法のようなモノ

ゾム

(これは……なんかの陣か?なんでこんなところに)

オシタニア

知らなくて当然だ

オシタニア

ここはシャルロット家嫡男にしか教えられない場所

オシタニア

そして、それを管理するのはシャルロット家当主の仕事だった

オシタニア

それなのに、サクラは仕事をしないしお前は軍に入った

オシタニア

せっかく、呪われた家からおさらばしたと思っていた私を縛り付けた

オシタニア

こんな厄介な代物とな

ゾム

なんや……それは

オシタニア

「古の陣」と呼ばれるモノだ

オシタニア

神に嫌われた一族が、神の力を宿した陣を守護しなければならない

オシタニア

我々は神の奴隷であり、駒である

オシタニア

我々は神に生涯を差し出し、神は我々に祝福と呪いを与える……誓約を宿した陣

ゾム

そんなん嘘やろ、神なんか実在しやんし

オシタニア

そうだな、実在はしないだろう

オシタニア

だが、この世に神話が残っている以上はこの仕事をこなす他ない

ゾム

……

ゾム

仮にほんまやとして、なんで俺をここに連れてきたんや

オシタニア

お前が持つ『祝福』を在るべき場所に返す為さ

ゾム

『祝福』やと?

オシタニア

お前の『祝福』は『強運者』

オシタニア

運を試される場では必ず自身に利益になる方の結果が選ばれる

オシタニア

ゾム、その効果を使い終わった後で良かった

ゾム

(運……か)

ゾム

(確かに、運ええなぁとか思う日は多かったけど)

ゾム

(今日に限っては、運は良くない)

ゾム

(サクラが見つからへんのに、運が良い訳無いやん)

オシタニア

運の尽き……だな、ゾム

オシタニア

お前が今まで戦場で死ななかったのは『強運者』の効果のおかげ

オシタニア

国家最高戦力として名を挙げたものな!

オシタニア

それさえ無くなれば、お前は脅威じゃなくなる!

ゾム

……

ゾム

それがどないしたん?

オシタニア

はぁ……?わかっていないのか?

オシタニア

お前、今度は絶対に死ぬんだぞ?

オシタニア

あの戦争も、生き残ったのが奇跡だったんだ

オシタニア

当時はそんな余裕もなかったが、今ならお前が生き残った理由がわかる!

オシタニア

『強運者』の力を神に返せば……私はこの仕事から離れられるんだ!

ゾム

その根拠は何処にあるんよ

ゾム

俺が仮に『祝福』を持っていたとして

ゾム

神の存在があったとして

ゾム

本当に叔父さんの願いが叶うん?そんな保証があるんか?

オシタニア

そ、それは……

ゾム

別に、俺はそんな『祝福』がなくたって生きてやる

ゾム

確証のない力に頼りながら、戦争に参加してた訳やないしな

ゾム

頭、終わってんな

ゾム

叔父さん

オシタニア

(嗚呼嫌いだ)

オシタニア

(どんどん、憎き弟に似てくるお前が)

オシタニア

(私の優秀な駒になると思っていたお前が)

オシタニア

(私に楯突いているのが、腹立たしい)

運の尽きは自分や オシタニア

オシタニア

ゾム

!?

どちらが追い込まれてるんか

これでわかったやろ?

兄貴

運に見放されたのは

俺の息子やなしに

自分や

大人しゅう消えるか 仕事を全うせんかい

シャルロット家の 能無し

オシタニア

(あの日、あの時!)

オシタニア

(彼奴は今まで私に声すらもかけなかったのに!)

ゾム

なんや……今の声と空間

オシタニア

何を今更……私の名を呼ぶんだ

そんなんわかるやろ?

ゾム

(この声……すっごく聞き覚えのある……ような)

自分がちゃんと仕事せえへんから、俺と妻はあんな運を受け入れてん

オシタニア

なっ……!受け入れただと?

オシタニア

お前らはそういう未来だったんだ!

オシタニア

人を殺し、利用するお前とお前の妻は!

オシタニア

お前らの才能両方を持った殺人鬼をこの世に産み落とした!

オシタニア

我が家の『祝福』すらも持ち合わせてな!

当たり前やろ ゾムはうっとこの人間やねんから

ゾム

お前……何者や

オシタニア

まさか……気付いていないのか?

ゾム

嫌……声は聞き覚えあるんやけど……はっきりと思い出せへんくってな

ゾム

てか、お前は黙っとけよ

思い出さんで結構

所詮、そんなモノや

オシタニア

貴様……!

俺の罪は昔から兄貴の罪や

知ってるやろ?

うっとこの家訓

「優秀な者の罪は無能が背負う」

自分はそれ自身より優秀なゾムやサクラに押し付けてる

自分自身が、仕事を放棄してるのに偉そうに言える権利はあれへんねん

オシタニア

黙れよ……ここでも、私の邪魔をするのか

ゾム

(話が一向に見えてこやん……全くもって理解出来ひん)

ゾム、自分は帰らんかい

ほんでサクラを探し出し守らんかい

すると、紋章の光が強くなる

ゾム

眩しっ!

オシタニア

おい!待たないか!

ゾムは、城下町に戻っていた

サクラが居なくなってからずっと振り続ける雨の中

服は濡れていないまま、立っていた

ゾム

なんやったんや……

ゾム

さっきのは

ゾム

(でも、あの声の奴にサクラを守れって言われたんや……)

ゾム

絶対に探し出したる

ゾム

俺の力は……

「サクラを、姉ちゃんを守るために身につけた力や」

そうしてゾムは本部へと戻って行った

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