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ななか
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ななか
コメント
3件
なんでこう、、、いい感じにお話が進んでいくのだろうか、、天才か??
私——優杏がまだ小学六年生だった頃
この頃は、私はまだ真面目な生徒だった
宿題は出す。忘れ物はしない。 先生の話はちゃんと最後まで聞く
先生のことも、わりと好きだった
——少なくとも、あの時までは
昼休み
教室の隅で、小さな声が聞こえた
佐藤
振り向くと、クラスの男子が 三人で笑っている
真ん中にいるのは、引っ込み思案な性格の クラスメイト・佐藤さんだった
佐藤さんの筆箱を、誰かが高く掲げている
男子
男子
佐藤さんは困った顔で手を伸ばす
私は席を立った
広瀬 優杏
四人が振り向く
男子
広瀬 優杏
男子
広瀬 優杏
教室が少し静かになった
一人が、ため息をつく
男子
広瀬 優杏
男子
筆箱は机に置かれた
三人は笑いながら離れていく
佐藤
佐藤さんは小さく言った
広瀬 優杏
私は少し安心したし、誇らしかった
先生に言わなくても、解決した
そう思った
でも放課後
職員室に呼ばれた
先生が腕を組んでいる
先生
広瀬 優杏
先生
広瀬 優杏
先生
私は戸惑った
広瀬 優杏
先生
先生
その言葉が、理解できなかった
広瀬 優杏
先生
私は黙った
先生は言う
先生
広瀬 優杏
広瀬 優杏
先生は少し考えてから言った
先生
私はそれ以上何も言えなかった
『困っている人がいたら助けましょう』、 って教えて来たのはそっちじゃん
何かが切れたような音が聞こえたような 気がした
職員室を出ると、廊下の窓から 夕方の光が入っていた
校庭では、誰かがサッカーをしている
私はふと思った
広瀬 優杏
先生は、正しいかどうかじゃなくて 面倒かどうかで決めてるんだ
よくよく考えたら、本気で尊敬してる大人も いないし、大人に何か助けてもらったことが あるわけでもない
広瀬 優杏
その瞬間、胸の中で何かが静かに冷えた
怒りじゃない
失望でもない
もっと、静かなもの
……たぶん、信頼がなくなる音だった
広瀬 優杏
優杏の母
その日の夜
自宅のリビングで母親に言った
広瀬 優杏
優杏の母
優杏の母
広瀬 優杏
キッパリ言った
広瀬 優杏
男子も、先生も
どうせ守ってくれないんだから
広瀬 優杏
広瀬 優杏
――中学生になったら
もう、いい子やめよう
誰かのルールじゃなくて、 自分で決めて生きる
春休み
ドラッグストアで、赤い染め粉を見つけた
広瀬 優杏
私はそれを手に取って、少しだけ笑った
前髪の、ほんの一部
誰にも見えないくらいの場所に赤色を入れた
鏡の中の自分が、少しだけ違って見えた
小さな反抗だった
でも、確かに自分で決めた色だった
広瀬 優杏
……誰か、本当の私を見て
広瀬 優杏
広瀬 優杏
広瀬 優杏
優杏の声が低くなる
広瀬 優杏
藤野 翠
広瀬 優杏
迷いのない声だった
広瀬 優杏
広瀬 優杏
広瀬 優杏
その言葉に、胸の奥がチクリと痛む
藤野 翠
私のその言葉に、優杏は少し苛立ちを見せた
広瀬 優杏
優杏は、その時初めて少し傷ついたような 顔をした
でも、すぐに空気が冷たくなる
広瀬 優杏
広瀬 優杏
広瀬 優杏
私も負けじと説得を試みる
藤野 翠
藤野 翠
優杏の顔が一瞬固まった
広瀬 優杏
優杏は笑った
でも全然楽しそうじゃない
広瀬 優杏
その言葉が、重く突き刺さる
広瀬 優杏
広瀬 優杏
息が詰まった
藤野 翠
過去の私だ
広瀬 優杏
広瀬 優杏
私は俯くだけで、何も言えなかった
鼻が赤くなり、瞳が潤んだのが自分でも わかった
そんな私の顔を見て優杏はハッとしたような 顔をし、背を向けた
広瀬 優杏
広瀬 優杏
それだけ言って、優杏は背を向けて 車の方へ歩き出した
藤野 翠
これ以上、言葉が見つからなかった
ポツッ
頬に冷たいものが落ちた
藤野 翠
そう呟いた瞬間、雨は勢いを増した
体は濡れて、どんどん冷えていく
なのに、足はどうしても動かなくて
おばあさん
折りたたみ傘を持って車から 迎えに来てくれた おばあさんに肩を叩かれるまで、 私は少しも動けなかった