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お父さん、久しぶり!

お父さん

おぉ、来たか!

お父さん

まぁまぁ、座りなさい

お父さん

今日は定休日で誰も客は来ないからな、親子水入らずで呑もうじゃないか

そうだねマスター!(笑)じゃあ私瓶ビール!!

お父さん

おいおい、娘の特権使って店の酒飲みすぎるなよー?(笑)

私の父は男一人で小さなカラオケを営んでいます。

30年以上勤め続けた消防署を定年退職してから、長年の夢だったカラオケ店のマスターとなって5年ほど経ちます。

そんな父ですが、娘の私にも気がかりなことがあるのです…。

電話

プルルルル…

お父さん

あ、ちょっと待ってくれ、電話だ

うん!(定休日なのにお客さんかな?)

お父さん

…はいもしもし、カラオケ〇〇ですが

お父さん

……もしもし!!

……ん?

お父さん

………

(どうしたんだろう?一言も話さないままうなづいてるけど…)

しばらく無言でうなづいていただけの父が、ため息混じりに口を開きました。

お父さん

……あのね、〇〇さん

お父さん

私にそんなこと言われてもね、どうすることもできないんですよ…

お父さん

…前にも言ったでしょう?

(なんの電話…?)

(まさかお父さん、お客さんから苦情でも…)

そして父は少し優しい口調で電話の相手を嗜めるように言いました。

お父さん

〇〇さん、あなたはね…

お父さん

……もう死んでるんですよ

……え?

お父さん

あなたは1年ほど前に、ここから家に帰る途中で…交通事故で亡くなってるんです

お父さん

だからね、こうして何度も予約の電話をいただいても、私にはどうすることもできないんです

お父さん

………………

お父さん

お願いですから…

お父さん

…ちゃんと行くべき所に行きなさい

ど、どういう意味…?!

しばらく無言が続いたのちに父は受話器を戻し、私に向き直りました。

お、お父さん…今のって…

お父さん

…時々かかってくるんだよ

お父さん

亡くなった常連客の、〇〇さんからの予約の電話がな…

う、嘘でしょ…?!

だって今、お父さん普通に会話してたじゃないっ!!

お父さん

あぁ…

お父さん

〇〇さんは…自分が死んだことに気づいてないからな

お父さん

事故に遭ったあの日も、かなり飲んでたから…おそらく記憶がないんだろう

で、でも…どうして電話なんてかけてこれるの?!

死んでるん…でしょ…?!

お父さん

それは…お父さんにもわからない

じゃあ、お父さんがさっきの電話の人と、その亡くなった人を間違えてるんじゃないのぉ?(笑)

お父さん

それはないよ

お父さん

〇〇さんは特別ご贔屓にしてくれてた常連さんだからな…

お父さん

毎週末は必ず来てくれてたし、よく恋愛の相談なんかも受けてたんだよ

お父さん

〇〇さんは、まだまだ若くて綺麗な子だったからな…

お父さん

たまに彼氏を連れてきてくれたこともあった…

お父さん

だから、そんな〇〇さんと誰かを間違うことなんて、ありえないんだよ

………

お父さん

……ハハッ(笑)

お父さん

すまんな、こんな暗い話して(笑)

お父さん

さ、気を取り直して飲み直しといこうか!

……ねぇ、お父さん

お父さん

…なんだ?

その、〇〇さん…

電話でなんて言ってたの?

お父さん

お父さん

そんなの聞いてどうするんだ?(笑)

お父さん

…よく聞け、世の中には知らなくていいことってものが───

知りたいよ!

私…目の当たりにしたんだよ?!

こんな……普通じゃ起きるわけのない、怪奇現象に…!!

とても信じられる話じゃないけど…

その〇〇さんが……なんだか…この店にすごく強い思い入れがあるんじゃないかと思って…

当然、この店のマスターのお父さんにだって…っ!!

だから私、お父さんが心配なの!!

お父さん

……そうか

父は少し疲れた顔を見せながら、私に話してくれました。

〇〇さんとの会話の内容を。

お父さん

…はいもしもし、カラオケ〇〇ですが

〇〇さん

………

お父さん

……もしもし!!

〇〇さん

……マスターですか?

〇〇さん

私です、〇〇です

〇〇さん

こないだは彼もご一緒させてもらってありがとうございました…

〇〇さん

あの……今日ってお店の席空いてます?

〇〇さん

実はまた彼と昨日ちょっとやり合っちゃいまして…

〇〇さん

マスターに聞いてもらいたい話もあるんです…

お父さん

……あのね、〇〇さん

〇〇さん

だって彼ったら、話し合いにも応じてくれないんですよぉ…

お父さん

私にそんなこと言われてもね、どうすることもできないんですよ…

お父さん

…前にも言ったでしょう?

〇〇さん

ねぇマスター……私ってやっぱり、彼に愛されてないんですかねぇ…?

〇〇さん

どうして…だと思いますぅ…?

〇〇さん

私は真剣に彼との将来を考えてるのに…

お父さん

〇〇さん、あなたはね…

お父さん

……もう死んでるんですよ

〇〇さん

………え?

お父さん

あなたは1年ほど前に、ここから家に帰る途中で…交通事故で亡くなってるんです

お父さん

だからね、こうして何度も予約の電話をいただいても、私にはどうすることもできないんです

〇〇さん

…………

〇〇さん

……ええエェェェ絵エェェェ江えぇェ…?

〇〇さん

うそぉぉォォおぉおォォぉ…

〇〇さん

マスター…何言ってるんですぅ?

〇〇さん

なんでそんなこと言うんですぅゥゥゥうぅ……?

お父さん

お願いですから…

お父さん

…ちゃんと行くべき所に行きなさい

〇〇さん

………わたし?

〇〇さん

いやあぁぁァ亜あ亞ァァ……

〇〇さん

うそぉぉぉォ尾ぉ……

〇〇さん

がががァ亜ああアァァあ亞ぁ……っ

ツーッ、ツーッ、ツーッ

その夜は、恐怖のあまり一睡もできませんでした。

昔、消防署に勤めていた頃からなにかと不思議な体験話を聞かせてくれたお父さん。

当時幼かった私は興味津々で聞いていましたが、まさか目の前でこんなことが起こるとは思いもしませんでした…。

〇〇さんのご冥福をお祈りすると同時に…

……父が心配でなりません。

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