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第1話 - あ

2023年09月20日

#恋愛

結城　真矢

タケミチ

なんか金がねぇぞ、ヒナタ！

タケミチ

お前、今月の生活費をどこに隠した？

タケミチ

これじゃ馬の運動会に行けないじゃんかよ。

ヒナタ

タケミチ、またお馬さんやってんの？

ヒナタ

お金はウチにはないわよ。

ヒナタ

あなたがすぐ使っちゃうから、家には置いておかないことにしたわ。

タケミチ

なんだよ、金を置いとけって言っといたのに。

タケミチ

お前が銀行のカードを取り上げたから、

タケミチ

何にも買えなくなっちまったしよぉ。

ヒナタ

あなたにカードを渡したら全部使っちゃうんだもん。

ヒナタ

クレジットカードも限度額を超えて、止められそうになったし。

ヒナタ

危なっかしくて、あなたにカード類は渡せないわよ。

タケミチ

なんでだよ、今度から気を付けるっていったよね、俺。

タケミチ

信用してくれないわけ？

ヒナタ

あのねぇ、この会話

ヒナタ

今月に入ってからもう、3回目よ。

ヒナタ

毎月毎月、こんなことやってられないわよ。

タケミチ

だからってこづかい無しとカード無しは酷いだろ。

タケミチ

昼食も飲み物も買えねーよ！

ヒナタ

お昼ご飯なら私がお弁当を作ってあげてるでしょ！

ヒナタ

飲み物だって、1Lの水筒を持たせてるんだから、買わなくても大丈夫でしょ？

タケミチ

俺はジュースが飲みたいんだよ！

タケミチ

息抜きに〇バコだって吸いたいし…。

ヒナタ

タ〇コも今は高いでしょ。

ヒナタ

体にも良くないから控えて欲しいって、

ヒナタ

結婚する前から言ってたよね、私。

ヒナタ

どうしてやめてくれないの？

タケミチ

だから言ってるじゃん、俺の息抜きだって。

タケミチ

職場での一服が大事なんだよ。

タケミチ

おまけに、家でも吸わせてくれないし！

ヒナタ

そりゃあ、私が妊娠してるからね。

ヒナタ

受動喫〇って聞いたことあるでしょ？

ヒナタ

副流〇のほうが人体に良くないって話。

タケミチ

ああ、そうだけど。

ヒナタ

お腹に赤ちゃんがいるんだから、〇バコは絶対に吸わないで欲しいわ。

ヒナタ

ぜったいに良くないもの。

タケミチ

なんだよ、もう妊娠8か月だろう？

タケミチ

安定期に入ってるんだから、平気だろうよ。

ヒナタ

全然平気じゃないわよ！

ヒナタ

赤ちゃんにとっては、良くないものなのよ。

タケミチ

大げさだなぁ。

タケミチ

俺なんて、子供の頃から親父がそばで吸ってたよ。

ヒナタ

あのね、言っておくけど…。

ヒナタ

赤ちゃんが産まれても、家で吸ったらダメだからね！

タケミチ

え、なんで？

ヒナタ

何度も言ってるでしょ、副流〇が良くないって。

ヒナタ

少しは父親の自覚を持って欲しいの。

タケミチ

なんだよ、父親の自覚って。

タケミチ

外で働いて、稼いでこれば十分だろう？

タケミチ

家事と育児は母親の仕事なんだから。

タケミチ

疲れて帰ってくる旦那様を癒すのが、妻の務めじゃねーのー？

ヒナタ

あなたはそういう家庭で育ったのよね。

ヒナタ

でもお義母さまは、そういう環境に嫌気がさして、

ヒナタ

私たちが結婚する直前に熟年離婚したわよね。

ヒナタ

女ばかりがガマンするのが当たり前って思わないで欲しいわ。

タケミチ

なんだよ、母さんのことまで持ち出してさ…。

タケミチ

分かったよ、家で吸うのは諦める。

タケミチ

でもせめて、今週の馬の運動会だけは行かせてくれよ。

タケミチ

な？

ヒナタ

もう…しょうがないな。

ヒナタ

今週で最後だからね！

ヒナタ

赤ちゃんが産まれたら、あなたにも色々やってもらうから。

タケミチ

わかったわかったwwサンキューな！

～2週間後～

タケミチ

なあ、ヒナタ。明日から産休に入るんだよな？

ヒナタ

そうだけど。

ヒナタ

なんで今さら確認するの？妊娠が分かった時から決まってたのに。

タケミチ

産休っていつまでだっけ。

ヒナタ

産休は、産後8週目までは取れるよ。

タケミチ

そっか！じゃあ8週間経ったらお前も働けるんだな？

ヒナタ

え？

タケミチ

つまり2か月くらい休んだら、また働けるんだろ？

ヒナタ

ちょ待ってよww

ヒナタ

生後2か月の赤ちゃんだよ？

ヒナタ

このあたりじゃ預かってくれる保育園はほとんど無いわよ！

ヒナタ

少なくとも、生後3か月は経ってからだよ。

タケミチ

じゃあ、3カ月経ったら働くんだよなぁ？

ヒナタ

え？

ヒナタ

私が働くの…？

タケミチ

うそだろ、何言ってんの？

タケミチ

お前が働かなきゃ、金が無くなっちまうじゃん。

ヒナタ

だから

ヒナタ

育児休業も取得するって言ったよね？

タケミチ

そんなこといったっけ？

ヒナタ

言ったよ！もう何回も言った。

ヒナタ

私の話、全然聞いてないのね。

タケミチ

マジかよ。いつまで家にいるの？

タケミチ

お前が働かないと、マジで生活出来ないよ。

ヒナタ

そんなコト言ったって。

ヒナタ

あなたの給料でも、一応は生活出来るわよ。

ヒナタ

お馬さんとパ〇ンコをやめればね！

タケミチ

だから、それが俺の生きがいなの。

タケミチ

その二つが出来なくなったら、どこで息抜きすればいいんだよ。

タケミチ

金がないと楽しみが減るだろうか。

ヒナタ

遊べないのは私も同じだよ。

ヒナタ

赤ちゃんが産まれたらきっと、

ヒナタ

育児に追われて、自分の時間なんて無くなるって姉も言ってたわ

タケミチ

お前の姉さんは専業主婦だろう？

タケミチ

そんな怠け者の言うことなんて信じるなよ

ヒナタ

怠け者って…私の姉のコトをそんな風に言わないでよ。

ヒナタ

私が言いたいのは、子供が産まれたらあなたにも育児に参加して欲しいって事よ

タケミチ

俺に育児を手伝ってほしいってこと？

ヒナタ

手伝う、じゃなくて一緒に子育てしようよってこと！

ヒナタ

だってタケミチの子だもん。

タケミチ

俺に子育てに参加して欲しいなら、条件がある。

ヒナタ

条件？

タケミチ

お前の言う通りにしたら、俺ばっかり負担が増えるじゃないか？

ヒナタ

なんでそんな発想になるの…。

タケミチ

だってそうだろ？俺は仕事もして、赤ん坊の世話をしてさぁ。

タケミチ

それに比べてヒナタ、お前は何なんだ？

タケミチ

赤ん坊の世話の他は、家事をちょこっとやるだけ。

タケミチ

なんなら、昼寝まで出来るんだぜ？

タケミチ

そんなユルい生活、許されると思うのか？

ヒナタ

ユルいって…赤ちゃんのお世話は、そんな簡単なものじゃないよ。

ヒナタ

それに、あんまり早くに復帰しても、赤ちゃんはよく熱を出すから

ヒナタ

会社を何回も休んでる先輩だっているわ。

タケミチ

でも、それでも働いてる女はいるだろ？

タケミチ

よその女に出来て、お前に出来ないはずがない！

タケミチ

だから、子供を産んだらすぐ働けよ！

タケミチ

それで、俺とお前が平等になるってもんだ。

ヒナタ

そんな…平等とか、そんなんある？

ヒナタ

私たち、夫婦だよ。

タケミチ

俺に協力してほしければ、お前も努力しろ。

タケミチ

それに、俺の自由を制限するな。

ヒナタ

え～。

ヒナタ

もういいよ。話が通じないんだもの。

ヒナタ

とにかく、生活費を使い込むのだけはやめてよね！

タケミチ

うるさい！俺だってもういいわ。

タケミチ

あーイライラする！

タケミチ

今日は遅くなるから。夕飯もいらねー。

ヒナタ

何それ！私あんたのママじゃないから！

ヒナタ

私をバカにするのもいい加減にして…！

～3日後～

ヒナタ

お義母さま、お久しぶりです。お元気ですか？

ミチコ

あら、ヒナタさん！体の調子はどう？

ヒナタ

ええ、赤ちゃんは順調です。

ヒナタ

もうすぐ臨月なので、産休に入ったばかりです。

ミチコ

そう、もうそんな時期なのね

ヒナタ

はい。性別も知りたいですか？

ミチコ

ええ、知りたいわね。当ててみようか？

ヒナタ

どっちだと思いますか？

ミチコ

女の子？

ミチコ

あなたは顔つきが優しいから、女の子のお母さんのイメージだから。

ヒナタ

すごい、アタリです。

ヒナタ

妊婦検診で、多分女の子って言われました。

ミチコ

そう、出産は大変だけど、体を大事にね。

ミチコ

タケミチはちゃんとやってる？

ミチコ

またくだらないコトにお金使ってない？

ヒナタ

はあ、それが悲しいことにですね…。

ヒナタ

彼、お馬さんとパ〇ンコはやめられないみたいで。

ヒナタ

すぐ生活費を使いこむ上に、お金を全然出してくれないんです。

ミチコ

ええ？

ミチコ

じゃあ、ヒナタさんが全部生活費を負担しているの？

ヒナタ

はい。でもこの体でしょう？

ヒナタ

しばらく働けないから、生活が不安でしかたないんです。

ミチコ

そりゃ、そうよね。

ミチコ

貯金だって、そんなに沢山あるわけじゃないでしょう？

ミチコ

あの子、いくら言っても浪費癖が治らないんだもの。

ミチコ

私の育て方が間違っていたのかしら…。

ヒナタ

お義母さんのせいじゃないですよ。

ヒナタ

だって、タケミチさんはもう29歳ですよ。

ヒナタ

ガマンが出来ないのは自分の責任ですから。

ミチコ

どうにか改心させないとダメね。

ミチコ

今度、私からもキツく言っておくわ。

ヒナタ

お義母さん、ありがとうございます。

ヒナタ

そう言っていただけただけでもうれしいです。

ミチコ

このくらいしか、私は役に立てないから。

ミチコ

なにしろ、私自身も夫の〇ラハラが原因で離婚したものだから。

ヒナタ

お義母さまも大変でしたね。

ヒナタ

今は静かに暮らしてらっしゃるんですね。

ミチコ

ええ、今はとても快適よ。

ミチコ

夫に気を使わなくてすむ生活が、こんなに楽だとは思わなかったわ。

ヒナタ

お義父さまは、けっこう生活が荒れて大変そうですけどね。

ヒナタ

タケミチさんも、お義父さまと大ゲンカしたから、

ヒナタ

もう1年以上、お義父さまにはお会いしてませんが…。

ミチコ

あら、なんでケンカしちゃったの？

ヒナタ

なんか、お義父さまにお金を無心したみたいです。

ヒナタ

それでお義父様さまがすごく怒っちゃって、もう実家に帰ってくるなと

ヒナタ

激怒されたそうです。

ヒナタ

タケミチさんもあの性格ですから、仲直りは難しそうです。

ミチコ

まあ、それはそれは。

ミチコ

あの人に甘えようとしても、ムダなのに…。

ミチコ

お金なんてくれるわけがないわ、あの人はすごくケチだから。

ヒナタ

すみません、それに関してはわたしも少し責任を感じています。

ミチコ

どうして？

ヒナタ

私、生活費を確保しておきたかったので、

ヒナタ

タケミチさんには最低限のおこづかいしか上げてなかったんです。

ヒナタ

それで、お馬さんやパ〇ンコに使うお金が無くなったから

ヒナタ

お義父さまに頼ったんだと思います…。

ミチコ

あらら。でもそれこそ、ヒナタさんが責任を感じることじゃないわよ。

ミチコ

いい大人がパパを頼るなんて、情けないわ。

ヒナタ

そうですね。でも出産したら、私も３カ月ほどで復帰する事になりそうです。

ヒナタ

1年の育休を取るって言ったら、タケミチさんが

ヒナタ

そんなの休み過ぎだ、もっと早くから働けって怒るので…。

ミチコ

え、そんなに無理しない方がいいわ！

ミチコ

大変なコトがあったら、私がフォローするし

ミチコ

タケミチにも、私から本当にいっておくから。

ミチコ

ヒナタさんは、出産まで体を大事にしなさいね。

ヒナタ

ありがとうございます。

ミチコ

くれぐれもお大事にね。それじゃ…

ヒナタ

はい、お義母さまもお体に気をつけてくださいね。

～出産直前のヒナタとタケミチのLINE～

ヒナタ

タケミチ、今どこ？

ヒナタ

もうすぐ産まれそう！すごく痛いのよ。

ヒナタ

今すぐ病院に来て！

ヒナタ

ちょっと、スマホ見てないの？

ヒナタ

信じられない、本当にもう産まれるのに…。

ヒナタ

もう分娩室に行くから、連絡出来なくなるわよ！タケミチ！

ヒナタ

産まれる時は立ち会うって言ってたのはどこの誰よ…。

～出産後～

タケミチ

おーい、ヒナタ。

タケミチ

ごめんごめん、パ〇ンコやってたらフィーバーしちゃってさ。

タケミチ

コンボが続いて、めっちゃ稼げたよ！

タケミチ

夢中になってたらスマホが鳴ってるのに気づかなかったんだ～。

タケミチ

もしかして、もう産まれちゃった？

タケミチ

今から病院に行くよ。

タケミチ

赤ちゃんは男の子？女の子？

タケミチ

会うのが楽しみだなぁ。

ミチコ

あんた、いままでパ〇ンコやってたの？

タケミチ

え？母さん！

タケミチ

なんで母さんが俺たちのLINEにいるの？

ミチコ

何かあった時の為にって、ヒナタさんが私をグループにいれてくれたの！

ミチコ

こうして、あんたと連絡をとりやすくするためにね！

タケミチ

え、そうなの？

タケミチ

で、ヒナタは無事なの？

ミチコ

ちゃんと心配はしてるのね。

ミチコ

でも出産の時にパ〇ンコ屋に行ってるってどういうことよ！

ミチコ

ヒナタさんがどれだけ苦しんで赤ちゃんを出産したか、分かってんの？

タケミチ

いや、俺ヒナタが苦しんでるところなんて見たくないから。

ミチコ

この〇カ息子！

タケミチ

ひっ！母さん、なんでそんなに怒ってるんだよ。

ミチコ

ヒナタさん、あんたが電話に出ないから、私を呼んでくれたのよ。

ミチコ

いま、ヒナタさんに代わるわ

ヒナタ

タケミチ？やっとLINEに気づいたようね。

ヒナタ

なにかあった時の為に、病院にはお義母さまの事も伝えておいたから

ヒナタ

おかげさまで無事に赤ちゃんが産まれたわ。

ヒナタ

女の子よ。

タケミチ

良かったぁ…。

ヒナタ

全然良くない！

タケミチ

へ？

ヒナタ

約束を破って出産時の立会いからも逃げてさ、

ヒナタ

おまけに今月分の生活費も使い切っちゃったでしょ？

ヒナタ

もう、あなたのことは全く信用できないわ！

タケミチ

え、どうするの？

ヒナタ

出産後は家には帰りません。

ヒナタ

しばらくお義母さまと暮らします！

タケミチ

え？じゃあ俺もそっちにいってもいい？

ミチコ

ダメに決まってるでしょ！

ミチコ

あんたの給料も、ぜんぶヒナタさんが管理することにしたわ。

タケミチ

え、そんな！

ヒナタ

あなたに任せておいたら、お金をぜんぶスっちゃうからね。

ヒナタ

私とお義母さまが、きっちり管理しますから、ご安心を。

タケミチ

うそだろ、そしたら俺はどうやって生活すれば…。

ヒナタ

お金が必要な時だけ、お義母さまの家にくれば？

ヒナタ

そのかわり、何のために必要なお金か、ちゃんと明細をもらうわよ。

タケミチ

そ、そんな…。

ヒナタ

あなた、今まで生活費も全然くれなかったんだから、

ヒナタ

そのくらい制限してもバチは当たらないわね。

ミチコ

タケミチ、そういうことだから。

ミチコ

赤ちゃんに会いたかったら、来ても良いけどね。

ミチコ

当面は私がヒナタさんのサポートをします。

ヒナタ

しばらく反省しててね、タケミチ君！

タケミチ

ええ～、母さん、ヒナタ～。

タケミチ

俺を一人にしないでくれよ…。

～後日談～

ヒナタ

それから3カ月ほど、私は義母の家でお世話になりました。

ヒナタ

産まれたばかりの赤ちゃんはとってもかわいくて、

ヒナタ

お世話は大変でしたけど、優しい義母が全面的に助けて下さったので

ヒナタ

とても心強かったです。

ヒナタ

タケミチも結構反省したようで、お馬さんもパ〇ンコも

ヒナタ

やっとやめてくれたようです。

ヒナタ

お金も使いこまなくなったので、私もやっと家に戻る決心が出来ました。

ヒナタ

義母も、何かあったら私を頼ってね、と

ヒナタ

暖かく送り出してくれました。本当に感謝でいっぱいです。

ヒナタ

これからは、頼りないタケミチをビシっと教育しながら

ヒナタ

頑張って2人で赤ちゃんを育てていこうと思います！

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結城　真矢

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