守若は何時ものように、佐古で遊ぼうと組事務所へと足を踏み入れる。
目的の人物は直ぐに見つかるも、何やら、揉めている様子。
守若冬史郎
人だかりの中に、久我の姿を見つけ、守若は状況説明を求める。
佐古大和1
佐古大和2
久我よりも先に、守若に佐古が話しかけてきた。しかも、二人。
守若冬史郎
目の前に佐古、白鳥のレリーフが入ったフレームに嵌め込まれている鏡の中にも佐古。鏡だから、佐古の姿が映っていても何ら不思議ではない。しかし、鏡の中の佐古は、鏡の外にいる佐古と違ったポーズをとっている。それだけでも驚きだが、その上、喋べるのだ。
久我虎鉄
そう言うと久我は、粗方の経緯をかい詰まんで話し出す。なんでも、京極組の表向きのしのぎの一つである、質屋が起因らしい。
京極組が経営する質屋に、この鏡を担保に客が金を借りにきたのだ。本来、鏡やブランド物ではないアクセサリーやカバンは、質預かりの対象外だ。 しかし、鑑定を担当する浪岡から、鏡のフレームには、純金が使われており、細部の彫刻の繊細さから、高値で売買が期待出来るとお墨付きが出たのだ。
そして、鏡の査定額の8割である60万を客に貸した。高額の質を預かるとなると、警戒すべきは盗難。偶々、この鏡を預かる2日前に、質屋を狙った強盗に入られたとこだった。ただ、その日は運よく、海瀬が近くにいたので、強盗は、その場でいそぎんちゃくにされた。
しかし、盗まれてしまったら、貸した金額を回収できないばかりか、反対に賠償責任を負わざるおえなくなる。
その客が返金にくるまでの間、常に人がいる組事務所で保管する事となり、数日前から、組事務所の片隅に鏡が置かれていたのだった。
久我虎鉄
久我虎鉄
守若冬史郎
高砂明夫
野島翔
佐古大和2
鏡の中の佐古は、必死に助けを乞う。
佐古大和1
久我虎鉄
確かに、佐古の言い分も最もだ。科学が発達した現代に、こんな非科学的な話は荒唐無稽として、誰もまともに取り扱わなかっただろう。ただ、それは悪までも目の前で、起きてなければの話だ。
現に今、非科学的な事が起こっている。しかも、全員の目の前で。一人だけなら、ただの見間違えや勘違いで済む話だが、複数人の目撃者がいれば、話は別になってくる。
鏡の中の佐古がいう通り、佐古が鏡の精にとって変わられた可能性を否定出来なくなってしまうのだ。
高砂明夫
野島翔
佐古大和2
佐古大和1
野島翔
佐古大和1
佐古大和2
野島翔
高砂明夫
久我虎鉄
佐古大和2
佐古大和1
佐古大和2
守若冬史郎
久我虎鉄
野島翔
高砂明夫
一同お手上げムード一色。
守若冬史郎
そんな折、閃いたとばかりに守若が、佐古に質問する。
佐古大和1
佐古以外は、守若の質問の意図に気付く。
組事務所の近くには公園はない。鏡の精は、鏡から鏡に移れても外に出られる訳ではない。なら、公園での出来事を鏡の精は知る事は出来ない筈だ。
一同は固唾をのみ、佐古の答えを待つ。
佐古大和2
佐古大和1
鏡の中の佐古は、いち早く答えた。
久我虎鉄
久我は佐古を拘束する。
佐古大和1
佐古大和2
久我は暴れる佐古を構わず、鏡に押し付けた。
鏡に佐古の体が触れた瞬間、此方側にいた佐古は鏡に吸い込まれ、代わりに、鏡に囚われていた佐古が、外に追い出される。
佐古大和2
佐古は見事、顔面から事務所の床に倒れこむ。
佐古大和1
野島翔
佐古大和1
佐古大和2
久我虎鉄
佐古大和2
鏡の後ろを見ると確かに、破れたお札が貼られたままになっていた。
久我虎鉄
効果はあるか分からないが、セロハンテープで破れた部分を繋ぎあわせる。
すると、今まで佐古の姿しか映してなかった鏡がすべての人を映し出す。そして、声も聞こえなくなった。
高砂明夫
野島翔
久我虎鉄
佐古大和2
守若冬史郎
佐古大和2
こうして、京極組を騒がせた鏡の精事件は無事解決を迎えた。
守若冬史郎
佐古大和2
守若冬史郎
佐古大和2
部屋を飛び出す直前に、佐古はさっきの鏡にちらりと視線を向け
佐古大和2
ほくそ笑んだ。
おわり
あとがき 目に見えないからない=存在しないにはならない。それを言ってしまったら、精神科は存在しない。ないと言うなら、その根拠を論を用いて証明出来なければ、存在しているとも、存在してないとも否定できない。これぞ、まさにシュレティンガーの猫。ないことをないと証明するのは、別次元の難しさが存在するという話。 バレエの定番の白鳥の湖。実は難度高の演目で、回転などの技が多く、特に第3幕の黒鳥は、助走なしで32回転を回らないといけない(白鳥と黒鳥は見間違うほど似ているという設定により、白鳥役が一人二役で、黒鳥としても踊る)。ただ特定の原作はなく、色んな話のかき集めなので、最後を悲恋か、ハッピーエンドで締めくくるかは、そのバレエ団によって別れる演目。 因みに、話の中に本物の佐古と偽物の佐古を唯一見分けられるポイントがある。ヒントは、守若の質問に対する答え。 鏡の精は、鏡から移る事が可能。つまり、人が映るものなら、何でも移動できる。だから、瞳も対象となる。数日前からそこにいたのに、行動に移したのが数日後である事を踏まえた上で、考えたら、答えは簡単。
コメント
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言いたくないけど最後が、何となく胸くそ悪い話な気がする