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あの後僕は、見つかりにくそうな入り組んだ森に逃げた
お陰で東京さんから逃げられたが、迷子状態であることは確かだった
ここが何処かさっぱり分からなくて、帰れないかも知れないと言う不安がよぎった
香川
ふと、ポケットに紙が入っていることに気がついた
なんだろう、こんな紙入れてたっけ
買い物したときのレシートかメモかなと思った
香川
ポケットにはレシートでもメモでもなく、愛知くんからの手紙が入っていた
恐る恐る開くと、愛知くんの綺麗で整った字が、横書きで真っ直ぐ並んでいた
香川へ 俺が死んで一人になっちゃったら、福岡のところに逃げてね。 福岡は7大都市で頭もいいから俺よりもずっと頼りになるはず。 遠くて行けないと思ったら、広島のところでもいいけど、出来れば7大都市の誰かがいいかな、東京のこともよく知ってるからさ 死なないでね、香川、強く生きて 愛知より
急いで書いたのか、文章にはいつもの愛知くんみたいな語彙力はあまりなかった
それだけ焦って書いたのだろう
僕のところに来る前に書いたのかな…
香川
香川
朝だと言うのに、木々に囲まれた暗い森の中で、一人泣いた
僕が恐怖で動けなくならなければ、愛知くんと逃げられた
だから、悪いのは僕だ、愛知くんは悪くない
香川
泣き止みたいのに、滝のように流れる涙は、止まってはくれなかった
体から水分がなくなりそうな程に泣いた
ザクッ………ザクッ
香川
そうすると、後ろから土と葉っぱを踏み締め、誰かが歩く音が聞こえた
まさか、東京さん…?
ザクッ…ザクッ……
足音が近づいて来ている気がする
どうしよう、もう精神的にも体力的にも限界なのに…
ザクッ……ピタッ
僕の斜め後ろで足音が止まる
視界の隅に見えたのは、身長が170以上はありそうな、真っ黒な服を着た誰かだった
あれ、でも東京さんは身長は156ぐらいって言ってた…
じゃあ、誰なの…
??
上から聞こえた澄んだ声は、東京さんのものではなかった
恐る恐る涙でぐしゃぐしゃのままの顔を上げると、そこにいたのは
三重
近畿地方の忍者のイメージがあり、実際忍者の服装をしている、三重くんだった
僕は、一人だった孤独感と恐怖に解放された気持ちになり、無意識に三重くんに抱き付いた
三重
香川
三重
三重くんは、何かを察したように悲しい表情になり、しゃがんで僕を抱き締め返して、頭を撫でてくれた
三重くんの体は、とても暖かくて安心した
三重くんの温もりが、僕の心を和らげてくれた
今は、三重くんだけが頼りだった
三重
香川
三重くんが急に僕の名前を呼ぶ
何故か三重くんは、真剣な表情に変わっていた
三重
香川
日本国内で起こっていること…?何が起こってるの…?
でも、それが東京さんが僕を殺そうとしたことに関係しているのなら、聞かない以外の選択肢はない
僕は少し間を挟んで頷いた
東京さんに何があったのか、何故僕でなく愛知くんも狙ったのか
何もかも分からなかった
だからこそ、知りたかった
三重くんは僕に手を貸してくれて、二人で立ち上がり、話し始めた
コメント
3件
初コメ失礼します!! こう言う系の話めっちゃ好きなんで最高です!! 三重、香川を守ってくれ… 続きがめちゃくちゃ楽しみです!! ってか毎回終わらせ方が上手い!