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ザクッザクッザク

辺りに土を掘る音が響き渡る。

飯澤 華

はあ、はあ、はあ。

午後11時。雨が降っている中、私は泣きながら穴を掘っていた。

今日死んじゃったペットの犬。チャーリーを埋めるためだ。

ウエイター

何をされているのですか?

私は声をかけてきた人物を見てギョッとした。頭に羊の被り物をしている。

飯澤 華

あ、あの。この子、埋めたくて。

飯澤 華

大家さんに団地の庭はダメって言われて、。

ウエイター

ここに埋められても困ります。

飯澤 華

そう、ですよね。
すみません。

ウエイター

いいえ、大丈夫です。

ウエイター

宜しければ、中で休んでいって下さい。その子はうちで供養しますよ。

飯澤 華

ほ、本当ですか?

ウエイター

ええ。

ウエイターの優しい声に、私は落ち着いた。

ウエイター

では、中へ案内します。

飯澤 華

ありがとう、ございます。

私はウエイターのあとへ続いた。

飯澤 華

はぁ。

今日は散々な一日だった。

付き合っていた阿部先輩には「お前と付き合っててもつまらない。」と振られて。

家に帰ったらチャーリーが死んでて、それからずっと雨の中埋めれる場所を探してた。

飯澤 華

ついてない、。

その時、先程のウエイターが来た。

コトっ。

ウエイター

特製スープで御座います。どうぞ。ゆっくりお召し上がり下さい。

飯澤 華

え、ちょ、頼んでません、!

ウエイター

サービスで御座います。雨に濡れてらっしゃったので、

飯澤 華

え、あ、有難うございます、!

ウエイター

いえ。

学校が終わってから何も食べてなかったから私はみっともなくスープにがっついた。

口に入れた瞬間、私は思わず溜め息が出た。

飯澤 華

ん、んんんん〜、。。

口の中にジュワッと広がる玉ねぎの甘み。胡椒の香ばしい風味が口の中に拡がって、まろやか且つクリーミーな口当たりなスープ。

「ほっぺたが落ちそう。」と初めて心の底から思った瞬間だった。

飯澤 華

ものすっごく美味しいです、!

ウエイター

それは良かったです。

ウエイターが謙遜気味に微笑む。

飯澤 華

これはなんのスープですか?

次の言葉を聞いた瞬間、私の笑みは一瞬で消えた。

ウエイター

チャーリーのオニオンスープです。

飯澤 華

……はい?

ウエイター

貴方のペットのスープです。

飯澤 華

え、な、何言って。

飯澤 華

冗談に決まってる、!

ウエイター

誤飲したのでしょう胃の中にこれが入ってました。

カチャッ。

そう言ってウエイターは机の上に私のイヤリングを置いた。

飯澤 華

え、う、おえ゛…ッ

私は思わず嘔吐(えず)いた。

飯澤 華

な、何考えてるの?!?!

飯澤 華

頭おかしいわよ!!!!!

ウエイター

お嬢さん。

ウエイター

貴女はチャーリーを愛していました。

ウエイター

きっとそれは、チャーリーも同じです。

飯澤 華

……ッ

ウエイター

食べる。体の一部にする。

ウエイター

それは究極の愛であり、供養になると思いませんか?

飯澤 華

…………。

飯澤 華

(確かにそう言われてみるとそうかもしれない。それに、)

こんなに美味しいスープ生まれて初めて食べた。

飯澤 華

残したら、チャーリーが可哀想だよね、。

私はその後黙々とスープを食べ続けた。

ウエイター

今日は有難うございました。

飯澤 華

へ?

飯澤 華

何がですか?

ウエイター

実は最近余りいい食材が手に入らず困っていたのです。

ウエイター

でも今日、貴女が提供してくれたでしょう。

飯澤 華

あ、チャーリーの事、。

ウエイター

ええ。ここのお客様は味にうるさい方ばかりですので。

ウエイター

とても助かりました。

飯澤 華

は、はあ。

物凄く穏やかな声でそう言われると、狂気じみた台詞でも普通に感じてしまうのが恐ろしい。

ウエイター

……宜しければ、これからも食材を提供して下されば、貴女には特別に料理を提供致しましょうか。

ウエイター

貴女は特別な方です。

飯澤 華

いいんですか?!

ウエイター

はい。なのでこれからも食材提供宜しくお願い致します。

飯澤 華

ご馳走様でした。

3日後 学校終わり

地域の人

ザワザワザワ

地域の人

あれ、なにか引かれてない?

地域の人

ポメラニアンだわ、、。可哀想に。

飯澤 華

………。

飯澤 華

こんな風に死んじゃうより、こっちの方がいいよね。

私は瀕死のポメラニアンを抱き上げる。

ウエイター

食材のご提供有難うございます。

ウエイター

こちら『ポメラニアンのリゾット』で御座います。

飯澤 華

んん。。美味しい!

肉のジューシーさにバジルの爽やかさが物凄くあっている。

チーズのクリーミーさは心地よく、ゆっくりと小腹に溜まっていく。

飯澤 華

あれ、そこに居るのは常緑くん?

常緑 司

ああ、もしかして飯澤さん?!

飯澤 華

(こんな所でクラスメートに会うなんて、。)

常緑 司

よく来るの?

飯澤 華

いや、私は最近来たばっかりで、常緑くんは?

常緑 司

僕は常連だよ。

飯澤 華

そ、そうなんだ。
ところで、常緑の食べてるの何?

飯澤 華

すごく美味しそう!

常緑 司

ああ。

常緑 司

ウエイターこれは?

ウエイター

こちら、人肉のステーキで御座います。

飯澤 華

……え、?

ウエイター

人の肉です。

常緑 司

あ、安心して、死刑囚の肉だし、ちゃんとしたルートで仕入れてあるから。

飯澤 華

(人の肉を食べるなんて気持ち悪…。)

飯澤 華

(ああ、でも)

凄く美味しそう

ウエイター

華さんも注文されますか?

ウエイターがスっと私にメニューを手渡す。

飯澤 華

(うげっ!高っ!!!!!!)

飯澤 華

(常緑くんの家ってお金持ちなんだな…。)

常緑 司

ではウエイターお会計。
飯澤さんまた学校でね。

飯澤 華

う、うん。

歩いていく常緑くんの背中を見届けた。

飯澤 華

ウエイター。

ウエイター

はい。

飯澤 華

私も食材を提供すれば、あのステーキ食べれる?

ウエイター

ええ。勿論。

次の日の夜

阿部先輩

飯澤ホントにいいの?こんなに高そうな店でおごってもらっちゃって!

飯澤 華

全然いいですよ。

阿部先輩

あんな別れ方したのにわりーなぁ!

ヘラヘラ笑う阿部先輩を無視して、私はウエイターに話しかける。

飯澤 華

ウエイター。

ウエイター

はい。

阿部先輩

ひつじ?

飯澤 華

今日は「先輩」持ってきました。

ウエイター

……本当に良いのですね?

飯澤 華

……はい。

ウエイター

ふっ、やっぱり貴女は特別です。

阿部先輩

おい、なんの話ししてんだ?

ウエイター

では先輩はこちらへ。

阿部先輩

お、おい、店内はこっちじゃねえのか?

コトっ。

ウエイター

どうぞ、こちら「先輩」のステーキで御座います。

飯澤 華

ん、んんんんん。。

噛みごたえのある肉で噛めば噛むほど味が出てものすごく美味しい。

常緑 司

こんなに上等な肉は久しぶりだよ。

常緑 司

これも全部、飯澤さんのおかげだね。

飯澤 華

えへへ、そんな事ないよ

常緑 司

いやいや、僕も含め、ここにいる客、みんな感謝しているよ。

飯澤 華

……ッ。
なんか、今ちょっと苦かった。

私は反射的に顔を顰めた。

常緑 司

ああ、それはまだ先輩が若いから。

飯澤 華

若い、?

常緑 司

うん。熟し切れてない肉は苦いんだ。

飯澤 華

てことは、

もっと美味しいお肉があるの?

次の日

大家さん

華ちゃん、華ちゃんの学校で行方不明の子が居るって、

大家さん

しかも、華ちゃんが付き合ってた子だって、。大変だねぇ、。

飯澤 華

大家さん、ちょっと

着いてきてくれますか?

ウエイター

どうぞ、こちら大家さんのステーキで御座います。

コトっ。

飯澤 華

うう、ううううう。んまぁぁぁ。

飯澤 華

お、お、美味しすぎる。

先輩のお肉とは違って噛みごたえはなく、逆に口の中でとろけるようなお肉。ジューシーで奥歯で噛み締める度に味が滲み出てきて舌が喜ぶ。

空腹には刺激が強すぎるような、付け合せの野菜やパンもあって物凄く贅沢だ。

提供者は貴女ね。
こんな上質なお肉は久しぶりだわ。

飯澤 華

あ、は、はい!

ありがとうね。お礼にこれを受け取って。

その女性は私に現金10万円を手渡した。

飯澤 華

えええ!ちょ、こんなの受け取れません。

いいえ、受け取ってちょうだい。

常緑 司

良かったな飯澤!!

飯澤 華

う、うん!

飯澤 華

それにしてもこのお肉美味しい。

常緑 司

ああ!物凄く美味しいね。

常緑 司

こんなに食の好みが合う女性は初めてだよ!

飯澤 華

ええ、私もよ!常緑くん!

ウエイター

……お2人なら当レストラン最高級の料理をご提供出来るかも知れません。

常緑 司

なんだいそのメニューは!初めて聞くな!

飯澤 華

ウエイターは食べた事あるの?

ウエイター

ええ、1度だけ。

ウエイター

それはもう美味で、この世の全ての高級食材を凝縮したような、そんな味でした。

私は生唾を飲み込んだ。

常緑 司

是非それを注文しよう!

飯澤 華

なんなのそのメニューは気になるわ!

ウエイター

そのメニューとは

『愛する人』です

飯澤 華

は、え、?

常緑 司

は、、?

ウエイター

愛する人、注文しますか?

常緑 司

ウエイター、

飯澤 華

(う、嘘でしょ、?)

常緑 司

彼女を食材呼ばわりするとは失礼だぞ!不愉快だ!

常緑 司

僕は彼女を食べたりしない!

飯澤 華

常緑くん…。

ウエイター

申し訳御座いません。

常緑 司

飯澤さん、こんなに食の好みが合う人は初めてだ、

常緑 司

僕と結婚を前提に付き合って欲しい!

飯澤 華

……ええ、私も貴方が好き!

常緑 司

良かった、。
じゃあ、食事を続けよう。

私達はキスをするとそのまま食事を続けた。

飯澤 華

(ああ、愛してるわ常緑くん。)

飯澤 華

(こんなに早く愛してる人を食べてしまうなんて勿体ない)

飯澤 華

(まだ熟しきれて無いもの、)

飯澤 華

(もっと時間をかけて、熟成させて、)

飯澤 華

(一緒におじいちゃんおばあちゃんになって)

飯澤 華

(最後の最後まで育てあげるわ。私の高級食材を……)

飯澤 華

(常緑くん、貴方は私の)

最後の晩餐。

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