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僕は今日もあなたに会いに行く

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僕は今日もあなたに会いに行く

1 - 僕は今日もあなたに会いに行く

2021年02月22日

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幸也

郁くん、おはよう。

今日はチーズケーキを作っているから。

いつもありがとうございます。

俺は郁(いく)。 今年から受験生だ。幸也(ゆきや)さんは俺が良く通っている喫茶店の店長だ。

幸也

幸也

がんばってね。

幸也さんは優しくて、どんなに遅くなっても必ず返信をくれる。 数時間だって、数日だって。 俺は幸也さんに初めて会った時から、ずっと憧れている。

はい。塾の帰りに絶対に寄りますね。

毎週塾のある日に寄るようになった。 決して繁盛しているようには見えないけれど、それが静かなところを好む俺にとっては心地よかった。

夕陽が傾いて世界がオレンジ色のフィルターをかけたように見える時間。 古風で昔のポラロイド写真を思わせるたたずまいのカフェを目の前にすると、タイムスリップをしたようでドキドキする。 深呼吸をしてゆっくりと扉を開けると、そこに立っている。

幸也

いらっしゃい。郁くん。

お、お邪魔します。

幸也

ふふふ、郁君ったら。
お客様なんだから緊張しなくてもいいのに。

いや、そんなんじゃないですよ。

幸也さんがトントンとカウンターを軽く叩く。 俺のお気に入りの場所を開けておいてくれたみたいだ。

幸也

いつものところだよ。
待ってたよ。

いつも俺のためにすみません。

幸也さんはいつもこの場所を開けてくれる。俺がここに来ると分かると必ずだ。表情はいつも楽しそうに思える。

幸也

郁くんみたいな子が来ること自体珍しいからね。
僕みたいなおじさんは若い子に興味を持ってもらえたら、それだけでうれしいもんだよ。

ははっ。おじさんって。

幸也

本当のことだからね。
さあ、チーズケーキだよ。お口に合うといいな。

幸也さんの料理が口に合わないことなんてありませんでしたよ。
毎日食べたいくらいです。

幸也

たまに食べるから美味しいんだよ。
僕は君のおかあさんよりも上手じゃないよ。

(謙遜してる。)

(でも、うれしいんだろうな。口角が上がってる。)

幸也

そ、そうだ、コーヒーはどうする?
今日はカフェオレにする?

いつもブラックでっていってるじゃないですか!

幸也

はいはい。

幸也さんはいつも俺に「ブラックにするかミルク入りにするか」を聞いてくる。 もちろん毎回ブラックだ。 常連の客から「マスターの腕の良し悪しがわかる」といわれてなんだかそれがマスターの味なんだと思ったら、ほしくなった。

正直、ブラックコーヒーの美味しさなんて全然わからないけれどね。

幸也

郁くん、お待たせ。

いい香りですね。いただきます。

幸也

じゃあ僕は店の周りを見てくるから、ゆっくりしてね。

はーい。

おかあさん

不在着信

不在着信

あ!ゆっくりしすぎた!

幸也

ほんとうだ。そろそろ片付け始めないと。

幸也

郁くん、門限大丈夫?

大丈夫です。後で連絡しますね!
お代置いてきます。

幸也

ああ、ちょっとおつりは?

今度とりに行きます。また!

幸也さんと話すのが心地よくて時間がかなり遅くなっていた。 日が落ちて藍色の空が迫ってくる中、走って帰った。

幸也さん、バタバタしてごめんなさい。

連絡おそくなりました。

幸也

幸也

よかった。

幸也

幸也

おかあさんには何か言われたかい?
怒られてないといいけど。

大丈夫でしたよ。

心配だけされたみたいで。

幸也

そっか

幸也

幸也

私が気付いてあげられなくてごめんね。

いいえ!こちらこそご迷惑おかけしました。

幸也

いや。

幸也

幸也

こんな夜中に襲われたり、しなくて本当によかった。
せっかくのきれいな指とか顔に一生ものの傷が残ったらと思うと、気が気でないよ。

え、そんな綺麗なんて。

指だって結構骨っぽくて気持ち悪いっていわれましたし。

幸也

そんなことない

幸也

郁くんはとっても綺麗に産んでもらったんだから体を大事にしなきゃだめだよ。

マスターのお墨付きってことですね。

正直本当にうれしいのか恥ずかしいのかわからなかった。 俺がきれいだといわれてドキドキした。 幸也さんの人を褒める力を見ると、こういうのってスパダリって言うのかなって少し考えてしまった。 きっとモテたんだろうけど、なんでいまだに独り身なんだろう。 俺は幸也さんから届いたメッセージを未読のまま見つめた。

幸也

お墨付きとはちょっと違うかな。

幸也

それよりも、今度おつりちゃんと返すからね。

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