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ウェンデッタ
少女が、再び目覚めると――
――そこは変わらず、 自分の寝室だった。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ダニエル
笑顔で話しかけてきたのは、 専属執事のダニエル。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ダニエル
ダニエル
全身を360°見せるように、 ダニエルが くるっと回った。
ぶれずにピッタリ止まれる体幹の強さは、 毎朝欠かさず 騎士団の早朝訓練に混ざって 鍛えた賜物だろう。
ウェンデッタ
斬られた傷どころか、 かすり傷ひとつ見当たらない。
ウェンデッタ
ウェンデッタが ベッドから上半身を起こす。
着ているのは 囚人服――ではなく、 愛用のネグリジェ。
血だらけだったはずな 手や腕は、 透き通るように白いまま。
殴られ、蹴られ、燃やされ… 傷だらけで絶命したとは思えない。
ウェンデッタ
呆気にとられるウェンデッタへ、 ダニエルが優しく声をかける。
ダニエル
ダニエル
ウェンデッタ
ダニエル
ダニエル
ダニエル
ダニエル
ウェンデッタ
ここまで言いかけたところで 気が付いた。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
慌ててベッドから飛び出た ウェンデッタは『鏡』をのぞく。
ウェンデッタ
鏡に映っていたのは、 記憶よりも幼い 自分の姿。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ダニエル
ダニエル
ウェンデッタ
急に聞こえた“憎き元凶”の名に 思わず身構えるが――
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
――悪い夢 だった。
そう思えば、 万事が丸く収まる はずなのだが…
ウェンデッタ
少女は、底知れぬ不安を 拭い去れずにいた のだった。
起きて身支度を整えた ウェンデッタが、 真っ先にしたこと――
――それは、 家族の安否の確認 だった。
ダニエルに聞いたとおり、 父も母も、弟のリヴィオも 変わらず無事。
シラヌイ家の屋敷の中は、 平穏そのもの。
使用人の皆は いつも通り明るい顔で、 各々の役割を果たしている。
婚約者アルスでさえ 変わらず優しい。
ウェンデッタ
そう思い始めた 少女だったが――
――希望的観測は、 たった半日にして脆くも 崩れ去ってしまう。
――翌日。
ウェンデッタ
ダニエル
家族水入らずの楽しい朝食を 満喫したウェンデッタが、
ひさびさに羽を伸ばそうと 暖かな窓辺で お気に入りの小説を開いた瞬間…
…ダニエルに聞かされたのは、 “意味の分からない知らせ”だった。
――聖女、 クロエ・ミスミ。
もともとは平民だった 美しき少女。
数か月前神のお告げで『聖女』に選ばれ、 皇国五大貴族《ファイブガーディ》が一家 『ミスミ家』の養女に迎えられた。
“夢”の中のウェンデッタにとっては 婚約者アルスを巡り争う“憎き恋敵”で、 成す術もなく敗北し全てを奪われたのだった。
ダニエル
あっけらかんと聞いてくるダニエル。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ダニエル
ウェンデッタ
古くから『聖女』は 国が存亡の危機となった際、 “奇跡”を起こす存在とされているが…
…少なくとも、建国以来 奇跡が確認されたとの歴史はなく、 いわば「形骸化した役割」だ。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
とはいえウェンデッタも 新聞の写真で何度か姿を目にしたため、 かろうじてクロエの顔は知っていた。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ダニエル
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
溜息まじりに重い腰を上げ、 少女は 応接室へと向かった。
――応接室。
紅茶と菓子を囲むのは、 聖女クロエとウェンデッタの2人。
クロエの希望で 使用人も含め人払いし、 文字通り「2人きり」の状態だ。
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタが単刀直入に尋ねると、 クロエが悲しい顔をした。
ウェンデッタ
話術が巧みなクロエは、 自分を被害者に仕立て上げるのが 異常に上手い。
周りの大人や男どもの 同情を集め、 物事を自分優位に運ぶ――
――それが “性悪”聖女クロエの 常套手段だ。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
初めて喋るはずなのに 現実のクロエは、 夢で見た“嫌なヤツ”そのもの。
ウェンデッタ
いら立ちかけた心を引き締め、 少女は平静を装う。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
クロエ
お互い笑顔の裏で、 バチバチと静かな火花が 飛んでいる。
貴族特有の腹の探り合い、 というやつだ。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
どちらにせよ 、 「油断できない相手だ」 という点だけは確実である。
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
くすっと笑い、クロエは言った。
クロエ
ウェンデッタ
――聞き間違い。
まずは、 その可能性を考慮した。
クロエ
だがクロエは、 恍惚とした笑みを 浮かべている。
ウェンデッタ
瞬間、再び ウェンデッタを襲うは――
――3年間の “悪夢”。
あふれ出る冷や汗と恐怖を どうにか抑えつつ、 少女は言葉を続けた。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
ウェンデッタ
クロエのつぶやきに、 ウェンデッタが身構える。
クロエ
あからさまな反応に、 何かを確信したらしいクロエ。
その顔は深刻だった。 まるで―― 憑き物が落ちたかのように。
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
唐突な答えに、ウェンデッタは 間抜けな顔を さらしてしまったのだった。
――10分後。
クロエ
クロエが語ったのは、 荒唐無稽な“真実”だった。
ウェンデッタ
混乱しつつも、ウェンデッタは 話をまとめていく。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
子リスみたいに可愛く チョコマドレーヌを頬張りつつ、 クロエは相槌を打つ。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
――どうにも 解せない。
だがクロエの主張には 一理ある…
それが少女の結論だった。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
クロエはあざとくポーズを決めてから、 ウェンデッタの瞳を まっすぐ見つめて言い放つ。
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
絶句するウェンデッタ。
クロエは紅茶を一口すすって ぽつりと言った。
クロエ
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタは 気づいた。
過去のクロエが、 『自分と同じ運命』を たどった可能性に。
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
クロエ
前世を思い出したのか、 クロエは 青ざめて震えている。
クロエ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタは 何も言えなかった。
図星だったからだ。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
首を横に振る ウェンデッタ。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
少し考えてから、 ウェンデッタは口を開いた。
ウェンデッタ
クロエ
抱きつこうと飛びついてくるクロエを、 ひょいと避けるウェンデッタ。
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタは “ニヤリ”と笑う。
ウェンデッタ
クロエ
固い握手をかわす少女たち。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
そう心に誓う少女の瞳は、 “赤い決意”で 燃え上がっていた。