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ウェンデッタ
少女が、再び目覚めると――
――そこは変わらず、 自分の寝室のベッドだった。
ウェンデッタ
ダニエル
笑顔で話しかけてきたのは、 専属執事のダニエル。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ダニエル
ダニエル
全身を見せるように、ダニエルが くるっと回った。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタが ベッドから上半身を起こす。
着ているのは 囚人服――ではなく、 愛用のネグリジェ。
血だらけだったはずな 手や腕は、 透き通るように白いまま。
殴られ、蹴られ、燃やされ… 傷だらけで絶命したとは思えない。
ウェンデッタ
呆気にとられるウェンデッタへ、 ダニエルが優しく声をかける。
ダニエル
ダニエル
ウェンデッタ
ダニエル
ダニエル
ダニエル
ダニエル
ウェンデッタ
ここまで言いかけたところで 気が付いた。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
慌ててベッドから飛び出た ウェンデッタは『鏡』をのぞく。
ウェンデッタ
鏡に映っていたのは、 記憶よりも若い 自分の姿。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ダニエル
ダニエル
ウェンデッタ
急に聞こえた“憎き元凶”の名に 思わず身構えるが――
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
――悪い夢 だった。
そう思えば、 万事が丸く収まる はずなのだが…
ウェンデッタ
少女は、底知れぬ不安を 拭い去れずにいた のだった。
起きて身支度を整えた ウェンデッタがしたこと――
――それは、 家族の安否の確認だ。
ダニエルに聞いたとおり、 父も母も、弟のリヴィオも 無事だった。
屋敷の中は、平穏そのもの。
婚約者アルスでさえ 変わらず優しい。
ウェンデッタ
そう思い始めた 少女だったが――
翌日。
ウェンデッタ
ダニエル
――聖女クロエ。
もとは平民だったが、 数か月前『聖女』に選ばれたことで 五大貴族ミスミ家の養女に迎えられた。
“夢”の中のウェンデッタにとっては 婚約者アルスを巡り争う “憎き恋敵”でもある。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ダニエル
ウェンデッタ
古くから『聖女』は 国が存亡の危機となった際、 “奇跡”を起こす存在とされているが…
…少なくとも、建国以来 奇跡が確認されたとの歴史はなく、 いわば「形骸化した役割」だ。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
首をかしげつつ、少女は 応接室へと向かった。
応接室。
紅茶と菓子を囲むのは、 聖女クロエとウェンデッタの2人。
クロエの希望で 使用人も含め人払いし、 文字通り「2人きり」の状態だ。
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタが単刀直入に尋ねると、 クロエが悲しい顔をした。
ウェンデッタ
話術が巧みなクロエは、 自分を被害者に仕立て上げるのが 異常に上手い。
周りの大人や男どもの 同情を集め、 物事を自分優位に運ぶ――
――それが “性悪聖女クロエ”の 常套手段だ。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
いら立ちかけた心を引き締め、 少女は平静を装う。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
クロエ
お互い笑顔の裏で、 バチバチと静かな火花が 飛んでいる。
貴族特有の腹の探り合い というやつだ。
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
くすっと笑い、クロエは言った。
クロエ
ウェンデッタ
――聞き間違い。
まずは、 その可能性を考慮した。
クロエ
だがクロエは、 恍惚とした笑みを 浮かべている。
ウェンデッタ
やたら生々しい“悪夢”の 記憶が蘇る。
あふれ出る冷や汗と恐怖を どうにか抑えつつ、 少女は言葉を続けた。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
ウェンデッタ
クロエのつぶやきに、 ウェンデッタが身構える。
クロエ
憑き物が落ちたかのように、 深刻な顔になるクロエ。
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
唐突な答えに、ウェンデッタは 間抜けな顔を さらしてしまったのだった。
10分後。
ウェンデッタ
混乱しつつも、話をまとめる ウェンデッタ。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
――どうにも解せないが、 クロエの主張には一理ある。
それが少女の結論だった。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
クロエはあざとくポーズを決めてから、 ウェンデッタの瞳を まっすぐ見つめて言い放つ。
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
クロエ
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタは気づいた。
過去のクロエが、 『自分と同じ運命』を たどった可能性に。
ウェンデッタ
クロエ
ウェンデッタ
クロエ
前世を思い出したのか、 クロエは 青ざめて震えている。
クロエ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタは 何も言えなかった。
図星だったからだ。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
少し考えてから、 ウェンデッタは口を開いた。
ウェンデッタ
クロエ
抱きつこうと飛びついてくるクロエを、 ひょいと避けるウェンデッタ。
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタは “ニヤリ”と笑う。
ウェンデッタ
クロエ
固い握手をかわす少女たち。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
そう心に誓う少女の瞳は、 “赤い決意”で 燃え上がっていた。