奈都
最近、あの怪しい男とよくすれ違うようになった
彼はエレベーターを降りるなり、軽く会釈して足早に去っていく
奈都
会釈を返しつつ、またいつものようにその背中を見送る
無意識にそれがルーティーンとなっていた
奈都
早朝、まだ半開きの目を擦りながら、ドアの鍵を鞄から探していた
奈都
鞄をゴソゴソしていると、隣からドアが開く音がして思わず横を向いた
奈都
そこにはーーーーあの人が居た。
奈都
あちらも気づいたのか、軽く会釈をして鍵を取り出す
奈都
急いで鍵を閉め、エレベーターに駆け込んだ
奈都
心の中で叫びながら、隣のあの人をチラッと確認した
密室に流れる微妙な空気に耐えられず、ただ床を見ることしかできない
一方彼はというと、特に気にしていない様子だった
奈都
マスクに眼鏡に帽子まで被っていても隠せない存在感と黄金色の瞳はどこか異彩を放っていた
奈都
考え込む間もなく、エレベーターは1階に到着した
奈都
急いで飛び出した瞬間、足元で小さな金属音がしたことには気づかずに、そのまま走り去った
ーーーその事実を、俺はまだ知らなかった
ぽん子
ぽん子
ぽん子
ぽん子
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