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第1話 - あ

2023年04月11日

#恋愛

結城真矢

ハハ

タロウ！今日は給料日よね？

ハハ

さっさと仕送りを振り込んでちょうだい！

ハハ

じゃないと借金の支払いが出来ないじゃないの！！

ハハ

もう、相変わらず鈍臭いんだから！

ハハ

仕送りが遅れた罰として、5万上乗せしてもらおうかしらね！

ハハ

ちょっと！聞いてるの！？

ハハ

早く返信しなさいよ！！

タロウ

母さん?

タロウ

仕送りが振り込まれてない件についてだけど、俺この前連絡したよね？

タロウ

今月は給料日と祝日が被っているから、明日には振り込まれるよって。

タロウ

ちゃんと伝えていたと思うんだけど…

ハハ

はぁ！？

ハハ

今日お金が必要なのに、明日振り込まれるんじゃ意味ないわよ！！

ハハ

今日必要なお金はどうするつもりなの！？

ハハ

あんた口座にある程度の貯蓄はあるんでしょ！？

ハハ

それ今すぐ入金しなさい！！

ハハ

とりあえず、10万で良いわ！

ハハ

急いでよね！！

タロウ

母さん、それは難しいよ。

タロウ

今でさえ、かなり切り詰めて母さんに仕送りを送っているんだ。

タロウ

月20万も仕送りするのは正直厳しいものがあるよ。

ハハ

何言ってるのよ笑

ハハ

月20万の仕送りなんて当たり前の話じゃないの！

ハハ

あんたが薄給だから仕送り出来ないんでしょ！？

ハハ

だったら給料の良い会社に転職でもしなさい！！

ハハ

2件お隣のレオくんは月30万も仕送りしているらしいわよ〜？

タロウ

え、レオがそんなに？

タロウ

それに、今やってる仕事は俺がずっと目指してた職業だって、

タロウ

母さんもわかっているよな？

タロウ

それなのに金のためにそんなこと言うなんて…

タロウ

息子を何だと思っているんだ?

ハハ

もう！あーだこーだうるさいわね！！

ハハ

私は年金暮らしになったのよ！？

ハハ

色々とお金がかかるって言うのに、少ない年金だけじゃ足りないでしょ！？

ハハ

それともなに？

ハハ

年寄りだから大人しく家に居ろとでも言いたいわけ！？

タロウ

いや、そういう意味じゃないってば。

タロウ

ちょっと落ち着いてくれよ。

タロウ

とりあえずこれ以上の仕送りは現状厳しいから、

タロウ

月20万で我慢してもらえないか？

タロウ

お金は明日振り込まれるはずだからさ。

ハハ

仕方ないわね！！

ハハ

今度仕送りが遅れるようなことがあったら、増額してもらいますからね！

ハハ

あーそれと1つ聞きたいことがあったのだけれど…

タロウ

なに？

ハハ

あんたの彼女、どっかの会社の社長令嬢なんですって？

タロウ

え、何でそれを…

タロウ

母さんには話してなかったはずだけど。

ハハ

やっぱり隠そうとしていたんだね笑

ハハ

彼女の財産を自分1人で欲張るつもりだったんだろ笑

タロウ

俺はそんなつもりはないよ。

タロウ

母さんに伝えなかったのは申し訳なかったと思うけどさ、

タロウ

まだ結婚するかどうかも分からなかったから、

タロウ

俺が勝手に言うことは出来ないんだよ。

ハハ

とにかく、1度うちに連れて来な。

ハハ

手土産は10万くらいで許してやるからさ。

タロウ

また金かよ…

タロウ

もううんざりだ、いい加減にしてくれ。

ハハ

お前、母さんに向かって何て口の聞き方なんだよ！

ハハ

口を慎みな！！

タロウ

はいはい、分かりましたよ。

タロウ

仕事が残ってるから、ラインこれで終わるね。

タロウ

じゃあね。

ハハ

おい！逃げてんじゃないよ！

ハハ

今度反抗的な態度取ったらタダじゃおかないよ！

〜タロウとマリのやりとり〜

マリ

タロウ！助けて！

マリ

これどうなってるの！？

マリ

お父さんの会社にタロウのお義母さんが来てるんだけど！！

タロウ

え！？

タロウ

俺の母さんが！？

タロウ

まさか…

マリ

何か心当たりがあるの？

タロウ

さっき俺にラインが来てさ、いつも通り仕送りの催促だったんだけど、

タロウ

マリが社長令嬢だっていうことをどこからか聞いたみたいで、

タロウ

会わせろって言われたんだ。

タロウ

意味の分からないことばっかり言われて腹立ったから

タロウ

こっちからライン終わらせたんだよ。

タロウ

こんなすぐにマリのお義父さんの会社に行くなんて…

マリ

そうだったのね…

タロウ

というか、母さんは何しに来たんだ！？

マリ

それがね、会社のエントランスで私を出せ！10万よこせ！って

マリ

大暴れしていたんですって…

タロウ

はぁ！？

タロウ

マジで何やってんだよあの人は…

マリ

とりあえず警備室に連れて行かれたみたいだけど、

マリ

タロウのお母さんだからと思って、警察を呼ぶのはためらっちゃってさ…

マリ

どうしたら良いかな…？

タロウ

警察呼んでいい！！

タロウ

会社の人は怪我してないか！？

タロウ

マリは大丈夫なのか！？

マリ

分かったわ！！

マリ

お義母さんを取り押さえてくれた警備員さんが怪我したみたい…

マリ

あと受付にあった花瓶とエントランスのテレビを破壊しちゃったみたい…

マリ

私は外勤に出ていたから大丈夫よ。

タロウ

マジかよ…最低だな。

タロウ

ひとまずマリが無事で良かったけど…

タロウ

後で謝罪に行くわ。

タロウ

本当に俺の母さんが申し訳ない。

マリ

私も突然お父さんから連絡が来て、戸惑っちゃったんだけど、

マリ

まさかお義母さんが会社に来るなんて思ってもいなかったから…

タロウ

そうだよな…

タロウ

警察は来てくれたか?

マリ

今会社に戻ったんだけど、ちょうど警察が来ていたよ。

マリ

大暴れしてパトカーに乗って行ったわ。

マリ

警備室にいる間も「タロウの彼女を出せ！金よこせ！って、」

マリ

ずっと叫んでたって、警備員さんに聞いたよ。

タロウ

はぁ…本当にマリにもお義父さんにも申し訳ない。

タロウ

決めたわ。

タロウ

俺、母さんと絶縁するよ。

マリ

うーん。

マリ

今までタロウからお義母さんの話は聞いていたんだけど、

マリ

今回の出来事でその方が良いんじゃないかなって思ったよ。

マリ

お義母さんがこんなこと何度も繰り返してたら、

マリ

タロウがかわいそうだよ！

タロウ

…ありがとう。

タロウ

マリはいつも俺のこと心配してくれてるよな…

タロウ

本当にありがとうな。

マリ

ううん。私はタロウと幸せに暮らしたいだけよ。

マリ

実のお母さんと絶縁をするなんて悲しいことかもしれないよ？

マリ

でも、タロウはもう自分の人生を歩んでいるんだから、

マリ

自分のことを優先的に考えてほしいよ。

タロウ

本当にありがとう。

タロウ

マリのおかげで決意することができたよ。

タロウ

これからは自分のことをもっと大事にして生きるね。

マリ

そうだよ！

マリ

私のことも大事にしてね笑

タロウ

もちろん！

タロウ

とにかくもう少ししたら会社に謝罪しに行くからね。

マリ

分かったよ。待ってるね。

〜2日後〜

ハハ

おい！タロウ！

ハハ

お前いい加減にしろよ！？

ハハ

お前が警察にチクったんだろ！！

ハハ

逮捕されちまったじゃねぇか！！

ハハ

おい！何とか言えって！

ハハ

お詫びに金よこせよ！！

ハハ

ここまで私を貶めたんだから50万は貰わないといけないよなぁ？

タロウ

あの…あなたどなたですか？

タロウ

私、あなたのような野蛮な人は存じ上げないのですが…

ハハ

はぁ！？

ハハ

お前、ふざけんじゃねぇよ！？

ハハ

舐めたことばっか言ってると絶縁すんぞ！？

ハハ

絶縁されて困るのはお前だよなぁ？笑

ハハ

お前は母さんが居ないと何にも出来ないんだもんなぁ？笑

タロウ

はい？

タロウ

あなたが居ないと何もできないと…？

タロウ

何を勘違いしていらっしゃるのでしょうか…笑

タロウ

困った人ですね…

ハハ

当たり前じゃねーか笑

ハハ

どうせ、地元を離れてから底辺企業でずっと稼いでいたんだろ？

ハハ

私のアドバイスがなかったら、生活はしていけてなかったはずだ！

タロウ

私のアドバイスとは…？

タロウ

あなたからアドバイスをされたことなんて1度もないと思うのですが…

タロウ

俺は自分の力でここまで生活してんだよ。

タロウ

俺の人生を壊したくせに…ふざけたこと言ってんじゃねぇよ。

ハハ

へ…？

タロウ

俺が高校生の時から金のことしか言わなくてさ、

タロウ

本当は大学に行きたかったのに…

タロウ

金がかかるからって行かせてもらえなくて。

タロウ

そのために貯めてたバイト代も全てあなたに持って行かれて、

タロウ

俺があなたを恨んでないとでも思ってるのか?

タロウ

恨んでるに決まってるだろ！？

タロウ

俺は母さんに人生を壊されたと思ってるよ！！

ハハ

そんなこと言われたって…

ハハ

母さんだって大変だったんだよ！！

ハハ

タロウが高校の時にホストにハマっちまって、

ハハ

チヤホヤされて楽しくてさ…

ハハ

気付いたらお金無くなってて、私も歳だから働けなかったし！

ハハ

タロウに頼るしかなかったんだよ！！

タロウ

はぁ…？

タロウ

あんたの欲のために…ホストのために俺が働く羽目になったと…？

タロウ

マジでふざけんじゃねぇよ。

タロウ

俺が稼いだ金をそんなものに使いやがって…

ハハ

そんなもの！？

ハハ

母さんにとっては大事だったんだから仕方ないだろ！！

ハハ

生意気なことばっかり言うんじゃねぇよ！！

タロウ

というか…そんなこと言ってる場合かな？

ハハ

なんだよ…

タロウ

俺の彼女が社長令嬢ということは知っていたと思うんだけど…

タロウ

その会社に乗り込んで色々やらかしてくれたんだよね?

タロウ

社長があなたに損害賠償請求をしたいそうなんだけど、良いですよね？笑

ハハ

へ！？

ハハ

損害賠償請求！？

タロウ

当たり前じゃないですか？

タロウ

あなたは全く関係のない会社に乗り込んで、

タロウ

備品を壊す、警備員に怪我を負わせておいて、何の制裁がないとでも？

タロウ

そんなことがあるわけないだろう…

ハハ

あ…いや…

ハハ

そんなつもりで言ったんじゃなくて…

ハハ

損害賠償なんて出来る金は私にはないんだよ！！

ハハ

あ！分かった！

ハハ

私の損害賠償、お前が払えよ！！

ハハ

これで一件落着だ！

ハハ

まぁ数ヶ月の仕送りは我慢するとしても、それ以降は払ってもらうからな！

タロウ

何を言っているんだか…

タロウ

損害賠償はあなたに請求されているものですよ?

タロウ

俺は全く手助けはしません。

タロウ

あなたが自分で稼いで支払わなければ意味がないと言われていますから。

タロウ

社長と社長令嬢に。

ハハ

なんだって！？

ハハ

66歳にもなって、これから働けって言うのかよ！！

ハハ

年金で何とかするから…働くのだけは勘弁してくれないか！？

ハハ

お願いだよタロウ…

タロウ

ふさげるな。

タロウ

俺はもう2度とあなたに関わる気はないです。

タロウ

息子を金稼ぎの要因としか思っていないやつとは絶縁する。

ハハ

は！？絶縁！？

ハハ

そんなこと言わないでくれよ！！

ハハ

タロウってば！！

タロウ

母さんはいつもそうだったな。

タロウ

いつも俺を一人ぼっちにして放置するばかりで、

タロウ

父さんと離婚してからは男と出歩いてばかりだったもんな。

タロウ

そんな母さんは俺には必要なかったんだよ。

タロウ

俺はマリと一生生きていくと決めたんだ。

タロウ

これ以上関わらないでくれ。

ハハ

タロウ、ごめんってば！！

ハハ

もう2度としないから！

ハハ

これからも仕送りしてくれって！

ハハ

じゃないと生活出来ないよ！！

タロウ

俺には母さんはいません。

タロウ

さようなら。

〜後日談〜

タロウ

こうして俺は母さんと絶縁しました。

タロウ

今思えば、小学生の頃から母さんはほとんど家におらず、

タロウ

見知らぬ男を家に連れ込んでいることもありました。

タロウ

そんな生活を続けているうちに、感覚が鈍ってしまったのでしょう。

タロウ

母はマリのお義父さんの会社から損害賠償請求をされ、

タロウ

借金を背負うことになってしまったのです。

タロウ

66歳になってから借金を背負った母は、

タロウ

ボロボロになりながらも働き続け、借金を返済しているとか…

タロウ

唯一の肉親に絶縁された今、頼れる人が誰もおらず、

タロウ

毎日泣き暮らしているそうです。

タロウ

私は一時期マリやマリのお義父さんと距離を置いていましたが、

タロウ

マリがお義父さんを説得してくれて、無事結婚のお許しを頂くことが出来ました。

タロウ

今は結婚式の準備でバタバタしていますが、

タロウ

幸せに暮らしていけたらと思っています！

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結城真矢

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