テラーノベル
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トンッ
かいざー
その瞬間。
空気が、静かに歪んだ。
音が消える。
風が止まる。
そして残った感覚の端に“青”が滲む
いさぎ
最初は、小さな点だった。
それが、ゆっくり花弁の形をとり始める。
青い薔薇。
それが、一輪
何もない空間に咲いた。
いさぎ
呟くけど。男は答えない。
ただ、花弁が一枚
ほろり。
剥がれ落ちる。
その瞬間だった。
_霧雨とは違う、雨の匂い。
いさぎ
世界が重なる
戦場と、
知らない路地が
同時に存在している。
いさぎ
足場は戦場のままなのに
空気だけが違う
かいざー
男の声だけが、はっきりと頭に響く。
かいざー
かいざー
かいざー
青薔薇が、どんどんと戦場に増えていく
一輪、二輪、三輪………
気づけば視界のあちこちに咲いている。
いさぎ
振り払おうと
青い薔薇に触れた瞬間
頭にノイズが走る_
いさぎ
映像が割れる。
路地裏。
声。
手の温もり。
「困ってたから…かな…」
音が歪む。
いさぎ
俺は反射的に頭を押さえた。
いさぎ
薔薇が一斉に散る。
その度に
記憶が“割れる”。
正常な思い出じゃない。
再生に失敗したデータみたいに。
一部の断片だけ。
かいざー
男の声がさっきよりも近くなる。
かいざー
いさぎ
かいざー
いさぎ
俺の叫びと同時に
全ての薔薇が砕け散った。
かいざー
男の声が震える。
その瞬間
青薔薇が、“歪む”
花弁の形を保てないまま
崩れて
裂けて
それでも、必死に咲こうとする。
いさぎ
空間そのものが、軋み始める。
戦場が上書きされる。
また
路地裏。
そして
雨。
血。
全てが同時に存在する。
いさぎ
俺は無意識に後ずさる。
いさぎ
かいざー
男が笑う。
かいざー
男の前を見るその目は
もう焦点が全く合っていない。
現実じゃなくて
男が言う“俺の中”を見ている様に
かいざー
かいざー
かいざー
次の瞬間
全ての青薔薇が、一斉に咲き誇った。
先ほどとは違って。
綺麗に、均等に。
歪まず
裂けず
ただ華麗に。
そして世界が全て塗り替わって行く。
“記憶”に__
コメント
1件
うわー!いいですね!この後の展開がとってもとっても気になります!