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ユアダイアリー、マイヒストリー

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ユアダイアリー、マイヒストリー

1 - ユアダイアリー、マイヒストリー

♥

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2020年05月09日

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健一

羨ましい

健一

毎回言うよね、君

健一

俺にはなにもないんだ

健一

でも、結婚して子どももいて

健一

仕事だってうまくいってるんでしょ?通信インフラ開発メーカーだっけ?

健一

まぁ、おかげさまで良い生活はさせてもらってると思うけど

2040年、情報化が過度に進んだ現代において通信量の負荷は見過ごせないレベルになった

健一

でも退屈なんだよ。根本的に。君には分からないかもしれないけど

健一

なんだよ、八つ当たりはよしてくれよ

健一

ごめん笑
ちょっと言ってみたかったんだ

2020年に5まで数えた通信帯も必要に迫られてどんどんとバージョンを 更新していく。

健一

このやりとりも何回目だよ

健一

すまない

従来のネットワークシステムでは 近い将来、通信をまかなえなくなる のは目に見えていた。

健一

まぁ、気にするなよ

そんな中、 世界に全く新しい粒子発見された。 多元性並行粒子

世界は一つじゃなくて 折り重なるように出来ていて 別時空に介して通信を行うことで 通信遅延を解消する云々…

健一

他人事じゃないからな。笑

正直、説明を聞いても理屈は 理解できなかった。 意味がわからない。ただ…

健一

俺が俺に説教してるなんてなぁ笑

ただ、 俺は今並行世界の俺と リアルタイムで連絡を取り合ってる。

健一

説教とは失礼な

健一

俺は…

健一

健一

おーい、俺

健一

俺、届いてるか?

健一

2040年5月4日22時37分
42回目の通信終了

奇妙だ。 でも慣れたらこれも日常だ。

健一

お疲れ様です。
通信途絶えました。

ひまり

はい、お疲れ様です。
今日も自分との対話をお楽しみで?

健一

仕事ですよー。

健一

そう思うと俄然やる気なくなりますよね。

業務が終わった後の数時間 俺は並行世界の俺と連絡を取る。 これも立派な業務だ。 手当ても悪くない。

健一

こんなの適当な調査員雇ってやればいいのに。

ひまり

超極秘技術よ。外部の人間使うわけにいかないでしょ。

従来のものとは異なる 全く新しい通信システム 多元性並行粒子を利用した通信手段を 10Gシステムとしてリリースする。

この試みが成功すれば市場独占 それどころか 技術のライセンスをとれば 社には巨万の富が約束される

ひまり

いいじゃない。このプロジェクトが成功したら確実に歴史に残るわよ

並行世界との通信も10Gシステムを 運用するための実験の一環だ。

ひまり

教科書に載るのがあなたの夢なんでしょ?笑

健一

あっ、勝手に通信ログ見ましたね!

健一

プライバシー侵害だ!

社をあげての一大プロジェクトに、 技術部でない俺が 登用される理由は皆目見当がつかない

ただそんな状況を 正直俺は楽しんでいた。

ひまり

そうだよね。

覗くつもりはなかったんだけど中身を確認するのも私の仕事だから

健一

いや、そんなに真面目なトーンで謝られると

健一

逆に申し訳なくなります

ひまり

うん、君ならそう言うと思った。

ひまり

ちょろいね。

ひまり

でもそこが良いところね。

健一

馬鹿にしてますよね笑

ひまり

褒めてるのよ、本気で

ひまり

それにこれは向こうの世界の健一君たっての希望でもあるの。

初耳だった。

健一

あのそれって

ひまり

健一

ひまりさん?

健一

もしもーし?

少し待ったけど通信が安定しない。 どちらにしろ業務は終わってる。 今日は帰っても構わないだろう…

自動運転モードで車を走らせながら 考えるのは別の世界の自分のこと。

もう一人の俺はジャーナリストとして日夜巨悪と闘っているらしい。刺激的な毎日、俺とは大違いだ。

健一

同じ俺のはずなのなぁ

もう一人の俺の話を聞くたびに 自分のまだ見ぬ一面を知れた気がして 最初は誇らしかった。

健一

…はぁ

でも、誇らしかったのは 最初だけだった。

車内搭載AI ナナコ

健一さん、お電話です。

車に搭載したアシストAIが 着信を告げる。

健一

はい、もしもし

応答はなかった。 聞こえてくるのはキュルキュルという電子音だけ。 電子音は近づいたり遠ざかったりを 繰り返している。

健一

なんだ?間違いかな?
…あれ?

通話を切断できない。 向こうからは相変わらず電子音が 遠ざかったり、近づいたり 彷徨ってる。

健一

あっ、切られた。

#%\_$

通話終了

通話
02:07

健一

なんだったんだ。

気味が悪い。

健一

さっさと帰って寝てしまおう。

そんな俺の思いと裏腹に車は スカスカの道をノロノロと走ってる。 法定速度の遵守。融通が効かないのは自動運転の弊害だと思う。

健一

うわっ!?

不意に携帯デバイスが振動した。 新着メールだ。

車内搭載AI ナナコ

健一さんへ
健一さんからメッセージです。

差出人はもう一人の俺だった。

健一

やぁ、驚いたかい?

健一

社外でやり取りするのは
初めてだね。

健一

驚いた。
というかどうやったんだ?

社内デバイスには特別な仕組みが 施されていて普通のデバイスじゃ 並行世界とはやり取りできない。 ひまりからはそう聞かされていた。

健一

さっき、着信あったろ?

健一

あれは君からだったのか。

健一

正確にいうと違うんだが…

曰く、多元並行世界で連絡を取り合うのに大事なのは座標なのだと言う。

それを探り当てるために 社内のやりとり用のデバイスから プライベート用のデバイスに アクセスして云々。

健一

なるほどなぁ

などと言ってみたが、 正直、もう一人の俺が 何を言ってるのかはさっぱりだった。 理解できる自信もない。

健一

ともかく俺に用があったんだろ?

健一

どうしたのよ?

健一

ひまりって研究者いるだろ。

健一

あいつが俺たちの世界を征服しようとしてる。

寝耳に水だ。 流石にバカげてる。

健一

なぁ、マジか?
冗談だろ?

健一

ひまりを止めて
世界を救って欲しいんだ。

健一

何言ってんの?

健一

そもそも俺、ひまりさんと直接会ったこともないよ。

健一

その点は大丈夫。
もうそろそろかな。

車内搭載AI ナナコ

目的地に到着しました。

いつの間にやら 眠ってしまっていたようだ。 それにしてもここはどこだ?

健一

おいおい、なんだよこれ。

どこかの山奥だろうか。 人がいる気配がまるでない。 そもそもなんでこんな場所に? システムエラーだろうか?

健一

ダメだ。車動かない。

再起動もできない。 システム自体がロックされてる。

健一

…どうしよう。

途方に暮れていたらデバイスがマップを受信した。目的地は300mほど歩いたところ。

健一

なんだろこれ?

真っ暗闇の山の中。 じっとしている方が不安だった

健一

行ってみるか。

マップの指示に従って歩いていくと唐突に一軒の家屋が現れた。

コンクリート打ちっぱなしの2階建て殺風景な建物だ。

健一

鍵かかってないのか。

不用心だが、こんなところを訪ねてくる人間もいないのだろう。

健一

すいません、お邪魔します。

返事はない。

健一

弱ったなぁ。

こんな真っ暗闇の山の中にいるのはやっぱり怖い。少し迷ったけど、家に上がらせてもらうことにした。

健一

生活感のない家だな。

家主は留守なのかもしれない。そう思うと一気に気が抜ける。

健一

朝になったら車に戻るか

ソファをベット代わりに横になった。 うとうとと気が遠くなっていくー

???

そこにいるのは誰!?

起き上がると見覚えのあるおかっぱ頭の女がいた。

健一

ひまりさんですよね?

ひまりと会ったのはこの時が初めてだった。写真で見るよりもちょっと幼くて、メールのやり取りから想像していたよりもずっと頼りない女性だった。

健一

僕です。健一です。

ひまり

そう、健一くんなのね。

さて何から説明すれば良いだろうか。

健一

ひまりさーん、ちょっと聞いてくださいよ。大変だったんですよ。

でも、ひまりは俺の話を聞こうとはしなかった。

ひまり

で、あなたどっちの健一くん?

健一

え?
いや、何言ってるんですか?

ひまり

だから、どっちなんだって言ってるのよ!!

金切り声でひまりは叫び出した。 彼女の手にはナイフが握られている。 殺されると思った。

健一

ちょっとやめてください!

ひまり

うるさい!私の研究の邪魔をしないで!

彼女はナイフを出鱈目に振り回した。殺されないように俺は必死だった。

ひまり

こっち来ないでよ、気持ち悪い!

どうにかしてナイフを取り上げたけど、彼女は怯まなかった。それどころか果敢に俺に襲いかかってくる。

ひまり

いや、やめてよ!やめて!

色々とイメージとは違ったけど、その負けん気の強さは思った通りだった。

ひまり

助けて…。寒い。誰か…。

身体のあちこちから血を吹き出してるひまりを見ながら、俺は他人事みたいにそう思った。

健一

俺は…悪くない。

俺からメールが届いた。

健一

よくやった。悪の化身ひまりはこれで滅んだ。

健一

おい、ひまりさん死んじゃうよ。どうしよう

健一

お前は悪くない。悪いのはひまりだ。

健一

あいつはそもそも人の話を全く信じようとしない。だから、こうなったんだ。ひまりの自業自得だよ。

健一

何を言ってるんだ?

健一

お前が言ってること全く意味がわからないよ。どうしてくれるんだよ。

健一

きにするな。入れ替わるんだ。さぁ、あとは俺に任せろ。

健一

えっ?

健一

入れ替わるってなんだ。

健一

俺は…

ガシッと肩を掴まれた。 振り返ると俺がいた。

ひまり

健一さん、ご気分はどうですか?

健一

ひまりさん?
俺は世界を救おうとして…

ひまり

あらあら、それは凄いですね。

ひまり

それよりちゃんとお薬飲まないとダメですよ。

錠剤を差し出された。 ひどく苦い薬だった。

健一

それよりひまりさん。
無事だったんですね。

…よかったどうなるかと

健一

というかここは並行世界ですか?

健一

だとしたらもう一人の俺は?

ひまり

怖い夢を見てたんですね。大丈夫だから落ち着いて。

健一

あれは夢じゃない。俺は世界を救おうと…

ベットを起き上がろうとしたところで手足を縛られていることに気がついた

健一

ちょっとひまりさん。これなんですか!外してください。

おかしい。

健一

おい!外せって!
誰か助けてくれ!
殺される!

あれ?違うのか?

#%\_$

ひまり

可愛そうに。すっかりおかしくなってしまって

おかしいのは俺なのか?

ひまり

そろそろ薬が効いてきたみたいね。

#%\_$

分からない。 俺は俺? じゃあ、あの俺は誰だ。 世界は一つ?

ひまり

並行世界だとか、もう一人の俺だとか…。おかしな妄想にはもうもう飽き飽きよ。

#%\_$

ひまり

さっさと処分してくれないかな。

#%\_$

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