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夢の中で、私はまた君に会う。 毎晩同じ場所。古びた倉庫のような場所。光はやわらかく、静かで、時間が止まったみたい。 そこに君はいる。いつも窓辺で本を読んでいる。
君はそう言って笑う。その笑顔だけが、なぜか現実よりも鮮やかだった。 最初は不思議な夢だと思った。けど、何日経っても同じ夢。君も、変わらない。 まるで、夢が“本当の場所”みたいに感じるようになっていた。
君はぽつりと言う。
私がそう答えると、君は少しだけ寂しそうに笑った。
ある日、夢の中の空気が少し違った。 君は、なにも言わずに私を見つめていた。まっすぐに、深く。
その言葉が何を意味するのか、私はすぐには理解できなかった。
君の声は、いつもより遠く感じた。
その夜、目が覚めても涙が止まらなかった。 胸の奥がぎゅっと痛くて、呼吸も浅くなる。 学校の帰り、なんとなく寄った駅の掲示板に、数年前のニュース記事が貼られていた。
『男子高校生、意識不明のまま...』
そこに載っていた小さな写真。 ぼやけたその顔が、夢の中の“君”にそっくりだった。
あれから、夢にはもう君は出てこない。 だけど、私は覚えてる。 あのやわらかな光、優しい声、そして、君の笑顔。 夢でしか会えなかったけど_。 私は、本当に君を、好きだったんだと思う。
空を見上げる。少し涙がにじむ。 でも、笑って言うんだ。