今日は土砂降りだ 。
屋根に水滴が強く打ち付けられて鉄砲のような音がしている。
この土砂降りなら、アイツも来ることは無いだろう。
胸撫でを下ろしていると、柔らかい春の風が前髪を揺らす。
雨が降っているにも関わらず、風は水を運ばなかった。
死神
やっほ~!

死神
来たよ~!

意味が分からなかった。
土砂降りの中、僕のもとに来る必要はないはずだ。
死神
何で雨が降ってるのに来るのか?って思ってるでしょ!

死神
雨でも来るよ~!そりゃ!

死神
だって、また明日!って言ったでしょ?

コイツは馬鹿だと思った。
そんなのは口約束で自分の都合で簡単に破るものだ。
誰も、そんな言葉を信じちゃいない。
死神
あ!そうそう!

死神
今日はこれ持ってきたんだ!

死神
家にあったんだ~!

死神
懐かしいなと思って!

死神
じゃ、読み聞かせするからとなり座るね~!

零
やめてください、狭い。

死神
良いじゃ~ん
カタイこと言わないでよ~

零
…

死神
じゃ、読むよ~

死神
「スズメとカワセミ」

死神
スズメは自分が地味な色であることに悩んでいました。

死神
そこでスズメは、母スズメに聞きました。

死神
「何でぼくはこんなに地味な色なの?」

死神
母スズメは言いました

死神
「私たちは、充分綺麗な色をしているわ。」

死神
「他の鳥にはない色でしょう?」

死神
母スズメはくるくると回って見せました。

死神
けれど、スズメは何が美しいのかさっぱりでした。

死神
外に出ると、ツバメが声をかけてきました。

死神
「ホントにお前、地味な色してるよな~」

死神
「カササギのとこで色変えてもらえよ!」

死神
スズメは恥ずかしくなって、逃げてしまいました。

死神
スズメは川のほとりで、ため息をつきました。

死神
「ぼくはなんでこんなに地味な色をしているんだろう?」

死神
カワセミが声をかけてきました。

死神
カワセミは、とても、とても美しい色をしていました。

死神
「どうした?」

死神
スズメは言いました

死神
「ぼくは、他の鳥より色が地味なんです」

死神
「どうしたらあなたみたいな綺麗な色になれるんだろう?」

死神
カワセミは言いました

死神
「わたしは水辺に生きるからこそ美しい水色であれる。夕焼けを受けるから美しい橙であれる。この色は、わたしだけのものだ。」

死神
カワセミは続けます。

死神
「スズメの色は、稲穂や土とともに生きるからこそその美しい色であれる。それは、その色は、スズメだけのものだ。」

死神
スズメは言いました。

死神
「…なんとなくわかった気がする!」

死神
「ありがとう!カワセミさん!」

死神
そういって、川のほとりを飛び立っていきました。

死神
日に照らされたスズメは一瞬金色にキラリと輝いて帰っていきました。

死神
お終い!

ゆっくりと読み上げられた話は、可もなく不可もない。
でも、どこか優し気な声で読み上げられていた。
死神
ね!どうだった!?

零
…

死神
読み方!良かったでしょ⁉

死神
頑張って練習したんだよ!

零
可もなく、不可もないって感じですね。

死神
ん?どういう意味だ?

零
普通ってことですよ。

死神
んふふ。そっかぁ~!

死神
良かったぁ~。

零
褒めてないんですけど。

死神
でも、もっときついのが来るかと思ってた!

死神
自分の中では詰まらず読めたのが良かったし!

死神
それに、零に乗っての普通はきっと、他の人にとって普通じゃなくてとっても良かったってことだと思うから!だって、零は本をたくさん読んでで、すごい人だから!

死神
ボクは満足~!

零
あっそ、

死神
うん!

死神
あ、雨やんだね!

零
そーですね

死神
じゃ、そろそろ帰るね~!

死神
また明日~!

零
…
