キーボードのEnterキーを押して 大きく息を吐く
伸びをすると 長時間動かさずにいた背骨が ボキボキと音を立てた
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窓に目を向けると 外は明るくなっている
また徹夜をしてしまった
物書きを主な生業としている『なかむ』 シナリオやエッセイ Web記事などを執筆しているが 時々イベントのプロデュースも頼まれる 甘いものをこよなく愛する彼は 最近体重計に乗るのが怖いようで 運動しようかと思案中である
そんななかむはマグカップに手を伸ばす
しかし中身は空だった
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そう呟いてから なかむは椅子から立ち上がって 何時間かぶりに自室を出た
キッチンではきりやんが 忙しそうに朝食の用意をしている
その隣できんときが コーヒーを淹れる準備をしていた
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なかむを見たきんときが いつもの笑顔で言う
そんなきんときに きりやんは手を動かしながら
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と言った
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呆れたようにきりやんが言う
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そう言いながら、なかむは ダイニングテーブルの上にカップを置き 自分の定位置に座る
ココアを入れたかったけど 忙しそうでとても割り込む勇気はない
生あくびをかみ殺していると きんときがなかむのカップを手に取った
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お礼を言いながら 手持ち無沙汰になったなかむは なんとなしにテレビをつけた
あるイベントの打ち合わせや シナリオを書くための 取材だのなんだのと 1ヶ月以上留守にしていたなかむ
先日やっと帰宅できた
友だちたちと暮らすこの家
賑やかを通り越してやかましい日常
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生活音に溢れる朝の1コマに
なかむは頬を緩めた
惰性でテレビに視線を向けるなかむに
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ときりやんが問うた
お酒大好き『きりやん』 大学院修士課程を終了後 企業の研究施設へと勤めているが なにやら小難しいことをしているようだ 毎日なかなか忙しそうで お酒を飲むのが癒しなのだとか 家にいる時は皆の朝食作りを請け負う
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そう答えて なかむは軽く伸びをしたその時
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きんときは微笑んで カウンター越しにカップを渡した
自称普通の人『きんとき』は 普通のサラリーマン だけど彼を見ていると 普通ってなにって思ってしまう 優しくて気遣いできて 笑顔も立ち居振舞いも爽やかなのに 脳筋すぎるのが玉に瑕
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なかむは椅子から立ち上がって そのカップを受け取る
受け取りながら きんときがある一定の方向に 視線を向けていることに気づいた
なかむもつられてそちらを見る
すると
寝起きのせいか 感情のない顔をしたスマイルが ダイニングの入口に立っていた
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少しむくれっ面のスマイルは 棒立ちのまま動かない
黙っていればイケメンなのに変わり者 言動が面白すぎていじられがち 滑舌が悪い上に人の話を聞いていない ことが多くマイペースな『スマイル』 これでサラリーマンをしているのだから 上司や同僚とどうやって コミュニケーションを取っているのか
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微動だにしないスマイルに なかむは首をかしげながら ココアを冷ますべく息を吹きかける
するとキッチンから出てきたきんときがスマイルに近寄った
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そう言いながら スマイルの頭に手を乗せる
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スマイルも特に嫌がるでもなく 自分の頭上に視線を向けた
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きんときが さも当たり前のように スマイルの腰に手を回す
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スマイルも当然のように それを受け入れていて
2人は揃って ダイニングキッチンを出ていった
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残されたなかむは 2人が出ていったドアを眺めたまま
きんときとスマイルに感じた違和感に 何度も首をかしげる
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高校時代に出会った 仲のいい友だちたち 自分も入れて6人でのシェアハウス
だけど
きんときとスマイルは 特に仲がよさそうという感じななくて
なんならきんときは
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とか言っていたこともあったし
スマイルはスマイルで
そんなことを平気で言う きんときを目の前にしても 全くもって気にしている様子もなく
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と返して そして興味をなくしたかのように 自分のしたいことに没頭する
少なくとも 触れ合うようなスキンシップをしたり 2人で連れだって何かしたりなんて
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そうひとりごちた時 きりやんが朝食をテーブルに置いた
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なかむの疑問に答えるかのように きりやんがそう呟いた
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そう言いながらなかむは
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と手を合わせる
きりやんも自分の朝食を置いて 手を合わせた
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思いがけないきりやんの言葉に なかむは目を丸くした
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ミニトマトを食べながら 矢継ぎ早になかむは問うた
きりやんはバターを塗ったトーストを 1口かじって満足そうに何度も頷く
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サラダを口にしながらきりやんは頷く
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友だちの思いがけない姿に なかむは引いた表情を浮かべる
きんときがSだとは知っていた だけど 嫉妬を煽るような行動までも起こすとは
それを さりげない行動の中でするのだから
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この時のなかむは 心底スマイルに同情していた
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きりやんはそう言って笑い そして食事を続ける
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早くゆっくりと2人の様子を伺いたい
なかむは笑いながらトーストをかじった
ほどなくして 着替えを済ませた きんときとスマイルが戻ってきた
いったい何があったのか
スマイルは あきらかにご機嫌になっている
先程の きりやんの話を思い出したなかむは スマイルの顔を見て 思わず笑ってしまった
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自分の顔を見て笑うなかむに 怪しいものを見るような視線を 向けたスマイルは 首をかしげながらも きんときの後をついてキッチンに向かう
互いに コーヒーを入れたり トーストを焼いたり
その間も2人は 視線を交わしながら笑顔で会話を続ける
食事中も隣り合わせで座って
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まるで2人しかいないかのように
2人だけの会話を楽しんでいる
挙げ句の果てに
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そう言いながら きんときは自分の頬を指差す
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スマイルがティッシュで頬を拭くけれど 上手く綺麗にならない
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きんときもティッシュを手にして スマイルの頬を拭いた
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嬉しそうなスマイルの顔
優しく見つめるきんときの顔
朝から甘々な世界
食器を片付けるべく キッチンに向かっていたきりやんは 2人から見えないところで 必死に笑いをこらえている
なかむも本当は笑いたかった
それをどうにか我慢して 食器を下げて 急いで食器を洗う
その間も 2人だけになったダイニングでは 甘い空気が漂い続けている
お皿を洗い終えたなかむは
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と言い残して 足早に自室に戻った
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たまには朝早くから行動してみるもんだ
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どういうきっかけで 2人が付き合い始めたのか 想像すらもできない
だけど
一番なさそうな2人が そういう関係になった
しかも激甘すぎる
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想像以上に甘えている
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なかりのベタぼれ
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もしかしたら 何かのネタになるかもしれない
ウォッチ対象を見つけたなかむは 自分が徹夜明けであることも忘れて
また机に向かいパソコンを立ち上げる
そして 今遭遇したばかりの出来事をメモして
フォルダにロックをかけた
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なかむはその怪しいテンションのまま 今度は シナリオ作りに没頭し始めたのだった
コメント
2件
あっ!!あーーー!!!シェアハウスの続きが出てる…!!!すっごく嬉しいです!ありがとうございます😭 🎤😊の甘々な空気に笑っちゃう🐼に自分も思わず笑ってしまいました。たしかに、あの2人が甘々なのは、他からしたら想像が全くつかなくて面白いのかも。 素敵な作品、ありがとうございます。次の更新を楽しみにしております♪