⚠︎︎本作は、華さん著の「マフィア物語 海外編(プロローグ)」を先ずお読みになってからの閲覧を推奨いたします。
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牛タンつくね
初めまして、或いはお久しぶりです!!
牛タンつくね
牛タンつくねです!
牛タンつくね
本作は【マフィア物語】シリーズの新章の "序章"となっております!
牛タンつくね
牛タンつくね
「心をやられても大丈夫!」
という方はぜひ最後までお付き合いいただけると幸いですm(_ _)m
牛タンつくね
結構長いお話になりますので、それも含めて何卒よろしくお願いします!!
牛タンつくね
これは、 『彼女』の三つ目の結末によって拓かれた 彼の『もうひとつの』物語
もしもあの時、 彼が村に『残っていたら』。
もしも彼も、 『病気』を発症していたら。
もしも逃げた先で、 ───『あの人』に出逢っていたら。
─違った世界で時が巻き戻った今、 彼の物語が再び幕を開けようとしていた─
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狄
何だこれは。
父
父
父
グシャッ!!
狄
母
にげ…る…、の…ょ!!
母
生き、なさいッ……!
ガダンッ!!
狄
何だ、これは?
狄
どうしてこうなったんだ?
狄
俺は何を見ている?──炎を。
なぜ炎を見ている?──燃えてるから。
何が燃えてる?──村、が。
──家が。 ──父さんと、母さんが。
──俺の、顔が。
狄
狄
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⬛︎
──は?
俺らのせいだと??
狄
ふざけんなよ゛ッ!!!
───何処だ、ここ。
俺はこんな所まで逃げてきたのか?
……身体が、重い。
ああ。俺も罹ったのか。
──いっそ、死んだ方が楽かな。
そうすれば、みんなに会えるんだから。
父も、母も、弟も、親友にも……
「お前はッ、……生きろ…ッ!!」
「貴方だけでも……ッ… 生き、なさいッ……!」
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……はは、
死ねないじゃないか。
──もう何日、 ものを喰ってないんだっけ。
身体が痛い。今にも倒れそうだ。
…でも、逃げなきゃ。
──逃げる?
何処に行くというのだ?
誰が俺を助けるというのだ?
所詮、『奴ら』にとっては 化け物なんだろう?
───あぁ、駄目だ。 意識が─────
バタッ
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狄
…ここはどこだ?
あの後俺は確か気を失って… 荒地で倒れちまって、
狄
誰だこいつは? 俺を…助けたのか…?
今ならおれ特製の焦げたチャーハンが食えるぜ!
じゃあお粥にするか!ええとチャーハンに水かけて煮ればいいのかな…?
…なんなんだこの人?
狄
狄
なんで、俺を助けたんだ…?
……さあ、おれも分かんねェ
狄
え?
雨良
狄
医者…なのかこいつ?
雨良
雨良
…いやなんか胡散臭い…
雨良、と名乗った男によるとこうだ。
ここは、海が近い山あいの小さな村で。
俺が連れて来られたのは、 この人の自宅兼診療所だと。
雨良
帰ろうとしたらお前が横たわってんの見つけてマジでビックリしたんだぜ?
狄
雨良
…いや普通そうだろ
雨良
雨良
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俺は少し不安だったが、 今までの事を全部言うことにした。
──明保野村出身のこと。 ──急に『伝染病』が流行りだしたこと。 ──友達が死んだこと。 ──弟が死んだこと。 ──村が政府に燃やされたこと。 ──村民が皆殺されたこと。 ──親が目の前で家屋に潰されたこと。 ──…自分も伝染ったかも知れないこと。
最後のひとつは躊躇ったが、 結局言うことにした。
言ったら彼も俺を気味悪がって追い出すに決まってる。
俺は…自分のせいで優しい人を 傷つけたくない。
雨良さんは最後まで静かに聞いてくれて、 …その後、思いもよらない事を言った。
雨良
狄
雨良
狄
──その質問の意図が読めなかった俺は、 つい本音を言ってしまった。
狄
雨良
雨良
…そういや少年、お前名前は?
狄
雨良
雨良
狄
雨良
じゃあここでいいじゃねェか!
雨良
お前はおれが治してやるからな!
狄
考えたことも、なかった。
拒絶されないどころか、 暖かく迎え入れてくれるなんて。
………でも、
狄
雨良
ちゃんと対策もするし大丈夫だ!
雨良
伝染病でも無さそうだしな
狄
雨良
雨良
お前は黙って俺に治されろ!
…なんだそりゃ。
でも、…何だか気分が軽い。
こんな暖かい気持ちになったのは、 もう何時ぶりだろう。
そしてこの日から、 俺と雨良さん──先生の生活が始まった。
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翔
翔
雨良
全く元気だなァお前らは…
樹
イサクちゃんおっさんなんだし
雨良
陸
おっさんなんだっての!
雨良
雨良
狄
雨良
狄
(先生がやると毎回焦げるし…)
雨良
樹
雨良
陸
俺が先生に拾われてから、 既に3ヶ月が過ぎようとしていた。
先生は毎朝早く起きては、どこかへ 出かけて行き、俺が朝飯を作り終える頃には大量のがらくたを抱えて帰ってくる。
その後、毎日のように、日没まで 近所の子供達──カケル、イツキ、リク と、こうして一緒に遊んでいる。
もちろん診療の仕事もしているが、 それはごく稀のこと。 何せ、この小さい村ではあまり 患者は居ないのだから。
「じゃあ日頃の稼ぎはどうしてるんだ」、 と彼に聞いてみると、 拾ったがらくたを売って生計を 立てているのだと。
全く言って、 そんな医者は見たことがない。
その所為もあってか、この人は この子らに薮医者だと思われている。
…もっとも、この人が 「おれはなんでも治せるスーパーエリートグッドルッキングガイなドクターだ!」 と言ったから、って所か。
ただ、一つ俺が言えるとすれば。 ──この人は、紛れも無く、 天賦の才を持った『医者』だということ。
これは、夜遅くまで俺の『病気』を研究し、誰よりも必死に俺の命を救けようとしている彼を見てきた──俺だからこそ、 言える言葉だと思った。
雨良
狄
狄
雨良
…じゃあおれと一緒だ!
狄
雨良
雨良
お前の『病気』についてだが、
雨良
…『中毒』だ
狄
狄
雨良
──しかも、ドラッグのな
狄
狄
俺の、家族は……友達は、
狄
政府にッ……無意味に…ッ!!?
雨良
あそこは──明保野村は、元から随分きな臭い噂が流れていた。
雨良
…奴らは村で密かに生産したこの劇薬で政府と取引か何かをして、その生産過程で排出された副産物を村民が吸い込んだんだろう
雨良
彼奴らは…恐らくまだ生きてる。
政府の手引きで避難してな
狄
雨良
雨良
…でもお前は生きてる。
だから、おれはお前を治すんだ
狄
狄
雨良
狄
………ごめん、なさい
雨良
おれこそ偉そうなこと言って悪かった
雨良
雨良
狄
雨良
雨良
狄
雨良
せっかくの美少年が台無しになっちまうぜ。
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雨良
雨良
コロンッ
狄
雨良
狄
狄
狄
雨良
狄
…ありがと、俺嬉しいよ
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狄
雨良
雨良
…美しい国だったよ
雨良
世界中の国の、種族の人が住んでいてな!
…平和で幸せな国だった。
狄
雨良
雨良
…というより、この世界をユートピアにしたい、の方が妥当かな
雨良
ミレナリアは正に『ユートピア』…そのものだったんだ
雨良
雨良
ミレナリアはもう存在しないけど、
雨良
狄
狄
それを聞くと、 彼は嬉しそうに顔を弛めた。
…俺も、本気で思ってたんだ。 あんな幸せが、何時までも続くんだって。
でも今は、もう大丈夫。 俺には、先生が居るのだから。
──彼の笑顔が、飲みかけのチョコレートモヒートの中に揺らいでいた。
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雨良
今日は朝から先生が騒いでいた。
何かと聞けば、俺の身体から ドラッグの毒素を抜き取る方法が 見つかったらしい。
…この人は本当にすごい医者だ。 だって、思い描いていた未来を、 本当に成し遂げることができるんだから。
俺も嬉しかった。 あぁ、これで先生とこのままずっと、 幸せに生きて行けるんだなって。
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雨良
狄
雨良
雨良
そう言う彼は、心底嬉しそうな顔をして、 少し涙目になっていた。
そうか。治ったんだ。 もうこの先いつ来るか分からない 発症の恐怖に怯えなくていいんだ。 これからも先生と生きられるんだ!
狄
俺、先生のこと大好き!
雨良
雨良
おれも、愛してるぜお前のこと!!
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え?
狄
雨良
怪我しただけだ!
狄
雨良
雨良
お前は将来何したい?
狄
狄
俺は先生とこのまま一緒にいたい。
狄
──俺は、先生の夢を叶えたい
雨良
狄
…この世界を『ユートピア』にしたいって
狄
俺は創りたいかな。
雨良
雨良
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だから、神様。
もう俺は何も望まないから…
お願いだから、彼を
俺から奪わないで───
狄
……しくじった。
にしても、まさかこいつの目の前で 倒れちまうなんてな……
狄
ッ……バレちまったか。
これが怖くておれは、 なるべく包帯で「隠 し て」、 こいつに見られないようにしたのに。
──身体中を這う、黒っぽい斑模様。 ──『中毒』の症状。
…自分で試していた。 治験を、自分の身体で行っていた。 全ては、こいつを治すため。
…そうさ。 「お前『は』まだ生きられる」。
…おれは… 毒素を過度摂取しちまったみてェだ。
狄
雨良
雨良
狄
雨良
おれが好きでやったことだ、気にすんな
ああ、こいつには悪いことしたな。
でもおれはこいつを治せたんだから、 後悔なんてしないさ。
でもまあ……寂しくなるな。
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──そして『その日』は、 誰もが思わなかった事態によって、 …突如、迎えることになった。
…世の中とは、 こうも理不尽だというのか。
次から次へと… まるで世界がおれ達の存在を 拒んでいるかのように。
──なァ。神とやらは、 そんなに『バッドエンド』が観たいのか?
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この日、 何の変哲も無い日常は、 泥だらけの"軍靴"で、 …意図も簡単に踏み躙られた。
雨良
いいか、この中に入るんだ
狄
雨良
彼奴らの狙いはお前だからな
狄
雨良
…なァに、心配要らねェよ
狄
雨良
…行って来い、狄
狄の奴は、苦虫を噛み潰したような 顔をして、地下に消えていった。
……ああ、そうだ。これでいい。
さあ、いっちょ暴れてやるか。
政府軍兵士A
政府軍兵士A
8年振りだな、『C-139』
雨良
今更そう呼ばれる筋合いはねェよ。
雨良
政府軍兵士B
政府軍兵士B
"菖蒲狄"はどこにいる?
雨良
…へえ、あいつそんな苗字だったんだな
雨良
無駄足だったな。ご苦労様
政府軍兵士A
政府軍兵士B
お前…自分が何をしているのか分かっているのか?
雨良
おれは自分勝手なもんでね
政府軍兵士A
…力づくで吐かせるまで
雨良
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おれは、重い身体を引き摺っても尚、 残された力で奴らに抗った。
…なんの皮肉か、 奴らに教わった体術で、 兵士を数人薙ぎ倒せた。
しかしまあ、運命とは残酷なもので。
毒漬けにされて狂いきってた臓器を持った身体では、到底奴らに敵うはずも無く。
──瞬く間に、 おれの身体はその場に崩れ落ちた。
政府軍兵士B
政府軍兵士B
…であれば命までは取らない。
雨良
おれが…ッ、大人しく投降するとでも…思ってんのか?
政府軍兵士B
政府軍兵士B
もう永くは持た無いだろう
政府軍兵士B
死んでくれ
雨良
おれは、…アンタらには殺されねェさ
……ああ、ここ迄か。
狄には、本当に申し訳ねェ事したな。 何せ、上の音は地下には筒抜けだ。
…だがな、狄。 おれはお前のせいでは死なねェよ。
お前がこの先の人生、 ずっとおれに縛られるなんてのは 本望なんかじゃねェ。
だから、おれは 『病気』にもコイツらにも、 殺されやしねェよ。
血が眼に滲んでぼやけた視界。 その視線の先に、 ──倒れた医療用具棚の傍らに、 メスが1本、そこに落ちていた。
雨良
雨良
それはおれが勝手に決めたことだ。
呉々も、自分の事を恨まないでくれ
雨良
雨良
少しでも、この楽しかった時間を思い出して貰えるのなら、おれは十分だ!
雨良
…楽しみにしてるぜ!
雨良
悪くない人生、と言いたいところだが、 お世辞にもそうは言えそうにない。
ああ、クソッタレな人生だった。 でも…悔いはねェさ。 おれの愛し子が生きてるんだからな!
──そして、 そう言い遺したおれは 地面のメスを拾い、 ───自らの頸動脈を切り裂いた。
政府軍兵士A
政府軍兵士B
政府軍兵士B
ドガッ!!
政府軍兵士A
ここでも情報は獲られなかったからな
政府軍兵士B
………行ったか…?
遠ざかっていく足音を聴き分け、 俺は漸く少しだけ安堵した。
早く出よう。…そう思ったが、 身体は言うことを全然聞いてくれない。
目から絶え間無く零れる無数の雫に、 火傷で引き攣った頬が濡らされてゆく。
──今日俺はまた、大好きな人を失った。
しばらく地下倉庫に閉じ籠って 咽び泣いた後、ようやく俺は外へ出た。
途端に視界に入る、 倒れた机、椅子、棚。割れた窓。 おびただしい量の血痕。
それらに囲まれるように、 『彼』が、いる。
そばに寄る。名前を呼んでみる。 …そんな事をしても、彼が戻らない事は 分かりきっているのに。
頭から血を流し、 腹をナイフで抉られ、 左肩は銃弾に貫かれている。 おまけに、黒い斑点を上書きするように、斜めに大きく切り裂かれた首元から 鮮血が滴っている。
そして、艶を失った彼の髪に ブーツの靴底の跡が付いているのを見て、──俺の中で何かが切れた。
望むところだ。 どうせ死ねないなら、俺は生きてやる。
生きて。 ───おめェ等全員ぶっ殺してやるから。
俺はその日の内に、村を出る事にした。
先生の亡骸は、村の駐在さんに頼んで 診療所の傍に埋めてもらった。
…何処に行けばいいのかなんて、 分かりゃしないけれど。
それでも、俺には 果たすべき役目ができたのだから。
…なあ先生、寂しいよ。
でも俺、頑張って生きるよ。 アンタがくれた命、抱えて生きていくよ。
だから、もう少しだけ待っててくれ。 絶対アンタの夢、叶えてみせるからな。
…そのためにも俺は、 アンタの仇、取ってやるから。
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真
それで、お前はここ迄来たと?
狄
狄
狄
…許す訳にはいかないんだ。
真
真
狄
真
マフィア物語-another- 「もうひとりの狄」 及び マフィア物語2 「序章」 完
-to be continued-
牛タンつくね
牛タンつくね
牛タンつくね
1番悲しくなってます……
牛タンつくね
是非華さんのほうで続編:
「マフィア物語-血濡れた絆、千年の契り-」
をお読みください!!
牛タンつくね
狄くんの幸運をお祈りします……。