TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

⚠︎︎本作は、華さん著の「マフィア物語 海外編(プロローグ)」を先ずお読みになってからの閲覧を推奨いたします。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

牛タンつくね

みんなーーー!!
初めまして、或いはお久しぶりです!!

牛タンつくね

人心皆無がモットー、
牛タンつくねです!

牛タンつくね

始めにも告知した通り、
本作は【マフィア物語】シリーズの新章の "序章"となっております!

牛タンつくね

華さんのほうから飛んで来た方…もうお分かりになっていらっしゃると思いますが、決して明るい話にはならないと思われます()

牛タンつくね

「鋼メンタルだから問題ない!」
「心をやられても大丈夫!」
という方はぜひ最後までお付き合いいただけると幸いですm(_ _)m

牛タンつくね

あと、流血等のグロ・残酷描写注意です⚠️‼️
結構長いお話になりますので、それも含めて何卒よろしくお願いします!!

牛タンつくね

それではどうぞ行ってらっしゃーい!

これは、 『彼女』の三つ目の結末によって拓かれた 彼の『もうひとつの』物語

もしもあの時、 彼が村に『残っていたら』。

もしも彼も、 『病気』を発症していたら。

もしも逃げた先で、 ───『あの人』に出逢っていたら。

─違った世界で時が巻き戻った今、 彼の物語が再び幕を開けようとしていた─

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

───────は、

何だこれは。

………げ…ッ、

に゛…げろ…ッ狄……ッ!

お前はッ、……生きろ…ッ!!

グシャッ!!

………………とぅさ、?

はゃ、く………ッ
にげ…る…、の…ょ!!

貴方だけでも……ッ…
生き、なさいッ……!

ガダンッ!!

!!かぁ、さ

何だ、これは?

ぁッ…………………………………ッ

どうしてこうなったんだ?

はぁッ……はあッ……あぁあ゛ッ………ッ

俺は何を見ている?──炎を。

なぜ炎を見ている?──燃えてるから。

何が燃えてる?──村、が。

──家が。 ──父さんと、母さんが。

──俺の、顔が。

あッ……、ぁぁ、ッ

うわ゛ぁあああぁぁあ゛あぁぁああぁぁぁ゛っっっ゛!!!!!!!!!!!!!!!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

⬛︎

「   」

──は?

俺らのせいだと??

………ざけんな…ッ、

ふざけんなよ゛ッ!!!

───何処だ、ここ。

俺はこんな所まで逃げてきたのか?

……身体が、重い。

ああ。俺も罹ったのか。

──いっそ、死んだ方が楽かな。

そうすれば、みんなに会えるんだから。

父も、母も、弟も、親友にも……

「お前はッ、……生きろ…ッ!!」

「貴方だけでも……ッ… 生き、なさいッ……!」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

……はは、

死ねないじゃないか。

──もう何日、 ものを喰ってないんだっけ。

身体が痛い。今にも倒れそうだ。

…でも、逃げなきゃ。

──逃げる?

何処に行くというのだ?

誰が俺を助けるというのだ?

所詮、『奴ら』にとっては 化け物なんだろう?

───あぁ、駄目だ。 意識が─────

バタッ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

───!

…ここはどこだ?

あの後俺は確か気を失って… 荒地で倒れちまって、

お、やっと起きたか?

……………ぁ

ああ無理に喋らなくていいぜ、だいぶ衰弱してたからな。

誰だこいつは? 俺を…助けたのか…?

そうだ腹減ったろ?
今ならおれ特製の焦げたチャーハンが食えるぜ!

あーいやでもまだ重いかなー……。
じゃあお粥にするか!ええとチャーハンに水かけて煮ればいいのかな…?

…なんなんだこの人?

……………なぁ、

!…おう?

あんた………、
なんで、俺を助けたんだ…?

…なんでか?
……さあ、おれも分かんねェ

…は

え?

おっと、自己紹介がまだだったな!

雨良

おれは雨良!医者だ!

……ぇ、

医者…なのかこいつ?

雨良

あ、その顔ーお前信じてないだろ!

雨良

おれはなあ、なんでも治せるこの国で一番の名医なんだぜ?

…いやなんか胡散臭い…

雨良、と名乗った男によるとこうだ。

ここは、海が近い山あいの小さな村で。

俺が連れて来られたのは、 この人の自宅兼診療所だと。

雨良

あそこの近くのゴミ捨て場に用があってな。
帰ろうとしたらお前が横たわってんの見つけてマジでビックリしたんだぜ?

なんでゴミ捨て場………

雨良

あぁ、あそこのがらくたはいい資材が揃ってるからな……ってそこかよ!?

…いや普通そうだろ

雨良

まあそれはともかくだな!…

雨良

……何があったか聞かせてもらえるか?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

俺は少し不安だったが、 今までの事を全部言うことにした。

──明保野村出身のこと。 ──急に『伝染病』が流行りだしたこと。 ──友達が死んだこと。 ──弟が死んだこと。 ──村が政府に燃やされたこと。 ──村民が皆殺されたこと。 ──親が目の前で家屋に潰されたこと。 ──…自分も伝染ったかも知れないこと。

最後のひとつは躊躇ったが、 結局言うことにした。

言ったら彼も俺を気味悪がって追い出すに決まってる。

俺は…自分のせいで優しい人を 傷つけたくない。

雨良さんは最後まで静かに聞いてくれて、 …その後、思いもよらない事を言った。

雨良

……そっか。お前も辛かったんだな

!!………え…?

雨良

なあ……『政府』、嫌いか?

…………!

──その質問の意図が読めなかった俺は、 つい本音を言ってしまった。

…………うん、大嫌い

雨良

…そっか、そうだよな

雨良

…っとまあ辛気臭い話はここまでだな!
…そういや少年、お前名前は?

……狄

雨良

へえ、狄か!カッコイイ名前だな!

雨良

じゃあ──狄、これからよろしくな!

ぇ、…いや、だって俺は……

雨良

行くとこないんだろ?
じゃあここでいいじゃねェか!

雨良

それに狄。この世に治らない病気なんかないんだ!
お前はおれが治してやるからな!

───!

考えたことも、なかった。

拒絶されないどころか、 暖かく迎え入れてくれるなんて。

………でも、

──でもそれじゃああんたが、

雨良

…安心しろ、おれ病気には結構強いんだぜ!
ちゃんと対策もするし大丈夫だ!

雨良

──……それに見たところ、
伝染病でも無さそうだしな

………ぇ?

雨良

…いや、こっちの話だ

雨良

いいか狄。何も心配に思うことはないんだ!
お前は黙って俺に治されろ!

…なんだそりゃ。

でも、…何だか気分が軽い。

こんな暖かい気持ちになったのは、 もう何時ぶりだろう。

そしてこの日から、 俺と雨良さん──先生の生活が始まった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

はいタッチ!

もーイサクちゃんおそいー!

雨良

ははっ、すまんすまん!
全く元気だなァお前らは…

しょうがねーじゃん、
イサクちゃんおっさんなんだし

雨良

オッサ……ちょそれは酷くないか??これでもまだ28なんだぞー!

いや、アラサーは十分
おっさんなんだっての!

雨良

ヴッ………刺サッター………

雨良

狄!お前やらないのか?楽しいぞ!

ううん、俺は良いよ、先生

雨良

…おう!じゃあ後で昼飯作ってやるからな!

あー…、いや、俺自分で作るよ
(先生がやると毎回焦げるし…)

雨良

そ、そうか?…分かった…

ほらイサクちゃんが鬼だからはーやーく!

雨良

ああ!よォし、全員捕まえてやるからなガキども!!

いや代わり鬼なんだって…

俺が先生に拾われてから、 既に3ヶ月が過ぎようとしていた。

先生は毎朝早く起きては、どこかへ 出かけて行き、俺が朝飯を作り終える頃には大量のがらくたを抱えて帰ってくる。

その後、毎日のように、日没まで 近所の子供達──カケル、イツキ、リク と、こうして一緒に遊んでいる。

もちろん診療の仕事もしているが、 それはごく稀のこと。 何せ、この小さい村ではあまり 患者は居ないのだから。

「じゃあ日頃の稼ぎはどうしてるんだ」、 と彼に聞いてみると、 拾ったがらくたを売って生計を 立てているのだと。

全く言って、 そんな医者は見たことがない。

その所為もあってか、この人は この子らに薮医者だと思われている。

…もっとも、この人が 「おれはなんでも治せるスーパーエリートグッドルッキングガイなドクターだ!」 と言ったから、って所か。

ただ、一つ俺が言えるとすれば。 ──この人は、紛れも無く、 天賦の才を持った『医者』だということ。

これは、夜遅くまで俺の『病気』を研究し、誰よりも必死に俺の命を救けようとしている彼を見てきた──俺だからこそ、 言える言葉だと思った。

雨良

なあ狄、お前って何型だ?

え、…急に…?

その…A型、だけど

雨良

Aなんだな!
…じゃあおれと一緒だ!

……え、どういう事?

雨良

いや、知りたかっただけだ!

雨良

──時に狄、
お前の『病気』についてだが、

雨良

結論から言うと、あれは「病気」なんかじゃない。
…『中毒』だ

!?

中、毒……?

雨良

ああ。
──しかも、ドラッグのな

ぇっ、……

……て、ことは、
俺の、家族は……友達は、

みんな………っ
政府にッ……無意味に…ッ!!?

雨良

……大方、あの村の権力者が原因だろうな。
あそこは──明保野村は、元から随分きな臭い噂が流れていた。

雨良

お前の血液を採取して分かった。
…奴らは村で密かに生産したこの劇薬で政府と取引か何かをして、その生産過程で排出された副産物を村民が吸い込んだんだろう

雨良

この推測が正解ならば、
彼奴らは…恐らくまだ生きてる。
政府の手引きで避難してな

そ、んなの……っ

雨良

……狄

雨良

お前にとって、これがどれほど辛いかは痛い程分かるさ。
…でもお前は生きてる。
だから、おれはお前を治すんだ

………何が分かる、だ

あんたには…ッ、この苦しさなんざ…到底分かるはずがないんだよッ!!

雨良

───!

っ!!
………ごめん、なさい

雨良

……いや、良いんだ。
おれこそ偉そうなこと言って悪かった

雨良

…あのな、

雨良

おれの故郷も、滅びたんだ

!!!

雨良

国内で…内戦?が起きてな

雨良

…でももうそんなのは良いさ。おれはこの村を、こんな生活が好きなんだ

………ごめん、先生、…俺…ッ

雨良

ハハ…そんな顔するなよ、
せっかくの美少年が台無しになっちまうぜ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

雨良

狄!16歳の誕生日おめでとう!

雨良

──これ、お前にプレゼントだ!

コロンッ

………ピアス?

雨良

ああ!お前に似合いそうなやつ捜したんだ

いや俺子供……、まぁいっか

ありがと、先生

…どう?似合う?

雨良

おー似合うぜ!お前の美顔によく映えるな!

またそうやって…
…ありがと、俺嬉しいよ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

なぁ、先生の故郷ってどんな所だったんだ?

雨良

…んぇ?おれの故郷か?

雨良

そーだなァ〜、
…美しい国だったよ

雨良

『ミレナリア』…っていう所だけどさ。
世界中の国の、種族の人が住んでいてな!
…平和で幸せな国だった。

へぇ、…そんな国があったんだね

雨良

──おれな、夢があるんだ

雨良

『ユートピア』を創りたいんだ。
…というより、この世界をユートピアにしたい、の方が妥当かな

雨良

あん時のおれにとって、
ミレナリアは正に『ユートピア』…そのものだったんだ

雨良

だから、「世界中がこの国みたいになればいいのにな」なんて、本気で思ってたりしてたんだよ。

雨良

…でもまあ、過去は過去。
ミレナリアはもう存在しないけど、

雨良

狄。おれはお前が生きていてくれるだけで、幸せだ!

……せんせい、

…俺も、先生と暮らせて幸せだよ

それを聞くと、 彼は嬉しそうに顔を弛めた。

…俺も、本気で思ってたんだ。 あんな幸せが、何時までも続くんだって。

でも今は、もう大丈夫。 俺には、先生が居るのだから。

──彼の笑顔が、飲みかけのチョコレートモヒートの中に揺らいでいた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

雨良

狄~~~~~~~!!

今日は朝から先生が騒いでいた。

何かと聞けば、俺の身体から ドラッグの毒素を抜き取る方法が 見つかったらしい。

…この人は本当にすごい医者だ。 だって、思い描いていた未来を、 本当に成し遂げることができるんだから。

俺も嬉しかった。 あぁ、これで先生とこのままずっと、 幸せに生きて行けるんだなって。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

雨良

──よし、これで、もう大丈夫だ!

!…本当に?

雨良

ああ!この天才ドクター様の言うことは間違いない!

雨良

狄…!お前はもっと生きれるんだよ!

そう言う彼は、心底嬉しそうな顔をして、 少し涙目になっていた。

そうか。治ったんだ。 もうこの先いつ来るか分からない 発症の恐怖に怯えなくていいんだ。 これからも先生と生きられるんだ!

…うん!…先生、
俺、先生のこと大好き!

雨良

!!

雨良

狄……!!
おれも、愛してるぜお前のこと!!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

え?

──先生、最近また包帯増えたよね?

雨良

あー、すまんな心配かけて!
怪我しただけだ!

もう…気をつけなよ先生、

雨良

あはは、もちろんだ!

雨良

──なあ狄、
お前は将来何したい?

………将来、か…

……別に、何もしたくないよ。
俺は先生とこのまま一緒にいたい。

……でもまあ強いて言えば、
──俺は、先生の夢を叶えたい

雨良

言ってくれたろ?
…この世界を『ユートピア』にしたいって

誰も悲しまない幸せな世界を、
俺は創りたいかな。

雨良

…狄

雨良

…ありがとな。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

だから、神様。

もう俺は何も望まないから…

お願いだから、彼を

俺から奪わないで───

─────先生?

……しくじった。

にしても、まさかこいつの目の前で 倒れちまうなんてな……

せん、せ、…それ、って

ッ……バレちまったか。

これが怖くておれは、 なるべく包帯で「隠 し て」、 こいつに見られないようにしたのに。

──身体中を這う、黒っぽい斑模様。 ──『中毒』の症状。

…自分で試していた。 治験を、自分の身体で行っていた。 全ては、こいつを治すため。

…そうさ。 「お前『は』まだ生きられる」。

…おれは… 毒素を過度摂取しちまったみてェだ。

先生……ッ……やだ……ッ

雨良

……はは、そんな顔すんなって

雨良

おれは、…後悔なんざしてねェよ

でもッ……!俺のせいで…ッ!

雨良

そんな訳無いだろ…
おれが好きでやったことだ、気にすんな

ああ、こいつには悪いことしたな。

でもおれはこいつを治せたんだから、 後悔なんてしないさ。

でもまあ……寂しくなるな。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

──そして『その日』は、 誰もが思わなかった事態によって、 …突如、迎えることになった。

…世の中とは、 こうも理不尽だというのか。

次から次へと… まるで世界がおれ達の存在を 拒んでいるかのように。

──なァ。神とやらは、 そんなに『バッドエンド』が観たいのか?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

この日、 何の変哲も無い日常は、 泥だらけの"軍靴"で、 …意図も簡単に踏み躙られた。

雨良

…狄。
いいか、この中に入るんだ

…!…地下室?

雨良

ああ、そうだ。
彼奴らの狙いはお前だからな

えっ……、でも、先生は…

雨良

おれは…外で上手くやり過ごす。
…なァに、心配要らねェよ

……先生ッ…

雨良

分かってるさ。
…行って来い、狄

狄の奴は、苦虫を噛み潰したような 顔をして、地下に消えていった。

……ああ、そうだ。これでいい。

さあ、いっちょ暴れてやるか。

政府軍兵士A

…………チッ

政府軍兵士A

誰かと思えば……
8年振りだな、『C-139』

雨良

はっ……、
今更そう呼ばれる筋合いはねェよ。

雨良

で、…政府様が何の用だ?

政府軍兵士B

とぼけるな。標的が此処に居ることは既に特定出来ているのだぞ

政府軍兵士B

一度だけ聞く。
"菖蒲狄"はどこにいる?

雨良

"アヤメシュウ"?
…へえ、あいつそんな苗字だったんだな

雨良

狄なら…もう逃がした。
無駄足だったな。ご苦労様

政府軍兵士A

…ッ!?テメェ…舐めやがって…

政府軍兵士B

おい"雨良一朔"…、
お前…自分が何をしているのか分かっているのか?

雨良

あー分かんねェ。
おれは自分勝手なもんでね

政府軍兵士A

…もういい。言わぬのなら、
…力づくで吐かせるまで

雨良

…全く、短気な野郎どもだぜ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

おれは、重い身体を引き摺っても尚、 残された力で奴らに抗った。

…なんの皮肉か、 奴らに教わった体術で、 兵士を数人薙ぎ倒せた。

しかしまあ、運命とは残酷なもので。

毒漬けにされて狂いきってた臓器を持った身体では、到底奴らに敵うはずも無く。

──瞬く間に、 おれの身体はその場に崩れ落ちた。

政府軍兵士B

…終わりだ、雨良一朔

政府軍兵士B

今すぐに菖蒲狄の居場所を教えろ。
…であれば命までは取らない。

雨良

……ッ、ハハッ
おれが…ッ、大人しく投降するとでも…思ってんのか?

政府軍兵士B

……本当にお前は馬鹿だな。

政府軍兵士B

その傷と、その症状……
もう永くは持た無いだろう

政府軍兵士B

何も吐かないならば、お前にもう用は無い。
死んでくれ

雨良

…はッ……まァ待てよ…、
おれは、…アンタらには殺されねェさ

……ああ、ここ迄か。

狄には、本当に申し訳ねェ事したな。 何せ、上の音は地下には筒抜けだ。

…だがな、狄。 おれはお前のせいでは死なねェよ。

お前がこの先の人生、 ずっとおれに縛られるなんてのは 本望なんかじゃねェ。

だから、おれは 『病気』にもコイツらにも、 殺されやしねェよ。

血が眼に滲んでぼやけた視界。 その視線の先に、 ──倒れた医療用具棚の傍らに、 メスが1本、そこに落ちていた。

雨良

………ごめんな、狄

雨良

おれはここで死ぬけど……、
それはおれが勝手に決めたことだ。
呉々も、自分の事を恨まないでくれ

雨良

おれは…お前の親代わりになんてなれないし、心に負った傷も治せやしねェ

雨良

それでも…、今後お前が生きていく中で、
少しでも、この楽しかった時間を思い出して貰えるのなら、おれは十分だ!

雨良

…おれの夢、叶えてくれよ!
…楽しみにしてるぜ!

雨良

………幸せになるんだぞ。

悪くない人生、と言いたいところだが、 お世辞にもそうは言えそうにない。

ああ、クソッタレな人生だった。 でも…悔いはねェさ。 おれの愛し子が生きてるんだからな!

──そして、 そう言い遺したおれは 地面のメスを拾い、 ───自らの頸動脈を切り裂いた。

政府軍兵士A

……雨良一朔、凄まじい最期だったな

政府軍兵士B

チッ…これだから偽善者は…

政府軍兵士B

"死ぬべき"子供1人守って犬死になんざ…くだらねぇ正義だッ

ドガッ!!

政府軍兵士A

………戻るぞ。
ここでも情報は獲られなかったからな

政府軍兵士B

……ああ。分かってる

………行ったか…?

遠ざかっていく足音を聴き分け、 俺は漸く少しだけ安堵した。

早く出よう。…そう思ったが、 身体は言うことを全然聞いてくれない。

目から絶え間無く零れる無数の雫に、 火傷で引き攣った頬が濡らされてゆく。

──今日俺はまた、大好きな人を失った。

しばらく地下倉庫に閉じ籠って 咽び泣いた後、ようやく俺は外へ出た。

途端に視界に入る、 倒れた机、椅子、棚。割れた窓。 おびただしい量の血痕。

それらに囲まれるように、 『彼』が、いる。

そばに寄る。名前を呼んでみる。 …そんな事をしても、彼が戻らない事は 分かりきっているのに。

頭から血を流し、 腹をナイフで抉られ、 左肩は銃弾に貫かれている。 おまけに、黒い斑点を上書きするように、斜めに大きく切り裂かれた首元から 鮮血が滴っている。

そして、艶を失った彼の髪に ブーツの靴底の跡が付いているのを見て、──俺の中で何かが切れた。

望むところだ。 どうせ死ねないなら、俺は生きてやる。

生きて。 ───おめェ等全員ぶっ殺してやるから。

俺はその日の内に、村を出る事にした。

先生の亡骸は、村の駐在さんに頼んで 診療所の傍に埋めてもらった。

…何処に行けばいいのかなんて、 分かりゃしないけれど。

それでも、俺には 果たすべき役目ができたのだから。

…なあ先生、寂しいよ。

でも俺、頑張って生きるよ。 アンタがくれた命、抱えて生きていくよ。

だから、もう少しだけ待っててくれ。 絶対アンタの夢、叶えてみせるからな。

…そのためにも俺は、 アンタの仇、取ってやるから。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

…ふーん。
それで、お前はここ迄来たと?

……はい

俺は…政府に復讐したい。

俺の家族を、恩人を殺した政府を
…許す訳にはいかないんだ。

……そ、勝手にしな

…お前、何ていうの?

……『菖蒲狄』

ハハッ……歓迎するよ、狄

マフィア物語-another- 「もうひとりの狄」 及び マフィア物語2 「序章」 完

-to be continued-

牛タンつくね

お疲れ様でした~~~!!

牛タンつくね

うん、辛い゛ッ!!!!(号泣)

牛タンつくね

はい…まさかの書いてる人が
1番悲しくなってます……

牛タンつくね

今後狄はどうなるのか…どんな出会いが有るのかは、
是非華さんのほうで続編:
「マフィア物語-血濡れた絆、千年の契り-」
をお読みください!!

牛タンつくね

それではまた何処かで!
狄くんの幸運をお祈りします……。

この作品はいかがでしたか?

3,139

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚