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時間のない恋

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時間のない恋

8 - 時間のない恋

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25

2021年11月13日

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続き〜

〜その30分前〜

僕は銃を持ち込むにあたって、無条さんに一つだけ訊いておきたいことがあった。

武台裏にいた僕たちは声を抑えながら話した。

円世

今回の僕たちのOEsの井口って、

円世

どんな人なの……?

無条さん

多分、

無条さん

けっこう手強いと思うだの。

無条さん

だって、

無条さん

前回の『試』では、第4位という結果を残しているし。

円世

そのときはどんな手法をつかってきたの……?

無条さん

それは、思い出すだけでゾッとするようなものだったの。

無条さん

いつも井口君……グッチーのOEsは、

無条さん

致命傷にはなっていないものの、

無条さん

大きな傷を受けて、ときには病院送りになっているくらいなんだの。

円世

で、具体的には……?

無条さん

あぁ、そうそう、

無条さん

自分のEOsを殺傷寸前の状態まで傷つけるために、

無条さん

改造して威力を弱くしたアサルトライフルに、

無条さん

自作の仮弾を装填して武台に上がってくる。

無条さん

それがグッチーが使う非人道的な手法なんだの。

円世

なんか、ダサイね……。

無条さん

う〜ん、

無条さん

でも、

無条さん

彼は彼なりに昇格するための手段を選んでいるんだと思うんだの。

円世

ほんとにそうかな……?

僕がそう呟くと、彼女は不思議そうな顔で僕の顔を見つめてきた。

無条さん

なんでそう思うんだの?

円世

だって、

円世

もし本当に昇格するのが目的なら、

円世

必要最低限の道具で、

円世

短時間かつHPが100%の状態で勝利しようとしてくるはずじゃない……?

無条さん

まぁ、

無条さん

確かにそうだけど。

円世

ってことで、

円世

僕はこのハンドガン1つで闘うよ……

無条さん

そのハンドガンにはまさか実弾なんて入ってないんだの?

円世

うん、

円世

入ってないよ、

円世

ただ一つ……

無条さん

りょーかいっ!

無条さん

もうすぐ私達の試合が始まるんだの。

 僕の言葉は、肝心なところで遮られてしまった。

そして数分後、第二試合の終了を伝えるホイッスルが鳴った。

西野

……、

西野

……。

静寂が訪れた。

彼……西野はたった今、俺に銃口を向けたそのハンドガンのトリガーを躊躇なく引いた。

にも関わらず、銃声は響かなかった。

西野

なっ……⁈

西野を含む、俺以外のこの教室にいる者の中で、

誰一人としてこの状況を理解できる者はいなかった。

西野

一体どういうことだ⁈

西野

なぜ弾が発射されない⁈

彼の率直な疑問に、俺はストレートに答える。

円世

そりゃ当たり前だろ?

円世

だって、弾が入っていないんだから。

西野

は?

西野

でもお前、さっき地面に向かって一発撃っただろ⁈

円世

あぁ、『一発だけ』な。

西野

なに⁈

西野

ってことはまさか……!

円世

そう。

円世

最初から『一発だけ』しか弾が入っていなかったんだよ

西野

ァ……、

西野

ァ……、

西野

あァ……

西野は俺の完璧なカラクリに声を失い、平常心を失っていた。

それが意味するのは……

無条さん

あっ!

無条さん

西野君のHPが0%になってるだの!

無条さん

ってことは……

〝ピッピッピ———〟

ホイッスルと共に第三試合が終了した。

のと同時に、観闘席から大きな歓声が巻き起こった。

クラスメイト

ウォォォォ———!

クラスメイト

コイツはバケモノだ!

クラスメイト

たったの5分で決着しやがったぞ!

クラスメイト

えげつないヤツが入ってきたぁ!

クラスメイト

今学期のダークホースだ!

といった意外な声が飛び交う中で俺は一つ、大きな心呼吸をした。

僕がそれを終えた頃に無条さんは僕に駆け寄ってきた……

と思ったら、その勢いのまま僕に抱きついてきた。

無条さん

あっという間に勝っちゃったね。

円世

まぁ、

円世

多少危なかったところもあったけどね……。

無条さん

うん。

無条さん

ホントに危なっかたんだの。

無条さん

グッチーが弾を入れていなかったからよかったものの、

無条さん

もし本当に弾が入っていたら……

円世

それはないよ。

無条さん

えっ?

僕の見た目に合わない、はっきりとした口調に目を丸くする無条さん。

僕はそのまま言葉を続けた。

円世

だって、

円世

試合が始まってからすぐに、

円世

グッチーの銃に弾は入っていないということに気づいたからね。

無条さん

なんでだの?

円世

僕、開始のホイッスルが鳴るとすぐにハンドガンを捨てて、

円世

グッチーの懐に走り込んだでしょ?

無条さん

うん。

円世

で、

円世

僕が彼の銃口に額をつけたときに、

円世

トリガーを引きかけた彼は顔色一つ変えなかったんだ。

円世

「殺傷してはいけない」のだから、

円世

あの状況だと普通は焦るでしょ。

円世

トリガーを引きかけたんだから。

円世

そこで僕は、グッチーは弾を入れていないということに気付いたんだ。

ここまで僕が説明しても、やはり無条さんは腑に落ちない、といった表情をしていた。

無条さん

う〜ん。

無条さん

にしても、

無条さん

なんで今日に限ってグッチーは弾を入れていなかったんだろ?

円世

それはきっと、

円世

僕の「見た目」に騙された体と思うよ。

無条さん

うん。

無条さん

多分そうだの。

無条さん

私も光地之君の闘いっぷりにビックリしたんだの。

無条さん

カッコよすぎだの。

彼女はやはり無自覚のうちに他人を惹きつけてしまうようだ。

僕もその例外の一人ではなかった。

円世

転入三日目にしてはなかなかスゴイでしょ。

無条さん

転……、

無条さん

あ、うん。

無条さん

そだね。

彼女の口調に少し違和感を覚えたが気にしないフリをした。

そして一通り話し終えると、二人で観闘席へ戻り、残りの試合を観ることにした。

この日から、僕の存在と実力はCクラスだけに留まらず、全クラスへの波紋となる。

ばれなかった。

続く。

この作品はいかがでしたか?

25

コメント

2

ユーザー

ありがとございます!

ユーザー

円世くんがだんだん無条さんのこと好きになっていきますね!! 続きが楽しみです!!

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