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桜
楡井
桜の声は静かだが、どこか興味深げだ
楡井の手に、微かに光を帯びた羽根がふわりと舞い込む
羽根が光を放つと、教室の床が水面のように揺れ、机や椅子の影が柔らかく波打った
窓の外の街並みも次第に変化し、街灯は星のように瞬き、建物の壁には淡い模様が浮かび上がる
桜
楡井
楡井
二人は息をのんで、目の前の景色を見つめた
光の波紋は歩道にまで広がり、道路や建物も柔らかな光に包まれる
空気には羽根の香りのような甘さが漂い、胸の奥に眠っていた切なさと、ほのかな希望が交錯した
街の中心に、白鳥の影が静かに現れる
その羽ばたきが光の波紋を揺らし、街全体に柔らかい色彩が広がる
過去の迷いや痛みは、波紋の中に吸い込まれていくようだった
羽根は舞い続け、街は現実と夢が溶け合ったような色彩に満たされていく
光の粒が空気を漂い、道路も建物も、まるで絵の具で描かれたかのように柔らかく輝く
楡井の足音も、静かに広がる光に溶け込み、時間はゆっくりと止まったように感じられる
桜
楡井
白鳥の影と羽根の光が、街の隅々まで静かに流れ続ける
―ここから先は、誰にも見えない物語
光の波紋も白鳥の影も、想像の中でまだ続いている
あとがき
ここまで読んでくださって、ありがとうございます
今回の物語は「Secret Story of the Swan」というタイトルから広げて、“羽根が導くもうひとつの世界”をテーマにしました
正直、最初は「羽根を拾うだけで街が変わるってどうなんだろう?」と思いつつ書き進めたんですが、逆にその“些細なきっかけ”だからこそ不気味で、同時にロマンがある気がしてこの形になりました
結末をあえて描き切らなかったのは、読者の皆様に想像してもらいたいからです
街はどうなるのか、白鳥の羽根は何を意味していたのか、考察とか感想を自由に書いてもらえたら、私としてはめちゃくちゃ嬉しいです。
「童話」って、実在しないのに心の中では確かに存在している…そういう曖昧さが魅力だと思っています
だからこの作品も“幻想日記の一編”みたいな気持ちで読んでもらえたらいいな、と
もし楽しんでもらえたなら、また別の童話も一緒に旅してもらえたら嬉しいです