夏は長かった割に 呆気なく幕を閉じ、
秋がやってきた。
まだ慣れない寒さに 腕をさする。
宮治
おはよ、楠木さん
楠木秋巴
おはよう宮くん
と教室では軽く 朝の挨拶を交わし、
宮治
秋巴ちゃんお待たせー
楠木秋巴
別に待ってない
昼休みは2人だけで 体育館裏で過ごす。
そんな日々が続いていた。
そんなある日。
楠木秋巴
今日はお弁当?
宮治
そう、自分で作ってん
楠木秋巴
……
宮治
ほんまやって!
宮くんは食べる専門だと 思っていたから
疑いの目で見ると、
宮くんは拗ねたように 唇を尖らせる。
開かれたお弁当箱を覗くと、 卵焼きにたこさんウィンナー、
からあげ、煮物から ほうれん草の胡麻和えまで、
色合いもバランスも 完璧過ぎていた。
楠木秋巴
お母さんが作ったんだ
宮治
やから違うって
宮治
食うの好きやから自分で作って自分で食えればええやんと思って
楠木秋巴
需要と供給ね
宮治
そうそう
お弁当箱の下段には これでもかというほど大きな
おにぎりが入っていて、
見てるだけで お腹が空いてくる。
楠木秋巴
そんなにお料理上手なら、
楠木秋巴
私のショボ弁当なんて盗んでないで自分で作ればいいのに
宮治
朝練あるから早起きキツイねん
"で、どれ食べる?"と 聞かれる。
楠木秋巴
え?
宮治
前にからあげ貰たやろ?
宮治
借りは返す言うたやん
楠木秋巴
意外と律儀なんだね
宮治
まぁな
私は色とりどりの お弁当箱を吟味した末、
楠木秋巴
卵焼きがいいな
と綺麗に巻かれた 卵焼きを指さした。
遠慮も躊躇もない。
宮治
ええよ、ほい
と、私のお弁当の上に 卵焼きを乗せる。
楠木秋巴
ありがとう、いただきます
宮治
どーぞ
大きめの卵焼きを1口かじる。
隣では感想が欲しいのか ソワソワとこっちを見る宮くん。
楠木秋巴
美味しい…!
宮治
ほんま!?
優しいお出汁の味と ほんのり香る甘みが美味しい。
美味し過ぎる。
私は甘い卵焼き派だけど、
こんなに美味しい だし巻き玉子は初めて食べた。








