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緯度140°の夢

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緯度140°の夢

8 - 花弁で彩られた出会いへの道 ①

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2025年11月05日

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なんだか、最近はずっと何か大事なことを忘れているような気がする。

自分探しよりは少し変わったものだけど。

大事なような、そうでもないような。思い出そうとしても、記憶に大きな穴があるみたいな。

ほら、真っ暗すぎてそこの空間だけ削れて見える感じの闇。分かるかな? 音も光も吸収する、その闇を見ても何も見てる気がしない感じの、アレ。

時折、私は私と思えない行動をしようと考える時がある。

私は本当に、私なのか? そのことをいくら考えても、答えは出なかった。ううん、考えている脳が私なら、もしも私が私じゃなかった時にその脳を信じられないじゃない。

目覚めた時に自分を自分と思えない感覚が襲ってくる。他人の体に自分が憑依してるみたいな、指先や足が自分の感覚で動いてる気がしないみたいな。 徐々に頻度が増えてきて、寝起きだけでなくふとした時にそういう感覚に襲われる。私が私でなくなる日は──私が私を私だと認識できなくなる日は、いつ来るのだろう。そんな日が来たら私は死んだも同然だ。

心が読まれてるとか、思考が盗聴されてるとか、そういうのを思いつくのはよくあることだよね………?

ああ、だめだ。なんでこんな最悪な方向に思考が走っちゃうんだろう。寝て忘れよう!そうもいかない!だって、起きたばかりなのだから。

狐鈴 ほわ

グッドモーニング!

暫く布団の上でぼーっとしていると、既視感のある挨拶が聞こえた。 夢で聞いたのかな?夢の内容は、思い出せないけれど。そもそも、既視感ってだいたい気のせいが多いし。

伊堂 恵子

(……デジャブ)

狐鈴 ほわ

おはよう。よく寝れた?

伊堂 恵子

はい。もう慣れてきたので

ここに来てからだいたい一週間ほどが経って、私は学校に通うことになりました。たしか、学校の名前は啓基坂学園(ケモトザカガクエン)。それに加え、この地域の名前は啓基坂らしい。

伊堂 恵子

(ケモトザカ………なんか、昔遊んだゲームに似たような名前のところがあった気がする)

狐鈴 ほわ

これ、制服ね。基本的に服装は自由だけど一応初日だし

伊堂恵子は白いシャツ、紺色のスカート、胸元あたりに結ぶであろう赤いリボンをゲットした!多分夏用の制服でしょう。

狐鈴 ほわ

じゃ、机の上にご飯あるからね〜

伊堂 恵子

ありがとうございます

 

制服に限らず、新しい服に袖を通すのはワクワクするもんだよね。この時特有の多分服屋っぽい匂いも、なんだか好き。

存在しているのに全然気づかなかった姿見で、制服に包まれた私を眺める。いつ視界の端で鏡の中の私が別の動きを見せるかにも注意しながら、私は高揚感にも包まれていた。

啓基坂学園にも、七不思議とかあるのかなぁ。あったら少し怖いけど、あった方が楽しそうだな。

三回の女子トイレにいる花子さん、音楽室の額縁の中にいる動くベートーヴェン、理科室の動く人体模型………。 コックリさんとか合わせ鏡とかもするのだろうか。

こういうホラーは一時期……特に学生の頃は惹かれる。かくいう私もその影響で、いろんな怪談やら都市伝説やらを人に話せるくらいは知り尽くしていた。

伊堂 恵子

おはようございます

東雲 あすか

おはよう

狐鈴 ほわ

おはよう。恵子の分はそれね〜

おにぎり、味噌汁、卵焼き、焼き鮭………所謂「これがいいんだよ」って言われてる朝食。焼き鮭じゃなくてウインナーとかベーコンのも見るけど、焼き鮭になると一気に和食感が出る。

普通に、朝からこれは手間かかるよなぁ………。ご飯と味噌汁だけでも美味しいし、私は割とサボっていた。

伊堂 恵子

(……美味い!美味くないわけがない!)

学校、かぁ。

いい思い出ばかりではなく、むしろ全体的に見たら悪い出来事ばかりでは?なんて思ってしまう、学校。

集団生活はいつになっても好きになれないなぁ……。

朝の空気と出汁の匂いを嗅ぎながら、そんなことを思った。

花弁で彩られた出会いへの道 ①

伊堂 恵子

(うーん、暑い!忘れかけてたけど、今普通に夏の初めくらいだった……)

東雲 あすか

──でね、結局私が受け持つことになって……

狐鈴 ほわ

そりゃ災難だ………

東雲 あすか

…そこは「私も手伝う!」とか言うべきところじゃない?

狐鈴 ほわ

えー、わざわざ言わなくても付き合わされるでしょ〜?

東雲 あすか

それはそうだけどね………

家、マンション、潰れかけの店、自販機、信号、時間帯的に開店していない店。なんだか懐かしい。こんな風景を横目に友達とよく会話したものだ。

桜が咲いていたら花弁を捕まえようとしたり、蝉の声が五月蝿いと文句を言ったり、束の間の秋を堪能したり、手を温めようとしたり……。通学路にはいつも四季が隣にいる。

狐鈴 ほわ

──え、それって完全にその人が悪いじゃない

東雲 あすか

そうなんだよ。それなのに、自分は何も悪くないって態度で…

そうそう、学校が近づくと人も多くなるんだよね。他の生徒の話し声が聞こえてきたり、声の大きい先生なら声が聞こえてきたり。

今日は上手く眠れなかったなぁ。 なんて、呑気なことを思うのです。

私が学校を初めて見た時は、桜が散っていて、春の陽気に包まれながらも緊張感が漂っていた、そういう時。

今目の前にある学校は間違いなくあの時の学校と違うはずなのに、なんだか面影のようなものを感じる。それは、私が学校を「思い出の学校」というフィルターを通して見ているからだろうか。

狐鈴 ほわ

──じゃ、先に教室で待っててねー!

東雲 あすか

はーい

狐鈴 ほわ

………ごめんね、そっちのけで会話しちゃって……

伊堂 恵子

あっ、いや、全然……

本当に全く気が付かなかった。 無意識にほわさん達の後ろをついてきたからか、問題なく学校にはつけた(道は全く頭に入っていないけれど)。問題なくつけたけれど、反省はしないと。

狐鈴 ほわ

…とりあえず、職員室行こう!

伊堂 恵子

はい!

狐鈴 ほわ

失礼しまーす!

伊堂 恵子

し、しつれいします……

学校で緊張する場所第二位(第一位は校長室)。

 

………おや?おはようございます

狐鈴 ほわ

おはようございます。件の転入生ですよ

伊堂 恵子

て、転入生です……?

 

君が伊堂恵子君だね?

伊堂 恵子

はい

駿河

僕は君の担任の駿河。…ああ、別に駿河国出身ってわけじゃないよ。少し、本名を使うと面倒事になるんだ

伊堂 恵子

面倒になる……?

伊堂 恵子

(名前を言っちゃいけないあの人的な………?)

狐鈴 ほわ

駿河先生はうちのクラス……恵子のクラスの担任で、国語教師

狐鈴 ほわ

先生は一回死んだ身でね………今は神様なんだけども

伊堂 恵子

(一回死んだけど後から神様に………?なんだろう、知ってる気がする)

狐鈴 ほわ

本人は面倒くさい性格だよ

駿河

失礼だな…

駿河

僕としては、「生徒と先生」という立場を使わず無理矢理交渉を仕掛ける方がどうかと思うけどね。公私混同は尊敬しないな

狐鈴 ほわ

君が生きている時わざわざ姿を見せてやったろう?あと歳上の特権です。

駿河

大人気ない

駿河

………まぁ、よろしくね。話せる機会は少ないかもだけど、担任だからさ

伊堂 恵子

は、はい。よろしくお願いします……

神様って、そんな身近にポンポン存在していいものなんだ………。

とりあえず優しい?っぽい先生でよかった!!怒ったら本当に怖そうだけど!!!

駿河

じゃあ、少し待っててね。「入っていい」って言うまでは大人しくしているんだよ

転入生側になることなんてなかったから、こういうのはかなり新鮮だ。

えー、なんかソワソワする。周りがHRやってるのも影響してるだろうけど、凄い緊張してきた……。

 

駿河

──はい。今日は転入生がやってくるよ

駿河

どうぞ、入ってきて

伊堂 恵子

(…緊張するなぁ)

教室に入った瞬間、私に視線が大量に向けられる。好奇の目が私を見ている。逃げ出したい。怖い。

駿河

自己紹介を

伊堂 恵子

……伊堂恵子です。趣味は料理、裁縫、読書………まぁ、家事ならできます。よろしくお願いします…

ちゃんと普通の人に擬態できてる?出来てるよね?

最早義務のようになっている拍手が聞こえた。何回も連続でやるとだんだん手痛くなってくるよね。

駿河

じゃ、あそこの空いてる席ね

廊下側から二列目の一番後ろの席。最高の席を引き当ててしまった。席ガチャ、当たり。

私が席に座ったことで、視線は私に集まらなくなった。 といっても、黒板の前に立っている時に比べたら減っているというだけで、態々此方を見てくる人もいる。

駿河

はい、これにてHRは終了です。一限目の準備しといてね

やっぱり精神が削られるよ……!!

『花弁で彩られた出会いへの道 ①』 終 NEXT 『花弁で彩られた出会いへの道 ②』

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コメント

1

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いろんなところに伏線をばらまいているものの、いざ回収するときに忘れてそうだ……… 次の話はやっとあの二人が出ます。やっと

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