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最近、彼は前より静かだ。
話しかければ答えてくれる。
でも、前みたいに先に声をかけてくることは少なくなった。
理由は分からない。
聞くほどのことでもない気がして、 私はそのままにしていた。
…そのままにしてた、はずだった。
放課後。
教室に忘れ物を取りに戻ったとき、 中から声が聞こえた。
知らない声。
ドアの前で、足が止まる。
少しだけ開いた隙間から見えたのは、 彼と、クラスの女子。
彼は立ったままで、 いつもより少し柔らかい顔をしていた。
のあ
なぜか、そう思った。
女子が笑って手を振る。
うり
彼も短く返して、 その女子が教室を出ていく。
私は、タイミングを逃したまま、 しばらく動けなかった。
うり
先に、彼が私に気づいた。
うり
のあ
それだけ。
さっきまで誰かと話してたなんて、 何もなかったみたいな声。
のあ
聞くつもりはなかったのに、口から出ていた。
彼は一瞬だけ間をおいてから答える。
うり
それ以上、説明はしない。
のあ
なぜか胸がちくっとする。
のあ
自分でも驚くくらい、そっけない返事になった。
帰り道。
友達と一緒に歩きながら、 さっきの光景が何度も浮かぶ。
えと
友達が言う。
えと
のあ
えと
軽い調子。
なのに。
のあ
そう答えた声が、少しだけ固かった。
友達は気づいてない。 気づかれても困る。
だって、別になんとも思ってない
のあ
家に帰ってからも、頭から離れなかった。
さっきの女子の笑顔。 彼の、知らない表情。
のあ
彼が誰と話そうが、 誰に好かれようが、 関係ない。
隣の席なだけ。
そう、何度も言い聞かせる。
なのに。
もし、あの女子が明日も隣に来たら。
もし、彼がその子のほうを向く時間が増えたら。
そんなことを考えただけで、胸がきゅっとなる。
理由は、分からない。
分からないから、余計に落ち着かない。
次の日の朝。
彼は、いつも通り席に座っていた。
のあ
うり
短いやり取り。
それだけなのに、昨日より距離を感じる。
のあ
分かってる。
でも。
ふと、彼が誰かを見る視線に、 自分じゃない可能性を想像してしまった。
その瞬間、胸の奥が、静かに痛んだ。
名前をつけるには、まだ早い。
でも確かに、今までなかった感情が、そこにあった。
ー気づきたくないまま、 私はそれを、そっと抱えた。