テラーノベル
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暗いところ苦手ないむち 青水
微かに聞こえてくる鼻を啜る音で意識が浮上する。
一瞬だけ夢かと思ったが、生憎この音には聞き覚えがあり簡単に覚醒することになる。
2人で同棲し始めた時に買った大きめのベッド。
夏なのにも関わらずベッタリとくっついて寝ているのはおかしいのだろうか。
多少暑いがクーラーが効いているので逆に丁度いいのかもしれない。
チラリと自分の胸あたりまで布団に潜っている恋人を見る。
丸まって声を押し殺すように泣いている姿は何度見ても慣れることはない。
🤪
そう呼びかけるとピクっと体が反応して余計に布団で顔を隠される。
サイドテーブルに置いているリモコンを操作して電気を付ける。
寝起きの目にはかなりのダメージになるが、ほとけのためならなんの問題もない。
🤪
もぞもぞと動き出したそいつはひょこっと布団から目だけを出して再び泣き始める。
少しでも落ち着かせるために手を背中にまわして撫でたり、抱きしめたりする。
🤪
💎
🤪
💎
🤪
ほとけはよく夜中に泣き出す。
暗いところが苦手らしく、たまに不安になって気づいたら泣いているらしい。
以前、台風の時期に停電したことがあった。
その時は不運にも当たりが暗くなってきた夜のことで、急に電気が消えたせいでリビングでテレビを見ていたほとけはパニックを起こしたのだ。
俺は自室で作業をしていたので、停電した時は急いでスマホのライトを使ってリビングに走った記憶がある。
駆けつけたリビングをライトで照らす限り、ほとけはソファとローテーブルの間でうずくまっていて、床には割れたガラスが散りばめられ、血のようなものも見えた。
暗いままではどこを怪我をしているかも分からないし、他にも見えないところに破片があるといけないので、とりあえずほとけを抱えて寝室まで向かった。
非常用に持っていた懐中電灯と俺のスマホ、リビングにあったほとけのスマホ、とにかく明かりになるものを集めて、できるだけ明るくした。
それからずっと背中を摩ったり、頭を撫でたりしてくっついていると疲れきったのか次第に寝てしまった。
先程見た血の正体を見つけるためにライトを照らしていると、手のひらをざっくり切っているのが分かった。
ほとけの服には少しばかりの血が付いていたが、幸いなことにも布団には付いていなかった。
急いで救急箱を持ってきて簡易的な手当をする。
よく見えないがかなり痛そうで、起きたら喚くほとけが想像できた。
数時間後電気が復旧してようやく家に明かりが戻ったので俺はリビングに戻ってガラスの処理やその他の片付けをした。
ある程度片付けを終えて寝室に戻る。
未だにぐっすり眠っているほとけは朝まで起きることはないだろう。
自分も寝てしまおう、そう思い布団を捲り隣に失礼させてもらった。
翌日の朝、布団の中でごそごそ動き始めるほとけに気づいて目が覚めた。
「はよ…」 「あ、おはよう。………服変わってる」 「あー、俺が着替えさせた」 「いふくんのえっち」 「ぶん殴るぞ」 「きゃー、こわ〜い」
「…体調は?」 「大丈夫。その…昨日はごめん」 「別に、大丈夫なら良かった」 「手めっちゃ痛いんだけど」 「後で病院行くぞ」 「え〜行きたくない」 「だめ」 「ちぇ」
こんな感じで翌日には何も無かったように振舞っていたが、明らかにこの日を境に夜中に泣く頻度が高くなった気がする。
ほとけが泣き始めて数分後、未だに泣き止まないほとけに少しずつ焦りを感じていた。
いつもならとっくに泣き止んで眠っているはずだが、今日は眠る気配なんか一切感じない。
🤪
💎
🤪
💎
僕の大切なものが頭の中で黒く塗りつぶされていく感覚がする。
気づいたら暗闇の中に立っていて、そこから出られなくなっている。
どれだけ歩いても暗闇のままで怖くなる。
このまま目が覚めなかったら、もし目が覚めてもまた記憶を失っていたら。
そんなことを考えてしまって余計に苦しくなる。
そんな夢を見続けていたらいつしか暗いところが苦手になった。
暗闇に立つと、漠然とした不安が襲いかかってきて涙が出てくる。
ふっ、と意識が浮上して目を開けると、辺り一面暗くなっていて一気に不安が押し寄せてくるきた。
隣にいる恋人にできるだけくっつくようにしたけど、それでも涙は止まらなくて、心臓がうるさいほどに鼓動しているのが分かる。
いっその事気絶してしまいたいところだが、生憎そんなことは許されないらしい。
嗚咽を漏らしながら咽び泣いていると、大好きな声が聞こえた。
"忘れたくない"そう言ったほとけは俺には見えない何かと戦っていて、なにもしてあげれない自分に腹が立つ。
いつもあんなにへらへらとしているのに、こういう時は1人で我慢して、頼ってくれない。
大丈夫、怖くない、と言い続けてかなりの時間が経った。
流石に泣き過ぎたのか、最終的には気絶したようにも見える。
ほとけの頬をつたう涙を拭ってやりもう一度抱きしめる。
電気は付けたままにしておこう。
END 暗闇の中に差し込む光
りり
りり
りり
りり
りり
りり
りり
りり
りり
りり
りり
りり
コメント
4件
やばい…好きすぎる🤦♀️ やっぱ💙🩵尊い💓 🐱くん優しすぎるよぉ~( ; ; ) 💎くん頑張りすぎだよぉ🥲 宣伝ありがとうございます✨
え、トラウマあるとか泣く😭とうと、、あおくんとか。よすぎる。普段不仲なのにこーいうときは優しい声掛けは流石にとうとい 宣伝ありがと😭たすかりますん!