ベリアン
なるほど....主様はそんな病気を抱えていらっしゃるのですね....。

覚
だから気づかれたくなかったのに....

ベリアン
主様、それで、先程の話に戻るのですが。

覚
主の話でしょ?
私、元の場所でやらなきゃならない事があるから引き受けられない。

ベリアン
なるほど、主様は多忙なのですね...。
仕事合間に息抜き程度で帰ってきて頂けるだけでも良いのですが....お願い出来ませんでしょうか?

覚
怪しまれちゃうし。ごめんだけど帰って来れないよ。

ベリアン
その....うーん...

覚
ん....誰か来たみたいだけど。

ベリアン
そ、そうみたいですね。

ピリピリとした雰囲気の中、突然聞こえてきたノック音に戸惑っていると、扉の向こうから男の人の声がした。
ルカス
ベリアン、お取り込み中の様だが...少し入っても良いかい?

ベリアン
ルカスさんが来たみたいです。入れても宜しいでしょうか?

覚
誰だか知らないけれど貴方に用があるんでしょう?入れてあげた方が良いと思うけど

ベリアン
か、かしこまりました。
ルカスさん、どうぞ入って下さい。

ルカス
失礼するよ、ベリアン。そして主様。
おや、何だか深刻な空気だね。

ベリアン
あ...その、実は....。

ルカス
ふむ...なるほどね。つまり主様は、主様の世界での仕事が忙しく、こちらに帰ってくる時も怪しまれてしまうと警戒しているわけか。

ベリアン
はい....。

ルカスは一通り事情でも聞き終えたのか、覚の方にに向き直った。
ルカス
主様。この度はわざわざデビルズ・パレスまでお越し頂き、本当にありがとうございます。

覚
まぁ意図的に来た訳では無いですけどね。

ルカス
まぁ....そこは置いておいて。
ねぇ、主様。主様は、主様の世界の方ではどんな仕事をしているのですか?

ベリアン
(ルカスさん....綺麗に流しましたね)

覚
私の仕事ですか?それは...

覚
(被検体、だなんて言えるわけない)

ルカス
主様?

覚
いや....その、えっと...

覚は何と言えば良いか分からず、口を噤んでしまった。
ルカス
.....。
主様...きっと主様は、よほど大変な想いをしてきたのですよね。

覚
えっ?

ルカス
言いたくない事もありますよね。
無理に聞いてしまい申し訳ございませんでした。

覚
いや、えっと....

ルカス
主様。それを把握した上でのお願いです。
どうか、私たちにお力をお貸しいただけないでしょうか?

覚
.......。

ルカス
私たち悪魔執事は、主様のお力が無ければ天使と上手く戦うことが出来ません。
そして、主様のお力があれば、これまで以上に多くの命を救うことが可能になるのです。

覚
......。

ルカス
主様....どうか、どうかお願いします。
主様のサポートは、執事一同、全力でさせて頂きますので。

覚
............。

静かな沈黙がしばらく流れたが、その沈黙を破ったのは覚であった。
覚
はぁ....分かりました。
でも、私言いましたからね。あまり帰って来れないって。

ルカス
.....!ありがとうございます。

ベリアン
ありがとうございます、主様....!

覚
分かりましたから、頭は下げないで下さい。

ベリアン
でも....本当にありがとうございます、主様。
これから精一杯仕えさせて頂きますので...!

覚
もう、分かりましたから....

ベリアン
.....?どうかなさいましたか?主様。

覚
いや、これどうやって帰れば良いのか分からなくて

ベリアン
あぁ、それなら安心して下さい。
今お付けになっているその金色の指輪を外せば、元の場所へ帰ることが出来ますので。

覚
そ、そうなんだ

ベリアン
今日はもうおかえりになりますか?

覚
....うん。帰ります

ベリアン
かしこまりました。それでは、気をつけておかえり下さい。

覚
うん。
