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放課後の校舎裏は、人が少なくて静かだった。
風に揺れる木の音と、遠くから聞こえる部活の掛け声だけ。
「…近道だし、ここ通ろ」 そう思って曲がった瞬間、私は足を止めた。 ーーいた。
壁に背を預ける男の子と、ぴったり寄り添う女の子。 その男の子が、誰かすぐ分かった。
「新羅…ゆあん…」
1年4組。 チャラくて、目立ってて、女子に人気で。 クラスが違っても名前が嫌なくらい耳に入る。
女の子は制服の袖をぎゅっと掴んで、甘えた声を出していた。
「ねぇ…ゆあん」 「んー?なに?」
軽い声。 慣れた距離感。 その雰囲気だけで全部わかってしまった。
ゆあんくんの手が、女の子の腰にまわる。 近づく顔。 「…っ」 胸の奥が、ぎゅっと縮んだ。
別に、知り合いでもない。好きでもない。 なのに、見てられなかった。 「最低…」 思わず、そう呟いていた。
その瞬間___ 「あれ?」 ゆあんくんがこちらを見た。
「あ…」 目が合う。 一秒、二秒、 「1年2組の…えとさんだっけ?」
名前を呼ばれたことに、何故か苛立った。 「見てた?」 悪びれない声。むしろ楽しそう。
私はゆっくり目を逸らした。 「別に」 「へぇ、じゃあいいじゃん」 そう言ってまた女の子の方を見る。
ーーーあ、無理。 胸の奥が冷えていく。 「興味ないんで」 それだけ言って、私は元の場所へ戻った。
「え、ちょ…」 後ろから声がしたけど、止まらなかった。 心臓が、変に早くて。 なのに、頭は冷えていた。
(ああいう人、いちばん苦手) 軽くて。簡単で。誰にでも同じ顔をする人。
もう二度と関わらない。 そう決めていたのに。 ーーこの時私は知らなかった。
自分にだけ向けられる視線が、 もう、始まっていたことを___
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