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るあチャ
るぅと
ころん
莉犬
さとみ
るあチャ
るあチャ
るあチャ
ありのままの自分を見せたら、いつも人が離れていく。 本当の気持ちを口にしたら、みんながうしろ指をさしてくる。 だからいい子を演じて、誰かにとって都合のいい人間になって....。 いつの間にか疲れて、人と関わることを自然と避けていたらひとりぼっちになった。
友達を作って、また裏切られて傷つくのは嫌。 でも、孤独にもなりたくない。 そんな矛盾した気持ちが心をがんじ絡めにして苦しくてたまらなかった、そんなとき───。
聞こえてきたのはポタポタ、しとしと。 雨粒のように心に染み込む、きみという名の恋の音。 ずっとずっと、僕に語りかけてくれていたよね。
そのままでいいんだよ。 そばにいるよ。 きみのことを見ていてくれている人もいるよ。
空気のような存在だった僕がこの世界に居場所を見つけられたのは、きみのおかげなんだ。 だから怖くてたまらないけど、きみに直接伝えたい。 ありがとう、大好きだよって。 でもきみは近くにいるようで遠い、どこの誰かもわからない泡沫のような人。 「ねぇ、きみはどこにいるの──?」
あれは小学4年生のときのこと。 今から思えば、僕は昔から 不器用だった。
男子クラスメイト
図書係はひとクラスから3人選ばれる。
活動としては週替わりで昼休みと放課後に図書室の受付をするくらいなのだけれど、受付の人員はふたりなので結果としてひとりあぶれる。
だから、あまった人間はほかのクラスの図書係の子と組まなければならない。 話しかけてきた彼はそれが嫌だから先手を打つように、僕に「ほかのクラスの子と組んでひとりになってほしい」と、ひどいお願いをしてくる。
こういうとき、「嫌だ」とか「僕も同じクラスの子と組みたい」という否定的な意見が頭に浮かんできてもすぐに消し去る。 僕の中で誰かの意見や考えを拒むという行為は、絶対にしてはならないことだった。
そう思うようになったのは、いつからだっただろう。
共働きの両親は僕が小さい頃から家を空けることが多かった。妹ができるまで、僕の話し相手はいつもクマのぬいぐるみ。当然、話しかけても返答はなくて、それが寂しくて仕方がなかった。
お父さんやお母さんに学校のことを話そうとしても『今忙しいから』と口癖のようにつき放されてしまうので、だんだん自分の話は面白くないのかもしれない、どうせ聞いてもらえない、それは私がつまらない人間だから、僕という存在に興味をもてないからなのだと内気になっていった。
その弊害なのか、僕は思ったことを人に伝えることが苦手だ。相手に好かれる方法ばかり探していたから、自分から友達を作るなんておこがましくて論外だった。
だから本当はやりたくないことでも「いいよ」とうけおって、友達になってくれた人から嫌われないようにふるまうのが癖になっていた。
今回も、同じ図書係になった友人たちから、「俺たちふたりで受付をやりたいから別のクラスの女の子と組んでほしい」なんて、そんな理不尽なことを言われても作り笑いを浮かべてうなずいてしまった。
普通はこういうとき、どうするんだろう。やっぱり断るのかな。
だとしたら、普通のことができない私は、ほかの人と比べて努力しなければ誰にも好かれない欠陥品なんだろう。
そして、しぶしぶ組んだりあちゃんという女の子は、背が低くニコリともしない無愛想な子だった。
一緒に受付をしていてもひと言も会話はなく、係の週が回ってくると昼休みと放課後の時間は憂鬱で仕方なかった。
男子クラスメイト
ある日の昼休み、図書係の3人で廊下で話していたら、こう聞かれた。
図書室の受付の仕事は先週で2回目を迎えたのだけれど、りあちゃんとの仲は相変わらず進展がなかった。カウンター席にふたりで座っていても、会話がないから暗いムードが漂っている。
るぅと
素直に思っていることを打ち明けた。
べつに彼女のことが嫌いというわけではなく、僕はりあちゃんに限らず人が怖い。
会話がないからなにを考えているかわからないし、僕から変なことを言って嫌われたらどうしようって思ったら言葉が出なくなる。
「嫌なことをされたの?だったら、俺たちが言ってあげるよ」
男子クラスメイト
もしかしたら、僕をひとりにしたことにうしろめたい気持ちがあったのかもしれない。
僕の言葉に過剰に反応し、勝手に想像を巡らせて、男の子たちはりあちゃんのクラスへ駆けていく。
るぅと
呼び止めたくてその背を追いかけるけれど、すでにふたりはりあちゃんにつめ寄っているところだった。
男子クラスメイト
男子クラスメイト
ふたりの勘違いに巻き込まれたりあちゃんは、いぶかしむような表情でふたりを見下ろしていた。
りあちゃん
男子クラスメイト
りあちゃん
大きくなっていく言い合いの声と集まってくる野次馬に足がすくんだけど、混乱を招いた原因は口下手な自分にあるので見て見ぬふりはできない。
るぅと
思いきって叫ぶと、教室の入り口に立っているりあちゃんたちが私を振り返った。
怖かったけど、みんなに近づいて深呼吸をした僕はしどろもどろになりながら事情を説明する。
るぅと
男子クラスメイト
説明を終えた僕にかけられたのは、図書係の友達の冷たいひと言だった。
るぅと
僕にしてはめずらしく、つい語気を強めてしまった。
普段めったに意見しない私がはっきり主張したからだろう。自分たちの先走った行動に気づいたらしい友人のふたりは、ばつが悪そうな顔をする。
彼たちにも、勘違いさせるような僕の物言いのせいで傷つけることになってしまったりあちゃんにも、ちゃんとわかってもらおうと思いを伝える。
るぅと
男子クラスメイト
僕の言葉をさえぎった男の子の顔から、表情が消えていくのがわかる。
説明は逆効果だったのかもしれない、そう気づいたときにはすでに引き返さないところまで関係にヒビが入っていた。
男子クラスメイト
友人から、友人だったはずの彼から向けられるのは、子どもにもわかる確かな敵意。鋭い眼差しとトゲのある声から、本能的に恐怖を感じる。
───怖い、怒らないで、嫌わないで。
そんな不安が胸の中にひたひたとにじんでいき、やがて僕の心を絶望で満たしていく。
るぅと
───ひとりになりたくない。
ふるふると首を横に振り、必死に誤解だと訴えようとしたら喉が締まって苦しくなる。
りあちゃん
僕を迷惑そうな表情で睨んだりあちゃんは、そう言って教室に戻ってしまう。
るぅと
さっきから僕は「そうじゃない」「違う」ってそればかりで、どんな弁解も彼女らの心にはなにひとつ届かない。
男子クラスメイト
男子クラスメイト
突き刺さるような言葉のナイフを投げるだけ投げて、僕から離れていくふたりの友人の背に手を伸ばした。
るぅと
廊下の真ん中で立ち尽くし、僕はほかの生徒たちの好奇の視線を浴びながらつぶやくだけだった。それしかできなかった。これ以上どうすれば彼たちの信頼を取り戻せるのか、僕にはわからなかったから。
この日から、りあちゃんは宣言どおり係に来なくなった。
友達のふたりは「るぅとくんがりあちゃんにいじめられたって言ったんだよ」「私たちだって騙されたんだ」と嘘を吹聴してみんなの同情を買うと、クラスで同調する仲間を増やしていった。
僕はりあちゃんと仲のいい女子からも無視されるようになり、クラスで疎外にされるだけでなく、学校でも完全になってしまった。
そんなつもりはなかったのに、りあちゃんを傷つけてしまった。
僕の伝え方にも非があったと思うけれど、信じていた友達は勝手に誤解してりあちゃんに詰め寄ったくせに、私だけを悪者にした。しかもそれだけでは飽きたらず、私の悪いウワサを流して仲間を増やすために利用し、簡単に裏切った。
これも僕のひと言が招いたこと、思いを口にするってなんて恐ろしいんだろう。
決して心が通いあっていたとは思えないけれど、それまで一緒に行動する人がいた私は物理的には孤独ではなかった。表面上では人とぶつかることもなく、平和だった私の「学校」という名の世界。それが言葉のすれ違いだけで、瞬く間に戦場へと変わってしまった。
傷つきたくない、傷つけたくない、嫌われたくない。
だから話すのが怖い、人と関わるのが....怖いんだ。
るあチャ
るあチャ
るあチャ
るあチャ
るあチャ