哲汰が「玲の作るご飯が一番うまい!」って、 いつも本気で言ってくれるから…… その顔を思い浮かべるだけで、 もっと美味しく作りたくなるんだ。
今日は少し豪華にしようと、下ごしらえを 丁寧にしていたら――
玲.
包丁が滑って、指先に鋭い痛みが走った。
玲.
見ると、人差し指からじわっと血がにじんでくる。 急いで蛇口をひねり、流水で洗いながら 舌打ちする。
玲.
今日は哲汰が仕事終わりに直で家に来る予定。 もうすぐ帰ってくるはずだから、 絶対にバレたくない。
玲.
タオルで押さえ、なんとか血を止めて、 慌てて絆創膏を取り出した。 ちょっと目立つけど…… これなら見えないだろう、と願いながら 包丁を持ち直す。
哲汰.
玄関から哲汰の声がして、心臓が跳ねた。
玲.
できるだけ平然を装いながら返事をする。
哲汰.
玲.
テーブルに料理を並べ、二人で向かい合って座る。
哲汰.
玲.
元気よく手を合わせる姿を見て、 思わず頬がゆるんだ。
玲.
そう思ってホッとしたのも束の間――。
哲汰.
箸を伸ばしかけた哲汰が、 じっと俺の手を見て首をかしげた。
哲汰.
玲.
思わず手を引っ込めるが、もう遅い。 哲汰は眉をひそめて心配そうに覗き込んできた。
哲汰.
玲.
小さな声で白状すると、 哲汰の表情が一瞬で険しくなる。
哲汰.
玲.
哲汰.
哲汰は俺の手をそっと取って、 絆創膏の上から優しく撫でてくれた。
玲.
哲汰.
むくれた声に思わず笑ってしまう。
玲.
哲汰.
呆れたようにため息をつきながらも、 哲汰は優しく微笑んでくれた。 その笑顔に胸がじんわり温かくなる。
玲.
そう思いながら、二人で「いただきます」と 声を合わせた。
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