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第1話 - あ

2023年10月11日

#スカッと

タナカトシキ

ユウ

これ、お父さんのＬＩＮＥだよね

ヒロキ

え？どちらさまでしょうか？

ユウ

私のこと忘れたの！？ありえない！！

ユウ

お父さんの娘のユウだよ！！

ヒロキ

…ユウ？ユウなのか！？

ユウ

そうだよ！お母さんのスマホから連絡先見つけたの。自分の娘忘れるとか最低！！

ユウ

私は一日だって、お父さんのこと忘れたことなかったのに…

ヒロキ

そうか…

ヒロキ

たしかにユウは俺によく懐いてたな…

ユウ

うん。小さい頃いつも遊んでくれた、

ユウ

優しいお父さんが大好きだった

ユウ

それなのに、どうして養育費を払ってくれないの！？

ユウ

お陰でお母さんはシングルマザーですっごく苦労してたし、

ユウ

それでもお金が足りなくて、私は大学にも行けなかったんだよ！！

ユウ

今、高卒で働いてるの

ヒロキ

そうか、苦労したんだな…

ユウ

何よ他人事みたいに！！誰のせいだと思ってるのよ！

ユウ

お母さんは忙しく働いていて、その間私はずっと一人ぼっちだった

ユウ

お父さんが会いに来てくれるのを、ずっと待ってた

ユウ

それなのに、一度も会いに来てくれなかった

ユウ

酷いよ！どうして自分の娘を捨てるなんてことができるのよ！！

ヒロキ

お前は何も聞かされていないんだな…

ヒロキ

お前は、俺の娘じゃない

ユウ

へ？

ユウ

何言ってるの？6歳まで、私達親子として暮らしてたじゃん！

ヒロキ

あぁ。だけど、違ったんだよ

ユウ

どういうこと？

ヒロキ

ユウが六歳の時、元嫁のミカの浮気が発覚した

ヒロキ

浮気が長年続いているようなのと、

ヒロキ

浮気相手の顔がユウと似ているのに嫌な予感がして、DNA鑑定をした

ヒロキ

結果、ユウは俺の子じゃなく、浮気相手の子だったんだよ

ユウ

嘘…

ヒロキ

浮気相手は、俺達が離婚した後すぐに逃げたそうだ

ヒロキ

信じられないなら、鑑定結果を見せてもいい

ヒロキ

養育費なら、本当の父親に請求してくれ。行方不明だから無理そうだが

ユウ

そっか…

ユウ

お父さんは、本当のお父さんじゃなかったんだね

ユウ

そうとも知らず、ごめん。お母さんからは、養育費をくれないお父さんの愚痴ばっか聞いてたから…

ヒロキ

俺の方こそごめんな

ヒロキ

ユウは何も悪くないのに…

ユウ

ううん。お父さんが謝ることじゃない

ユウ

悲しいけど、浮気相手の子だとわかったら、愛せなくなっても仕方ないよ

ヒロキ

本当はな、実の子じゃないとわかっても、離婚してユウと離れるのはつらかった

ヒロキ

それくらい、ユウには愛情を感じていたんだ。六年間育てていたからな

ユウ

そうなんだ…

ヒロキ

それでも、血の繋がらない子を娘として育てることはできなかった

ヒロキ

下手にユウと関わっていると、お前を傷つけてしまいそうで怖かった

ヒロキ

だから、ユウの幸せを祈るのを最後に、

ヒロキ

きっぱりお前達のことは忘れて、新しい人生をスタートさせることにしたんだ

ヒロキ

今は再婚して、血の繋がった子供達もいるよ

ヒロキ

妻の理解を得てDNA鑑定もしたから間違いない

ユウ

そっか。幸せそうで良かった

ヒロキ

お前も色々あるだろうが、幸せになれよ

ユウ

うん…じゃあ、バイバイ。話せてよかった。このLINEはブロックしてね

ヒロキ

待ってくれ

ヒロキ

折角俺達、また繋がったんだ。ユウさえよければ、これからも連絡は取り合わないか？

ヒロキ

親子になるのは無理でも、友達にはなれると思う

ユウ

え、私はそうしたいけど…いいの？

ヒロキ

あぁ。昔の傷はもうだいぶ癒えたよ

ヒロキ

今なら、穏やかな気持ちでお前と向き合えそうだ

ユウ

じゃあ…よろしくね、ヒロキさん

ヒロキ

お父さんでいいよｗ

～一年後～

ユウ

お父さん！私結婚が決まった！

ヒロキ

おぉ、おめでとう！

ヒロキ

相手は、ずっと付き合ってる彼か？

ユウ

うん！彼とは気が合うし、ご両親もすっごく優しいんだぁ

ヒロキ

それは良かった。幸せにな

ヒロキ

結婚式には、呼んでくれるのか？

ユウ

それがね、彼結婚式って面倒臭いしお金もかかるから嫌なんだって

ユウ

ぶっちゃけ、私も同じ気持ちｗ

ユウ

その代わり、ウェディングフォトは撮ることにしたの

ヒロキ

そうか。最近増えてるらしいな。結婚式を挙げないカップル

ユウ

正直、結婚式挙げてお父さん呼ぶとしたらややこしいことになるし、ちょうどよかったｗ

ユウ

父親としてバージンロード歩いてもらうのもなんか違うし、

ユウ

新婦友人席に一人だけおじさん座るのも、なんか困るじゃん？

ヒロキ

確かになｗ

ヒロキ

『昔は親子だったけど托卵がわかってからずっと縁が切れていた。でも今は友達です』

ヒロキ

なんて複雑な事情を話すのも面倒そうだしなｗ

ユウ

そんなの話したら友達に引かれちゃうよーｗ

ユウ

彼はわかってくれてるから感謝だけどｗ

ユウ

でもそれ以上に面倒なのは、お母さんをどうするかなんだよね

ヒロキ

ユウは、母親とは半絶縁状態なんだったな

ユウ

うん。だから絶対に呼びたくないの

ユウ

でももし呼ばなかったら、新婦親族席ガラガラでしょ

ユウ

彼が結婚式やりたくないって言ってくれて、

ユウ

ご両親も理解ある人で本当助かったよー

ヒロキ

それは結婚式挙げなくて正解かもなｗ

ヒロキ

ウェディングフォト、出来たら見せてくれよ

ユウ

もちろん！

～数日後～

ミカ

久しぶりね、ヒロキ

ヒロキ

ミカ…？今更何の用だ

ミカ

実はね、娘のユウが結婚することになったのよ！

ヒロキ

ふーん、それで？

ミカ

それで…って、冷たいわね！まるで他人事みたいに！

ヒロキ

実際他人事だからな

ミカ

何よ！ユウのウェディングドレス姿が見たいって言ってたの、忘れてないんだから！！

ヒロキ

いつの話してるんだ…

ヒロキ

それで、なんか用なのか？

ミカ

そうそう。結婚式費用として200万ちょうだい

ヒロキ

は？

ヒロキ

ユウ、結婚式挙げるのか？

ミカ

決まってるじゃない！

ミカ

これまで養育費払ってくれなかったんだから、それくらいちょうだいよね！

ヒロキ

いやいや、なんで俺がユウの結婚式費用を払わなきゃいけないんだ？

ヒロキ

母親のお前が負担すればいいだろう

ミカ

私にそんな余裕ないの！父親のあなたが払ってよ！

ヒロキ

ユウは俺の子じゃなくて、浮気相手の子だっただろう

ヒロキ

まさか忘れたわけじゃないよな？

ミカ

それでも、戸籍上はあなたの子なのよ！養育費を払う義務があるの

ミカ

それを払わずバックレたんだから、ここで誠意を見せてよ！

ヒロキ

何の誠意だ！浮気して托卵した側が誠意を求めるな！

ヒロキ

それにあの時弁護士を通じて話し合って、

ヒロキ

養育費の支払い義務は慰謝料減額と引き換えに免除されたじゃないか

ヒロキ

結婚式費用も養育費も、浮気相手に請求してくれ

ミカ

しょうがないじゃない！浮気相手とは連絡がつかないんだから！

ミカ

それに血が繋がってなくても、あなたユウのことをあんなに可愛がってたじゃない！

ミカ

6年間親子として暮らしてきてたじゃない！

ミカ

それなのに、愛情はないの？薄情者！

ヒロキ

なぁ、200万も要る本当の理由を教えてくれ

ミカ

本当の理由？何言ってるの？ユウの結婚式の為って言ったじゃない！

ヒロキ

もうそれは嘘だってバレてんだよ

ヒロキ

ユウは結婚式を挙げない。ウェディングフォトだけで済ませるそうだ

ミカ

なんであんたがそんなの知ってるのよ！！

ヒロキ

だって、ユウ本人から聞いたからな

ミカ

へ？

ミカ

なんであんた、ユウと連絡とってんの？

ヒロキ

お前は知らなかっただろうが、俺とユウは友達なんだ

ヒロキ

今の家族公認で、月一くらいで会う仲だよ

ヒロキ

きっかけは、父親を恋しがったユウがお前のスマホから俺の連絡先を探して、

ヒロキ

養育費を払わないなんて酷い！って言ってきたことだな

ヒロキ

その時に、全部話したんだ

ミカ

あ、あなただったのね！ユウに話したの！酷い！！

ミカ

そのせいで私ユウに散々罵られて、

ミカ

ユウは家を出て行って、仕送りもしてくれないし連絡も碌にくれないのよ！

ミカ

ずっとたった二人の家族だったのに…

ヒロキ

話さないわけにはいかないだろう。自業自得だ

ミカ

何よ！あんたが養育費くれればよかった話でしょうが！

ミカ

でなきゃせめて、養育費払わない最低男としての憎まれ役くらい、

ミカ

私のために買って出なさいよ！

ヒロキ

なんでお前のためにそんなことしなきゃならないんだ

ヒロキ

そんなにユウからの連絡がほしければ、今連絡させるよ

ヒロキ

今カフェでユウと一緒にいて、このLINE見てるしな

ミカ

え？

（【ユウ】が追加されました）

ユウ

お母さん、これ以上お父さんを困らせないでよ

ユウ

私結婚式挙げないし、200万も要らない。要るのはお母さんだよね

ミカ

何言ってるの！なんだかんだであなたも結婚式挙げたいでしょう？

ミカ

お母さんはね、あなたのためを思ってお金を集めようとしたのよ

ユウ

嘘つかないでよ！だったらなんで私に隠れてこんなことするの？

ミカ

それは、サプライズしようと思って…

ユウ

お母さん、ホストにハマってるの知ってるよ。それで借金作ったんだよね？

ユウ

だから、返済のために200万がいるんだ

ミカ

そうよ…あんたのせいなんだからね！

ミカ

あんたが産んで育ててやった恩も忘れて、私に酷いこと言って

ミカ

絶縁同然のことするから、寂しくてホストにハマっちゃったのよ！

ヒロキ

何度も言うが、自業自得だ。ユウのせいにするな

ミカ

うるさい！ユウ、こうなったらあんたが払ってよ！

ユウ

は？お断り。なんで私がそんなことしなきゃならないのよ

ミカ

実の母親が困ってるのに、見捨ててもいいの！？

ユウ

うん。娘の私を利用してこんなことする人、もう母親とは思えないし、

ユウ

本当に絶縁するから

ミカ

何よ何よ！大体、離婚になったのも全部あんたのせいなのよ！

ミカ

あんたが産まれなければよかったのよ！！

ヒロキ

おいミカ！！

ヒロキ

母親として、言っていいことと悪いこともわからないのか？

ミカ

だって…！

ヒロキ

さっき俺に、ユウに対して愛情がないのかと言ったよな

ヒロキ

お前こそどうなんだ。ユウに愛情がある母親の台詞とは思えない

ミカ

私とユウを見捨てたくせに、偉そうなこと言わないで！

ミカ

あんただってどうせそう思ってるくせに！

ヒロキ

確かにユウが生まれたことで、辛い思いもしたけれど、

ヒロキ

楽しい思い出もあるし、温かい気持ちだって知れたよ。今だってそうだ

ヒロキ

だから、ユウが産まれなきゃよかったとは思わないし、

ヒロキ

『友人』としてご祝儀も包むよ

ユウ

お父さん…

ミカ

ご祝儀包むなら私にもちょうだいよ！ね、ユウ、私にちょっと預けてみない？

ユウ

なんでお母さんに預けなきゃならないの？

ヒロキ

まったくだ。ご祝儀はユウの金だからな

ヒロキ

お前にやる金は一銭もない

～後日談～

ヒロキ

その後、ミカの借金は膨れ上がる一方で、

ヒロキ

それでもユウに絶縁された寂しさからかホスト遊びはやめられず、

ヒロキ

しまいには夜の店で働き出すようになったそうです

ヒロキ

想えば浮気の理由も『寂しかった』でしたし、

ヒロキ

依存体質なんでしょうね

ヒロキ

俺はユウに、ご祝儀を多めに包みました

ヒロキ

ユウはそれを使ってウェディングフォトプランをワンランク上の物にあげ、

ヒロキ

素敵なウェディング写真を撮って、俺に送ってきました

ヒロキ

ウェディング写真のユウは本当に綺麗で、感慨深いものがありました

ヒロキ

血の繋がった俺の娘も横からそれを見て、

ヒロキ

『お姉ちゃん綺麗だねー』と言っていました

ヒロキ

『私もお姉ちゃんみたいなドレスを着たい』そうです

ヒロキ

この子がお嫁に行く時は、俺は泣いてしまうんだろうな…

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タナカトシキ

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