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7 - 第7話

♥

336

2025年03月06日

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仕事終わり、今日は若井が休みだったから久しぶりに一人で帰る。

ここ最近、若井とたくさんお話したり一緒に帰ってたから新鮮な気持ちだ。

エントランスから出ると、後ろから聞きなれた声がした。

振り向くと、そこには元貴が居た。

涼架

…元貴?

元貴

…久しぶり

最近あまり顔を合わせていなかったのに、急にこうして話しかけられるとびっくりする。

元貴の表情はどこか柔らかく優しい雰囲気を纏ってる。

元貴

もう仕事終わった?

元貴

それなら、一緒に帰らない?

涼架

え、でも…

元貴

久しぶりに涼ちゃんとゆっくり話しながら歩きたいんだよね

そう言いながら僕の頭をふわりと優しく撫でた。

涼架

(え、?!)

今までこんなふうに触れられたことなんて、あったっけ?

一瞬体が固まった。

元貴

俺、最近涼ちゃんに嫌なことしちゃってたよね…ごめんね

元貴の申し訳なさそうな声に、胸がざわつく。

ずっと欲しかった優しさなのに、いざ向けてくれるとどうしていいのか分からなくなってしまう。

涼架

う、うん!大丈夫だよ…

思わずそう答えてしまった。

涼架

(どうして突然優しくなったの…?)

あの会社の前で元貴に会ってから、何故か元貴は前みたいに僕にも優しくしてくれるようになった。

元貴

今日寒いって!これ貸すからちゃんと着てね?

元貴

最近ちゃんと食べてんの?俺が作るからそこで待ってて

ふとした瞬間の優しさ

思わせぶりにも見える言葉。

これじゃあまるで、僕の事を離したくないって訴えかけてるみたいだ…。

でも

涼架

(本当に、前の元貴に戻っただけなの…?)

嬉しいはずなのに心のどこかで違和感が拭えない。

元貴が優しくなってから少し経っても違和感はどうしても拭えない。

モヤモヤしながら今日最後の仕事を終わらせると、隣で待っていた若井が話しかけてきた。

滉斗

もうおわり?

涼架

うん、そうだよ。先に帰ってても大丈夫だよ?

滉斗

い、いや!

滉斗

…最近元貴と一緒に帰ってるよね、今日も元貴と?

涼架

ううん、今日は違うよ

滉斗

っ!それなら今日一緒に帰らない?

涼架

いいよ、久しぶりな感じだね!

滉斗

俺先に外で待ってるから!

そう言うと走って去ってしまった。

涼架

…よし、早く仕事終わらせよう!

・ ・ ・ ・

走ってエントランスから出ると、若井がスタバを持って待っていた。

滉斗

お疲れ〜、はいこれ!

涼架

えっ!いいの?

滉斗

涼ちゃん最近頑張ってるからね!

滉斗

さ、行こう?

若井からコーヒーを受け取り、並んで歩いていく。

夜風が少し冷たくて無意識に腕をさすった。

滉斗

寒い?

涼架

ううん、大丈夫だよ!

慌てて否定するも、若井は何も言わず自分のジャケットを脱いで僕にかけてくれた。

涼架

えっ!いいよ!

涼架

若井が寒いよ!

滉斗

いいって!

滉斗

俺暑がりだし

確かに…と思いつつお言葉に甘えて受け取る。

若井の優しさに触れる度、胸が暖かくなる。

でもそれが僕を逆に混乱させる。

涼架

(元貴といる時、こんなに胸が暖かくなる事あったっけ…?)

そんなことを考えてると不意にスマホが震えた。

ポケットから取り出すと、元貴から電話がかかってきていた。

指が一瞬止まる。

涼架

(出なきゃ…!)

そう思うのに、指が動かない。

滉斗

…出なくていいの?

若井が歩くのをやめて僕を見つめる。

涼架

小さく息を吸った。

そして、

スマホの画面を伏せた。

涼架

…うん、いいんだ

自分の選択に胸が少し傷んだ。

でもそれと同じくらいどこかホッとした自分もいる。

涼架

(僕、どうしたいんだろう…)

答えは出ないまま、若井と一緒に歩き出した。

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