夏菜これあげる。
わぁ、ありがとう!
俺のとお揃いだ。
うん、 大切にするね!!
しまった! 今日はバス停で夏菜に 呼ばれてたんだった。
急がないとっ!
タッ
タッ
タッ
あっ、夏菜もう来て
キキィー!!
ドゴンッ!!
…えっ…
…夏…菜?
…なんで…どう…し…て…
ああああああああぁぁぁっ!!
蓮
…そう…か…
蓮
夏菜は…俺の…
蓮
幼じみだ。
蓮は、 夏菜との記憶を 思い出した。
夏菜と一緒にいた記憶。
夏菜に手作りのお守りを あげた記憶。
そして、
バス停の前、 蓮の目の前で事故が 起こり、夏菜が 死んでしまった記憶を。
蓮
ああ、そうか。
蓮
血の流れた中の
夏菜の姿を
夏菜の姿を
蓮
俺は忘れたかったんだ。
蓮
夏菜を思い出せば、
辛さや怖さを思い出すから。
辛さや怖さを思い出すから。
蓮
だから俺は…
大切な人の記憶を 忘れてしまった。
蓮
夏菜…ごめんな。
明日の朝、 始発のバスに乗ります。
ふと蓮の頭の中に 夏菜の言葉を思い出す。
蓮
行かないとな。
〜バス停~
ダッ
ダッ
ダッ
蓮
…いた。
蓮
夏菜っ!!
夏菜
蓮さん!?
夏菜
なんでここに
来たんですか?
来たんですか?
蓮
やっと…思い出したよ。
夏菜
!!
蓮
ずっと待って
くれたんだな。
くれたんだな。
蓮
待たせてごめんな。
夏菜
……。
夏菜
…やっと…来てくれた。
夏菜
相変わらずだね。
蓮君。
蓮君。
夏菜
昨日、蓮君にやっと会えた
のに蓮君、忘れてるから
悲しかったよ。
のに蓮君、忘れてるから
悲しかったよ。
夏菜
だけど、思い出して
くれたんね。
くれたんね。
蓮
…ごめんな。
夏菜が死んだ事が辛くて
忘れていたんだ。
夏菜が死んだ事が辛くて
忘れていたんだ。
蓮
大切な幼なじみなのに
夏菜
良いよ。
最後のお別れにまでに
思い出してここに
来てくれんだから
私、嬉しいよ!
最後のお別れにまでに
思い出してここに
来てくれんだから
私、嬉しいよ!
蓮
最後の別れ?
夏菜
うん、
このバス停の噂、
覚えてる?
このバス停の噂、
覚えてる?
蓮
5:00になると、
天国に行けるバスが
停るってやつか?
天国に行けるバスが
停るってやつか?
夏菜
そう。
夏菜
私、今日、
天国に行くんだ。
天国に行くんだ。
蓮
…もう会えなくなるのか?
夏菜
……そうだね。
夏菜
あっ、きた。
プシュ〜
バタンッ
天国行きと書かれた バスがバス停に停まり、 扉が開いた。
夏菜
もう行かないと。
蓮
待ってっ!
俺も
俺も
夏菜
蓮君、
駄目だよ。
駄目だよ。
夏菜
これ乗ったら、
死んでしまうよ。
死んでしまうよ。
蓮
それでもいいっ
蓮
夏菜と一緒にいたい!
蓮
もういなくならない
でくれ。
でくれ。
夏菜
……蓮君。
夏菜
蓮君はまだ死んじゃ駄目。
私の分まで生きてほしい。
私の分まで生きてほしい。
夏菜
私はそばにはいないけど
天国でちゃんと見守って
いるよ。
天国でちゃんと見守って
いるよ。
夏菜
蓮君が歳をとって
天国に来るのを
ずっと待っているから、
天国に来るのを
ずっと待っているから、
夏菜
それまで生きて。
蓮
夏…菜…
夏菜
もう私を忘れないでね。
夏菜
確かに思い出すのは、
辛いかもしれない。
辛いかもしれない。
夏菜
だけど、
私達の思い出は
楽しかった事がいっぱい
だったじゃない。
私達の思い出は
楽しかった事がいっぱい
だったじゃない。
夏菜
なのに、
忘れたら悲しいよ。
忘れたら悲しいよ。
蓮
…わかった。
蓮
もう忘れない。
蓮
俺、
夏菜の分まで
生きるから、
夏菜の分まで
生きるから、
蓮
天国で待っていて
くれるか?
くれるか?
夏菜
うん、待ってる!
夏菜
もう乗らなきゃ。
夏菜
このお守りは、
持っていくね。
持っていくね。
蓮
ああ、
夏菜あげたやつだから
いいよ。
夏菜あげたやつだから
いいよ。
夏菜
うん、
ありがとう。
大事にするよ。
ありがとう。
大事にするよ。
夏菜
最後に蓮君に
会えて嬉しかった。
会えて嬉しかった。
夏菜
思い出してくれて
ありがとう。
ありがとう。
蓮
こちらこそ、
思い出すきっかけを
ありがとうな。
思い出すきっかけを
ありがとうな。
夏菜
蓮、大好きだよ。
蓮
うん。俺も
夏菜
じゃあ、
またね
バタンッ
天国行きのバスが 動き出した。
夏菜を乗せて 空へと走っていく。
蓮
……。
蓮
また…な。
蓮は、 バスが見えなくなるまで 見送った。