-闇に咲く月-

キルアと離れて、仕事してるときです

荒野に風が走り、静寂だけが残っていた。 　倒れている武装集団の男たちは、誰も起き上がれない。 　ルナはその中心で、返り血のついた頬を指でそっと払い落とした。

冷たい声が風に溶ける。 　その瞬間だった。 　――空気が、急に重くなる。 　何かが近づいてくる。 　圧とも呼べる存在感。 　敵意ではない。だが、危険そのもの。

ルナはゆっくりと顔を上げた。

砂煙の向こう――十二の影。 　やがて現れたその姿に、彼女は眉をわずかに動かす。

先頭にいたノブナガがニヤリと笑った。

フェイタンは片言のまま、目だけでルナを斬りつけるように観察する。

ウヴォーギンは豪快に腕を組んで笑い、 　マチは糸を指に巻きながら無言のまま見つめ、 　シャルナークは「データ以上だね」と端末を操作していた。

十二人、全員の視線がルナに向いている。

そして――その中心に、団長クロロ＝ルシルフル。

静かで、丁寧で、それでいて鋭い声。

クロロは微笑む。

旅団の何人かがざわつく。

ルナは静かに目を伏せ、そしてふっと笑った。

旅団の空気が一瞬止まる。 　だがルナは、ゆっくり顔を上げた。

それは静かで優しい声なのに、挑発そのものだった。

ノブナガが刀に手をかけるが、

クロロが静かに制した。

その動きだけで空気が変わる。

クロロが一歩前に出る。 　ルナはわずかに体を傾け、構えを取る。

砂が鳴り、風が止まる。 　次の瞬間―― 　二人の姿が、消えた。

衝撃波が遅れて地面を砕き、砂煙が舞い上がる。

フェイタンの片言が、静かに落ちた。 　砂煙の中、ルナの声だけが鮮明に響く。