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夢野 夢子

浦田先生

浦田 王子

お、夢野か。どうした?

夢野 夢子

あの、少し時間ありますか?

浦田 王子

おう。ちょっと待ってろ

そう言うと、浦田先生は教卓から大きな辞書を手に持った。 手の隙間から見える「oji urata」とローマ字で書かれた名前を見て私の鼓動は小さく鳴る。

浦田 王子

よし。演習室でいいか?

夢野 夢子

あ、はい!

私は胸を鳴らしながら先生の後ろを歩く。先生はまるで呪文のように授業で習っている百人一首をブツブツと詠んだ。

夢野 夢子

カナヘビ

浦田 王子

ん?なんか言った?

夢野 夢子

い、いえ!!何も言ってないです……。

浦田 王子

そうか

先生の百人一首を唱える低く落ち着く声にときめいてつい口に出してしまった。 私は胸がなるとキュンではなく、カナヘビって鳴るのだ。

浦田 王子

夢野、最近どうだ?

夢野 夢子

え!えっと……元気です

浦田 王子

元気かー。まぁ見てるからそれは知ってるんだけど

夢野 夢子

そ、そうですよね!すみません

浦田 王子

ずっと見てるよ

夢野 夢子

え……?

浦田 王子

授業中もずっとお前のこと見てた

浦田 王子

好きなんだよ

夢野 夢子

……!?

浦田 王子

好きなんだ

浦田 王子

好きで仕方ないんだよ

夢野 夢子

せ、先生!あの、私も…!

浦田 王子

お前の膝小僧

夢野 夢子

……ひざ?

浦田 王子

そう。俺、膝小僧が好きなんだよ

夢野 夢子

あ、あの…膝フェチってことですか?

浦田 王子

いや

浦田 王子

膝小僧が好きなんだよ

夢野 夢子

どういうこと?

浦田 王子

だから、膝小僧が好きなんだって

夢野 夢子

先生、ごめんなさい。あの、膝小僧じゃなくて、普通に膝って言ってもらえますか……?その、混乱してて……。

浦田 王子

あぁ。ごめんな

浦田 王子

俺は膝が好きなんだよ

夢野 夢子

分かんない

夢野 夢子

何も分かんない

浦田 王子

俺が好きなのは膝で、人じゃないって事だよ

夢野 夢子

……本当ですか?

浦田 王子

あぁ。膝しか愛せないんだよ

夢野 夢子

じゃあ、その……。恋愛経験ないってことですか……?

浦田 王子

それはもちろんあるよ。
元膝100人はいるな

元膝?あー、元カノってことか。

夢野 夢子

膝と何するんですか?

浦田 王子

生徒にそう言う話は出来るわけないだろ

夢野 夢子

いや、気になります…

浦田 王子

ダメだ。教師として失格だ

もう色々終わってると思うけど…

夢野 夢子

あの、先生結婚してますよね?

浦田 王子

奥さんと子供いるよ

夢野 夢子

え、子供ってどういうことですか?

浦田 王子

去年産まれたばかりなんだ

浦田 王子

すごく可愛くてな。早く家帰りたくて、今から退職届を出しに行こうとしていたんだ。とんだ邪魔が入ったな!

夢野 夢子

どうやって子供出来たんですか?

浦田 王子

どうやってって……そういう話はしないって言っただろ

夢野 夢子

作った……?

浦田 王子

そうだな。でも、まぁ膝作り?

夢野 夢子

膝作り?

浦田 王子

もう俺の話はいいって

浦田 王子

そういえば、お前話あるんだろ?

夢野 夢子

あ……。そうでした…

浦田 王子

俺の話でもう2日経ってるぞ。帰らなくていいのか?

先生の膝の話が気になって話し込んでしまった

夢野 夢子

あの…

浦田 王子

なんだ?

夢野 夢子

私、浦田先生の事が好きです

私はカナヘビと鳴り響く胸の高鳴りを一生懸命抑えた

浦田 王子

ありがとう

浦田 王子

でも、どうして?

夢野 夢子

先生の膝の話を聞いて、すごい私を愛してくれそうな気がして……。

浦田 王子

そうか

浦田 王子

お前はどうしたい?

夢野 夢子

せ、先生の恋人……あっいや。先生の恋膝になりたいです!

浦田 王子

それはだめだ

夢野 夢子

なんでですか?!

浦田 王子

俺、前見たんだよ

浦田 王子

お前が陸上部の陸野 上(りくの じょう)の肘にしがみついていたところ

夢野 夢子

!?

浦田 王子

お前、あいつのこと好きなんだろ?

浦田 王子

膝より肘なんだろ?

夢野 夢子

そ、それは……。

浦田 王子

俺は肘好きと一緒に人生を送りたくない

浦田 王子

消えてくれ

浦田 王子

今すぐ俺の前から消えてくれ

夢野 夢子

先生の馬鹿!

私は溢れる涙を拭いながら走った

夢野 夢子

先生なんか知らない

夢野 夢子

膝好きの先生なんか大嫌い

私は急いで靴を履き替えていると、陸野が私の前に立っていた

陸野 上

夢野?

夢野 夢子

陸野……。なんで

陸野 上

お前が泣いてると思って来たんだよ

夢野 夢子

なんで……

陸野 上

ほら。俺の肘、新しい機能つけたって言っただろ?
だから夢野の気持ちも分かるようになったんだ。
時代ってすげーよなぁ。

夢野 夢子

陸野……

陸野 上

夢野、浦田先生にもう一度話してこい

夢野 夢子

やだよ……。振られちゃったし。それに私、膝より肘が…

陸野 上

あんなに浦田のこと好きって言ってたのに嫌いなんてそんなこと言うな

陸野 上

お前は大丈夫だよ。きっと浦田のことまだ好きだよ

夢野 夢子

陸野…

私は抑えていた涙を思いっきり流した

夢野 夢子

ありがとう、陸野。

夢野 夢子

私、行ってくる

陸野 上

おう!頑張れよ!

陸野 上

お前と先生が付き合うことになったら、ご褒美に俺の肘で抱いてやる

夢野 夢子

うん!たのしみにしてる!

私は走って先生を探した。 でも、さっきの廊下にはいなかった

夢野 夢子

先生どこー?

夢野 夢子

どこにいるの?

夢野 夢子

……ん?

何か声が聞こえて声のする方に向かった。辿り着いた先は教員用トイレだった。

夢野 夢子

先生……?

私はトイレのドアを少し開けて覗いた

夢野 夢子

!?

浦田 王子

俺……お前の左足の薬指が好きなんだ

先生は、ハアハアと息を漏らしながら、副担の爪野爪子先生の左足薬指と真っ最中だった

夢野 夢子

……

あんなに膝愛を語っていたくせに、簡単に浮気するなんて……。

でも……そんな先生も大好き

夢野 夢子

カナヘビ。カナカナ。

君の心に触れたくて〜何度でも

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