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モノクロ

第1話 - モノクロ

2020年04月05日

#長編

#ホラー

21st ROCKBAND

ある村にとても優しい老夫婦がいた

とても親切で、笑顔を絶やさず、誰でも分け隔てなく接する

人を疑わず、みんなを愛する

そんな老夫婦で、村の尊敬を集めた

そんな老夫婦をこの物語では「良老夫婦」と呼び、それぞれ「良婆」「良爺」と呼ぶ

しかし、そんな老夫婦を快く思わない人もごく少数だが存在した

それが「悪老夫婦」だ

お察しの通りこの物語では「悪婆」「悪爺」と呼ぶ

これはそんな良老夫婦と悪老夫婦の物語。

良老夫婦は「山田」、悪老夫婦は「木下」が本名です。

良爺

いやぁ、婆さん、やっぱり朝の散歩は気持ちが良いねぇ。

良婆

そうねぇ、これがないと1日が始まらない気がしますねぇ。

村人

山田さん、おはようございます!

良爺

やぁ、おはよう。

犬

ﾜﾝ!

良婆

よしよしよしよし

村人

ははは、ありがとうございます。

村人

毎日会うからすっかり懐いちゃって

良婆

可愛いねぇ

良爺

婆さんは動物好きじゃからなぁ、ははは

村人

おはようございます、山田さん。

良婆

あら、おはよう。

良爺

あ、おはよう。

良爺

新婚の奥さんとは上手くやってるかい？

村人

ははは、おかげさまで。

村人

「あの山田さんみたいな家庭にしようね」っていつも言ってますよ。

良爺

ははは、それは嬉しいねぇ、婆さん

良婆

ねぇ。

良爺

頑張るんだよ。

村人

ありがとうございます!

悪爺

ぐぬぅ…

悪婆

どうしたんですか、爺さん

悪爺

あの山田が憎いんだ!

悪爺

なんであいつらにはあんなに人が集うんだ？

悪爺

くそぉ、腹が立ってきた!

悪爺

もう我慢できん!

悪爺

明日にでも殺してやりたい!

悪婆

でも爺さん、あの人達が死んできっと最初に疑われるのは私たちですよ。

悪爺

バレないように殺せばいいだろう。

悪婆

でもあの人達、毎日朝の散歩に行っているみたいですよ。

悪婆

あの人達が来なかったら、他の村人が探すと思うんですが。

悪爺

ならば、あいつらの家から金を盗むんだ。

悪爺

あいつら、どうやら人を疑わないらしいじゃねぇか。

悪爺

あいつらなら、自分たちが使ったと思うんじゃねぇか？

悪婆

それならまだ大丈夫そうですけど

悪婆

どうやって家に入るんです？

悪爺

俺には1つ作戦がある。

かくかくしかじか

悪婆

それは名案ですね

悪爺

明日にでもやってやろう

悪爺

フフフ…

その日の午後

良爺

今日ももう日が暮れるのぉ。

良婆

ほんとですねぇ。

良婆

歳を取ると1日が早いですねぇ。

良爺

そうじゃのぉ。

ｺﾝｺﾝ

良爺

婆さん、誰か来たようじゃ。

良婆

誰でしょうかねぇ。

ｶﾞﾁｬ

良婆

あら、木下さん、どうかしましたか？

悪爺

いや、ちょっと久々に話したいと思ってな。

良婆

あら、そうですか。

良婆

どうぞお上がり下さい。

悪爺

おじゃまする。

良爺

あら、木下さん、いらっしゃい。

悪爺

やぁ、爺さん。

良爺

久しぶりじゃのぉ。

悪爺

そうだな。

悪爺

久々に話したくなってな。

悪爺

あ、これは手土産だ。

良婆

まぁ、お酒とお菓子。

悪爺

あと、これはプレゼントだ。

悪爺

爺さん用の帽子と婆さん用の髪飾りだ。

良爺

おぉ、これは嬉しい。

良婆

大事に使わさせてもらうわ。

良爺

ありがとね、木下さん。

悪爺

いやいや

悪爺

まぁ、飲もうじゃないか。

良婆

わたしも料理の準備しますねぇ。

数時間後

良婆

あら、もうこんな時間。

悪爺

申し訳ない、こんな遅い時間まで。

良爺

いやいや、楽しかったですよぉ。

悪爺

申し訳ないが、外は暗くて見えん。

悪爺

一晩、泊まらせてくれんか？

良婆

大丈夫ですよ。

良婆

お布団の準備しますねぇ。

良爺

木下さん、明日の朝になったら一緒に散歩に行きませんか？

悪爺

いいな。ご一緒させてもらうとするか。

良爺

決まりですねぇ。

良婆

木下さん、お布団の準備出来ましたよ。

良爺

では、また明日。

良爺

おやすみなさい。

良婆

おやすみなさい。

悪爺

ありがとう、おやすみ。

真夜中

悪爺

（しめしめ）

悪爺

（ぐっすり寝てやがる）

悪爺

（馬鹿め）

悪爺

（もうすぐ婆さんが来る時間だ）

悪爺

（来たら、俺が中から鍵を開けて2人で持てるだけの金や物を持って逃げる）

悪爺

（完璧な計画だ）

ｺﾝｺﾝ

悪爺

（来たか）

ｶﾞﾁｬ

悪爺

（よし）

悪爺

（まずどの部屋から物色するかだな）

悪婆

（そうですね）

良婆

？

良婆

あら、木下さん、お帰りですか？

悪爺

！？

良婆

爺さん、起きてください。

良爺

ん

良爺

あ、お迎えが来たんですか。

良爺

気をつけて帰って下さい。

良爺

今日はとても楽しかったですよ。

良爺

今度は私たちが木下さんの家にお邪魔させてください。

悪爺

（バレたら仕方がない）

悪爺

（帰るぞ）

悪婆

（そうですね）

悪爺

いやぁ、起こしたら申し訳ないと思ったんだがな。

良婆

あら、お気遣いありがとうございます。

悪爺

また今度会おう。

悪爺

今日はどうもありがとう。

良爺

さようなら。

良婆

さようなら、木下さん。

悪爺

くそぉ…

悪爺

あのババァ、何で起きやがるんだ…

悪婆

また明日行きます？

悪爺

いや、流石に怪しまれるんじゃないか？

悪婆

でも、あの人達、人を疑わないって昨日…

悪爺

いや、周りの奴らだよ。

悪爺

あいつらはお喋りだから、きっと今日のことを話すぞ。

悪爺

2日も連続して家に行ったら、周りの奴らに怪しまれるに違いない。

悪婆

厄介ですね。

悪爺

そうだな。

悪爺

まぁ少し大人しく様子を見よう。

良爺

やあ、おはよう。

村人

あ、おはようございます。

良爺

聞いてくれよ、昨日ねぇ。

村人

はい

良爺

木下さんが遊びに来てくれたんだよ。

村人

えぇっ

良爺

珍しいでしょ？

村人

は、はい。

良爺

とても楽しかったんだよぉ。

村人

（まぁ楽しそうだからいいか）

良爺

君も話してみたらどうだい？

村人

わ、分かりました…

村人

（山田さん大丈夫か）

1ヶ月後

ｺﾝｺﾝ

悪婆

誰か来ましたね

ｶﾞﾁｬ

良爺

木下さん、遊びに来ましたよぉ。

良婆

こんばんはー。

悪婆

あら、爺さーん。

悪婆

山田さんですよー。

悪爺

本当か！

悪婆

あ、お上がり下さい。

良爺

お邪魔しますねぇ。

良婆

失礼しまーす。

悪爺

ま、座ってくれ。

悪爺

あ、その帽子は俺がプレゼントした…

良爺

そうなんですよ。

良爺

とても気に入ってるんです。

良婆

わたしの髪飾りもですよ。

悪爺

いや、嬉しい限りだ。

良爺

それで、今日はお返しとしてね、

良爺

プレゼントを持って来ましたよぉ。

良爺

腕時計とイヤリングです。

悪婆

あらこれまた素敵な…

悪爺

申し訳ない、こんな高価なもの

良爺

とんでもないですよぉ。

悪婆

使わせてもらうわ。

悪爺

ありがとう。

良爺

酒もたくさん持って来ました。

悪爺

それは嬉しい。

悪爺

早速飲もうとしよう。

悪爺

婆さん、どんどん料理を。

悪婆

はい!

良爺

ありがとうございます。

良婆

ちょっとトイレ借りていいですか？

悪婆

どうぞー。

悪婆

そこを曲がって右ですよー。

実は極悪婆

ありがとうございます。

良婆

あら、もうこんな時間。

良爺

木下さん、今日はありがとうございました。

悪爺

いや、泊まっていったらどうだ？

悪爺

前俺も泊めてもらったし

良婆

いやいや、申し訳ないですよぉ。

悪婆

いや、是非是非どうぞ！

悪婆

寝床の準備しますね。

良爺

じゃあ、お言葉に甘えて。

悪爺

（いい機会じゃ。）

悪爺

（明日の朝こいつらが散歩に行ってる間に）

悪爺

（家に行って盗んでやる）

悪婆

（そうですね）

良婆

何から何まで申し訳ないですねぇ。

良爺

いや本当にねぇ。

悪爺

いや、大丈夫だ。

悪爺

俺も泊まってくれて嬉しいよ。

良婆

ありがとうございます。

悪婆

準備できましたよ。

良爺

ありがとうございます。

悪爺

じゃ、また明日。

良爺

おやすみなさい。

翌朝

悪爺

あぁ、よく寝た。

悪爺

（やっと今日決行できるのか）

悪爺

（オラ、ワクワクすっぞ）

悪婆

爺さん、山田さんがいません!

悪爺

ん？

悪爺

待て

悪爺

金庫が開いてるじゃないか!

悪爺

どういうことだ？

真夜中

実は極悪爺

（抜け抜けと寝てやがる）

実は極悪爺

（まぁ昨日あれだけ酒を飲ませたからな）

実は極悪爺

（何も考えず飲み干しやがって）

実は極悪爺

（馬鹿め）

実は極悪婆

（どこから行く？）

実は極悪婆

（さっきトイレ行くふりして偵察したら）

実は極悪婆

（奥の部屋に金庫があったけど）

実は極悪爺

（そこから行こうか）

奥の部屋へ

実は極悪爺

（これか）

実は極悪爺

（当然だが鍵かかかってる）

実は極悪婆

（大丈夫）

実は極悪婆

（これがあるから）

実は極悪爺

（髪飾りのヘアピンか）

実は極悪爺

（木下のプレゼントで木下の物を盗む…）

実は極悪爺

（面白いじゃないか）

実は極悪婆

（開いたわ）

実は極悪爺

（おぉこれはこれは）

実は極悪婆

（高価なものがいっぱいね）

実は極悪爺

（よし、これだけあれば十分だ）

実は極悪爺

（ここから離れよう）

実は極悪婆

（そうね）

悪爺

あの野郎共、人格者のふりして…

悪爺

クソッタレが…

悪婆

ど、どうします？

悪爺

取り敢えず、村人全員に報告するんだ

悪爺

あいつらがどれだけ愚劣で卑怯な人間か

悪爺

明らかにしよう

村人

え、見て

村人

あれ木下さんじゃん

村人

珍しいね…

悪爺

おい、お前ら、聞いてくれ!

村人

ど、どうしました？

悪爺

山田が俺の家から金とか物を盗んだんだ!

村人

は？

村人

またなんか言ってるよ

悪爺

嘘じゃない、信じてくれ！

村人

どうせまたでっち上げだって

村人

山田さんがそんな事する人とは思えないんですけど…

悪爺

だろ？俺もそう思ってた

悪爺

だがこれは真実なんだ！

村人

山田さんをハメようったってそうはいきませんよ

村人

信用できねぇよお前なんか

村人

どっか行け

悪爺

……

悪婆

どうでした？

悪爺

駄目だった…

悪爺

あいつら山田がそんなことするわけない

悪爺

って言って俺の話聞かない

悪婆

そうですか…

悪婆

どうします？

悪爺

もうこの村に俺たちの居場所はない

悪爺

残った少ない金で引っ越そう

悪爺

そしてそこで仮面を着けて生きる

悪婆

どういうことですか？

悪爺

良い人のふりをして生きるってことだ

悪爺

あの山田のようにな

悪爺

そして盗みを犯す

悪爺

んで幸せに暮らすんだ

悪爺

あの山田のようにな

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