俺☆
アイテム: SCP-1933 体組織による試験の記録: 試料を1LのSCP-1933の体液に漬けます。試料は完全にアイリッシュクリームに変化します。 破壊試験の記録: 3ヶ月以上かけて200Lの体液をSCP-1933から採取しました。大量の流体をSCP-682の収容室に入れました。 SCP-682は素早く流体を摂取し、相当量のアイリッシュクリームを摂取した後、人間がそうなるよりも遥かに早く酩酊した様子を示しました。これはSCP-682の解剖学的構造の一部がアイリッシュクリームに変質したことによる結果であると仮定されました。しかし、死亡はせず、SCP-682は流体を摂取し続けます。流体が全て摂取し終えると、SCP-682は床に倒れて断続的に顔と腹部を引っ掻きながら大声を出しました。この5分後、SCP-682はSCP-1933の体液と思われる物質を吐き出しましたが、その量は摂取量よりも多量でした。また、収容室の床と壁はこの吐瀉物と接触すると即座にアイリッシュクリームに変化し、構造物の破壊と収容違反につながりました。実験は中止。残った吐瀉物は焼却されました。その後SCP-682に酩酊の様子は見られませんでした。
アイテム: SCP-507 体組織による試験の記録: N/A 破壊試験の記録: SCP-507は別の収容違反の間に負った身体的損傷によってSCP-682が不活性状態になっている間にSCP-682の左前脚にナイロンジッパーで身体を結び付けられました。付き添いの職員はSCP-507が括りつけられている脚を除く、SCP-682の身体に高圧ホースで塩酸を噴射し続けました。7時間52分後、SCP-507の異常特性が起動し、SCP-682と共に消えました。 SCP-507は63時間後に8,000km離れたサイト██近辺の無人域に再出現し、大きな牙と一対の翼の痕があること以外はSCP-682と同一の実体に実験開始時に収容職員によって付けられたものとは別の色のナイロンジッパーで括りつけられていました。手書きのメモがSCP-507の胸にピンで留められており、以下の内容が記されていました。 親愛なるユニバース5802-シグマ-ブルー-ロメオへ これは今の貴様らの問題だ、ふざけやがって。
アイテム: SCP-2599 体組織による試験の記録: N/A 破壊試験の記録: SCP-2599はSCP-682を"200%死ぬまで"攻撃するよう指示されました。SCP-2599はSCP-682と42分間戦闘し、最終的にSCP-682の3本の脚が切断され、喉は潰され、両眼球は断裂されました。それからSCP-2599はSCP-682の頭部を掴み、SCP-682の身体から引き抜こうとする素振りを見せました。これに反応してSCP-682は"殺せ、内臓を引き出せ、やれ"と声を上げました。 SCP-2599は即座にSCP-682を解放し、保安職員が実験室から移動させるまで静止したままでした。その後、怪我から再生する前にSCP-682を破壊させる試みは効果がありませんでした。 メモ: "殺せ"という具体的な命令が"200%死ぬまで攻撃しろ"という抽象的な命令より優先されたと推測されます。
アイテム: SCP-513 体組織による試験の記録: N/A 破壊試験の記録: <記録開始> <██/1/22、1500> SCP-682は、焼却により一時的に無力化され、ビデオで監視された防音収容室に移されました。 <██/1/22、1600> ロボットアームに取り付けられたSCP-513が試験室に導入されました。 <██/1/22、1630> SCP-682は完全に再生しました。 <██/1/22、1635> SCP-513がロボットの腕を介して3回鳴り、SCP-682はほえると「耳」を覆いました (解剖学的構造の違いと外見上の耳の欠如のため、頭の側面を覆う動きが無事これにあたると仮定しました)。 <██/1/22、1636> SCP-513およびロボットアームが試験室から引き戻され、収容室に戻されました。 <██/1/22、1640> SCP-682は「耳」を覆うのを止め、試験室内を歩き回り始めます。 <██/1/23、1640> SCP-682は歩き回っています <██/1/24、1640> SCP-682は歩き回っています <██/1/25、1640> SCP-682は歩き回っています <██/1/26、1640> 霧状にされた大量の鎮静剤と精神安定剤が、通気口を通して収容室に注入されました。 <██/1/26、1645> SCP-682は意識を失いました。 <██/1/26、1646> SCP-682は夢中歩行を開始しました。 <██/1/26、1647> SCP-682収容違反。SCP-682に類似した、血の気がなく、痩せていて、大きな爪を持つ実体が収容サイトを徘徊している幻覚は、現場のすべての職員が経験したと伝えられました。セキュリティ映像は現場にそのような存在があったことを示していません。集団ヒステリーのために、セキュリティチームはSCP-682の収容を再確立することができず、何もない壁に繰り返し発砲する様子が映像で見られました。 <██/1/26、1800> HUDビデオ対応の密閉型ヘルメットが装備された、機動部隊エータ-10 (“シー・ノー・イーブル”) が配備されました。SCP-682はSCP-513の収容室に位置しており、まだ意識不明のままですが、SCP-513を収容しているゼラチンのブロックを囲うように身体を丸めています。 <██/1/26、1830> SCP-682は、高圧HClスプレーによって再収容され、覚醒しました。SCP-682は「とても素敵な夢」を見ていたのにと不満を漏らしました。 <記録終了> SCP-513とSCP-682の双方の継続的な監視と、互いを引き離して行われた検査は、いずれのオブジェクトも影響が持続していないことを示しました。 事後調査の報告: 初期のSCP-682の有害反応と思しき挙動に基づけば、SCP-682がSCP-513を自身に取り入れたのか、それともその作用が逆に働いたのかはわかりません。いずれにせよ現場職員の67%とサイトにいたDクラスの45%が失われた事実を考慮し、SCP-682に認識災害性オブジェクトを用いる試験は今回何が起きたのかを把握するまで中止することを要請します。 - ケルボロス博士 承認。 - O5-4
SCP-3812
ブライト博士の楽観的な日々
第一章: ”神”の御心のままに
「もう一度言うぞ、私はこの実験方針への反対を正式に表明する」そう私は言って、サメット博士の意見に対して申し入れた。やり手の新人研究者である彼は、どうやら昇進するには上位研究者に取り入るのが最もふさわしい方法であると思っているらしい。奴らの中にごますり野郎が好きな奴はいないがね。
「繰り返しますが、貴方の反論は把握していますよ、963。しかしながらこの問題について、O5-1の全面的な協力を得ています。SCP-682はあまりにも危険すぎる、我々はあらゆることを試さねばならないんです。」私は、彼に数字で呼ばれて苛立った。どうしてあいつらは同じ間違いを繰り返すんだ?
「サメット君。私はブライト博士だ。そしてこっちが…」首飾りを突き出す。「…SCP-963だ。この二つを混同するのは控えてくれ。でないと、グランガン博士が君の足に三発ほどお見舞いすることになる。なに、簡単なことだよ。分かっているね。」ゆったりと微笑みながら、私は助手に合図を送った。なんと言われようと、私は管轄下の研究スタッフにあだ名をつけたことはないが、他の奴らは研究スタッフをLucky Bunch――幸せ者と呼んでいて、定着してしまっている。そのあだ名は、私の管理下に入った者が長生きする傾向にあるという事実からきているのだろうが、恐らく私が時折猿のような姿をしており、首飾りの影響に頭を悩ませていることに対する皮肉でもあるだろう。愉快だね、ああ実に愉快だ。
サメットは私に視線を戻す前に、不安げにグランガンを盗み見た。「しかしながら、9……」私は咳払いをした。これは別にグランガンがポケットに手を滑り込ませるのを視界の隅で捉えたからではない。「……ブライト、我々は」私は奴の間違いを訂正させるために、再び話の腰を折った。
SCP-3812
「ブライト博士と呼びたまえ。私とともに仕事をできる人間のみが研究成果をあげられる。まぁ、君が私と一緒に仕事ができるほどここに長く居られるとは思えないがね」サメットは私の言葉に明らかに青くなった。
「お、脅しか?」彼は怒りを滲ませて質問した。
「まさか!可能性の話に過ぎない。君のばかげた企てが成功する可能性は極めて低い、そうだろ?確率的に…」私は、既に資料を持って控えていた助手に目配せした。文字というものは私の求めるものを十分に教えてくれる。数字に目を通すだけで、記憶を整理できた。「……512分の1でしか成功しない。事実、君のその研究に投資してくれるような人は…」もう一度資料に目を通す。「死んだ人間くらいだ。ははは、滑稽だね。そんなことはどうでもいい。343は…」
「ブライト博士!私は貴方の悲劇的な観測や消極的な態度は必要としていない。私が貴方に望むのは結果を出すこと、そして貴方のお友達であるSCPに協力するよう伝えることだけだ。貴方はこの望みを受け入れるのか、受け入れないのか、どちらだ?」彼の化けの皮が剥がれ始めた。こうなったら止まらない。私には彼を追い出すだけの金はある、しかし厳密に言うと、この研究では彼の方がかろうじて地位が上だった。だから彼の望みを受け入れることにした。
「勿論、受け入れるとも」私は頷いた。心を非情にしてSCP-343の収容コンテナのドアを通った。SCP-343……彼の存在は、私をとても苛立たせるものだった。落ち着いた満足感のような感情が私の中から湧き出たが、拒絶する。幸福感や満足感に包まれている時に、冷静沈着で居るのは難しいが、私はそれができるよう長年訓練してきた。とりわけ……彼といる時は。
343に対して私が最も心を乱されるのは、たとえ私がなにをしようと、どれだけ自分にこれは策略だと言い聞かせようとも、彼が常にタバコを持ちもう片方にマティーニを持っているジョージ・バーンズの姿そのものであることだった。彼曰く、それは私を安心させるためらしいが、この生き物のやっていることは無意味だった。彼はあまりにも完璧すぎる、出来過ぎだ。
「ジャック」私が部屋に入った時、彼は悲しそうな目をして話しかけてきた。「また来てくれて嬉しいよ、色々と話さないか?」
「SCP-343。君はここ何年かこの財団に保護されているが、君自身の利用価値をまだ証明していない。」私は彼の問いを無視した。「したがって、危険なSCPの無力化実験に君を利用することが決定した。分かるね?」
SCP-3812
「なぁジャック、私はお前にとても期待している。お前はとてもお利口にできている、ははは、とても才能があるってことだ。お前には為すであろう素晴らしいプランがまだまだある。だがそれを成し遂げる為には、お前はここを出て行く必要がある。財団……彼らはお前を破滅に導くぞ、ジャック。昔はあんなにいい子だったのに」彼はジョージ・バーンズのぶっきらぼうな声、タバコを吸うさま、更には彼の居る部屋の様子まで完璧に再現していた。私が彼を受け入れられるように出来ているのだろうが、私は一切受け入れなかった。彼はSCPで、ただの生き物で、化け物、そして"神"である。私はそう簡単には手懐けられない。 「ブライト博士と呼んでくれ。それ以外の名で呼んでいい奴は居ない。」間をおかずに言った。「SCP-343、この実験に協力して頂けるかな。それとも処罰を与えようか?」私は目をそらさず、彼をじっと見つめた。アイコンタクトをするにつれて、話題を逸らす余地が無くなったのか彼の笑みが小さくなっていった。彼は特別眉をしかめる訳でもなく、深くタバコを吸った。
「お前は随分と嫌悪感を抱いているね、ジャック。それはお前を人間というよりかは化け物にするに違いない」彼がSCP-963を指差すと、私はゾッとせざるを得なかった。「お前をそれから解放して、元の寿命を取り戻させるべきだ。お前をもう一度人間に戻してあげよう」少しの間、この呪いから解放されるかもしれないという希望が浮かんだ。私は遂に死ねるかもしれない。だが、そうはしない。彼から目線を逸らして、私は自分の感情を抑え込んだ。彼にそれをする意思があろうとなかろうと、彼にはそれが可能なように思われた。「….いや、お前はそうはしないだろうな。まぁいいさ。ジャック、実験がなんであれ私はお前の助けになろう。ただし、私にお願いできればね。」
彼は、私がそんなことは言えないと思っているに違いなかった。お願いなど、私の品位に関わる。しかし、サメットの業績を傷つけて彼に文句を言われる方が嫌だった。「頼むよSCP-343、我々に協力して欲しい」
彼はほんの少し眉を上げた。私の”お願い”は彼を驚かせたらしい、いい気味だ。こういうことも、たまにはあっても構わないはずだ。「…よろしい」
その後、私は監視室に立って、343のいる実験室を見下ろしていた。彼は実験について自身が何をすべきかという指示を何も聞いてこなかった。なので私も彼が何の実験に協力しているのか伝えなかった。"神"の御心のままに、ね。 サメット博士は何も言わずに満足げな様子で私の側に立っていた。彼はこの実験が成功するものと思い込んでいて、私も敢えてその勘違いを正そうとは思わなかった。343は、682の取り扱い方など知らないというのに。
「準備は済んだかね、343」
サメットがマイクで問いかけた。我々の眼下で、343が親指を立てた。サメットは他になにもしようとはせず、コンソールのボタンを押し、エアロックを解除して682を解放した。
その爬虫類は吠えながら、部屋の真ん中を突っ切って突進してきた。682は脱走するにはどうすればいいか把握しており、また今が脱走の絶好の機会であることに気付いていた。唯一の驚くべき事態は、682が343に全く触れることなく真っ直ぐ通り抜けていったという事実だった。343としては、期待する様子で開いたエアロックのドアを見つめていた。彼はドアをちらりと見直して私たちを見上げ、そしてまた視線をドアに戻した。「えーっと、このドアからなにか出てくるんじゃないのか?それとも私が入ればいいのか?」
私はにやりと笑いながら、682が二つ目のドアに攻撃し続けているのを見ていた。サメットの緩んだ手からマイクを取り上げ「大口を閉じろ、」と343に話しかける前に親愛なる研究者どのにアドバイスする。「343、君は部屋の中になにも見ていないという理解で正しいかな?」
343はぐるりと部屋を見渡したあともう一度私を見た。
「この部屋には何もないぞ、ジャック。大丈夫か?」
にやにやと笑いを浮かべて私はサメットの方に振り返った。
「682は無力化できない。私の予想通りだ」
「682?」
343は叫ぶと、即座に彼の目が怒りを放った。次の瞬間には、彼は私の前に立っていた。彼はどういう訳か私よりも身長が高く、私を睨みつけた。「お前は私を682の所に連れてきたのか」私は彼の言葉を聴きながら、素早く部屋を酸で満たして682を収容するよう合図した。
「そのとおりだよ、343。何か問題でも?」"神"がお怒りだ。しかし幸運にも彼は私から離れたため、実験の第二段階をせずに済んだ。
それよりも343は私に背を向けた。「彼は私の手に負えん。自分でなんとかしたまえ」そう言うと、大股に歩いて壁をすり抜けて行った。
サメットは落ち着きを取り戻すと、怒鳴りながら私を振り返った。「いいだろう、343はダメだった。それでも構わん、準備しろSCP-963。次はお前が行くんだ!」 私はグランガンに首で合図し、体を変えるために立ち去った。部屋を出る時に最後に聞こえたのは、ドアが閉まる音と、心地よい銃の発砲音だけだった。
「それで」とサメット博士は車椅子から続けた。小型銃の恐ろしく偶発的な射撃の後、彼の右足はまだギプスをはめていた。「私たちは申請を進めなければ 」彼は停止し、ブライト博士をある種の恐怖の目で見つめた。「あれは何だ?」
助手達が彼の最終調整を手伝うなか、ブライトは穏やかに微笑んだ。彼の前にあるテーブルの上には、今やバラバラになり酷い見た目の金属棒が3つ置かれていた。ワイヤーやケーブルは奇妙な角度で外れ、 Lucky Bunchが弄ぶほどにそれは更に異様になっていく。「これは杖だ、サメット」
「そんなの見ればわかるさ、963」博士は何の手がかりもなく、怒鳴った。「でもどうしてここにそれがあるんだ?」
いまや集まった杖をしっかりと握ったブライトは、しかめ面でサメットの方を向く。「私の名前はブライト博士だ。そしてこれは682の注意を引くためのものだ。SCP‐963を682に乗せる計画はどうだった?」
「えーと、あー、ランチャーで、それから、あー、うーん……」
「その通り。これの原型を持って私はあれを怒らせるように試みて、あれが私のところへ来るようにする。そこから963を入れるのは子供の遊びみたいなもんだな」
サメットは頷いた。「もちろん、もちろんだ963───しかし、それは何をするんだ?」
決して学ばない者は存在する。また、人間の命を顧みない不死身の復讐者を侮辱する者もいる。本当に馬鹿な人達はブライトに率直な言葉を言わせる。「これだ」サメットの方を指すように杖を上げ、ボタンを押す。すぐに紫がかった電気が空中に弧を描きサメットの負傷した足を虐げた。博士は叫び声をあげ、包帯に火がついたにもかかわらず、必死で車椅子を後ろに回した。「ふむ。サメット博士、君のギプスには金属が入ってるようだ。どうしてそうなったのかな」
サメットの間抜け共が上司を追い出そうと急ぐと、ブライトはライト博士の方を向いて頷いた。「よーしソフィア。私達は何をしているのかわかっている。現在のオッズは?」
ライト博士は顔をしかめながらクリップボードを確認した。「2対1でそれが働かない。5対1で貴方がそれに乗ってサイトを荒らす。同じ賭けで貴方がサメットを殺すために暴れる。10対1で何かが上手く行かず貴方は682の中に詰まる。20対1で結局全員が貴方になってしまうことに乾杯!と」
「その賭け気に入った」
「963!」サメットは叫ぶ。彼の足は燻っていた。「お前!お前、私は! おま───!」
「サメット博士、わかってくれるかな」ブライトは他の研究者の上にそびえ立った。「私は今まで発見された中で最も危険なSCPに取り掛かろうとしている。それじゃあこの取引を君に提案しよう。もし君が自分の足にバーベキューソースをかけてくれたら、それを止めてあげるよ
ジャック・ブライトは頭痛で目が覚めたが、記憶はぼんやりとしていた。何かあったような……バーベキューソース? いや何か他の……ああそうだ。彼の記憶は戻ってきた。杖を持ちそこに立っていたのだ。獣の突進、稲光と歯、血と痛み、彼が宿主をジャンプした時の筆舌に尽くしがたい酷い感覚。
しかし今 物事は正しくなかった。彼は背中の下に冷たい石を感じた。つまりそれは彼が横になっていることを意味している。周りの人の声が聞こえたから、まだ財団に残っている可能性は高かった。そして、常にバーベキューソースがあった。待て、どういう事だ?
「ジャック? 我々は今すぐ貴方が必要です」よく知る声が上から聞こえてきた。ジャックはゆっくりと目を開き、先を見て眉をひそめた。彼の上には、ちょっと変わった鎖かたびらを付けた、よく知るメキシコ人が立っていた。彼は何だか───
「私は君を知ってる、そうだよな?」男は身を屈め、ジャックを立ち上がらせた。 「そうでもありませんよ。私と一緒に来てください」彼はジャックの腕をしっかりと握り、もう一方の手は長い杖を握っていた。ジャックは他の人達が通り過ぎるのを見て突然立ち止まった。全員が同じ格好で、心臓の上に金色の輪があり、赤い輪を囲んでいる鎖かたびらをしていた。そして全員が同じ杖を持っていた。 「君はD-113だ。君が最初だ、そうだろ?」ジャックは凝視せずにはいられなかった。あれからもうずいぶん経っていた。
「あー、答えはYesでありNoです。そしてYes。けどそうでも無い。うーん。そう、我々は貴方のやり方でやります。バカ正直に。知っているでしょう、そのどれもが本物ではありません」と、城壁や周囲の人々を指さした。 「ああ、分かりきってる。それについては評判なんだ」 「ああ、そうか、そうですね。それなら物事が、えー、楽になります。まだ準備ができていないのです。682が、ええと、物事をどう見ているかが処理出来なくて。それで、防御としてこれを思い付いたんです。ただ、それは貴方の意識だけではなく、963が関わっています。それでどういう訳か、貴方が引き継いだ物の残滓が生気を帯びているんです。貴方の一部のまま。あー、意味がわかりますか?」
「ちっとも分からない」2人は大きなドアを通っていった。「だけど、私はどこから君が来……続けて……いるのかは分かる」ジャックは声を出さずに一度だけ空を見上げた。彼の上には、SCP‐682と呼ばれる我々の限られた範囲にいる生物がいて、それは栄光に満ちていた。美しく、悪夢のような、不穏で興味深い生き物が、空、地面、水平線、地獄、ジャックと彼の城以外の全てに広がっていた。バーベキューソース。 「私は、まあ、それは、うーむ」武装した何人かが突然近くまで駆け寄ると、ジャックは眉を更に深くひそめた。老いた男はそこにいたが、彼は居ないはずだった。彼は彼等がそこに立って衝撃が和らぐのを感じることができた。「よし、分担しろ」彼は……アレから目を逸らし、城壁の方を見やった。エッシャー1が誇りに思うような捻れた、荒れ果てた城が上下にそびえていて、四隅にはエッシャーの絵の一部が棒のように立っていて、バーベキューソースの生物にぶつかっていた。紫の稲妻があちらこちらに弧を描き、獣の表面を横切って飛び、道を切り開き、命令に従って獣を揺すった。
ジャックが682を支配しているという精神的投影であるエネルギー線が、城の建造物から勢いよく飛び出した。彼がそうするように言われたことを実行して、それを自身の意思でやっていると感じることができた。彼は自分の脳の一部がこの生き物の中にあることを知っていた。目を通して見て制御していた。しかし同時にこの生き物がどのように世界を見ているのか理解しようとはしなかった。そこで、ここでは彼は自分の代わりに行動する隠喩や直喩を使って激戦を繰り広げた。 しかし長続きはしなかった。自分が知る限りやりたいことをやったというのに、ドラゴンは反撃をした。その獰猛な爪が城にくい込み、壁を粉砕した。汚れた息が壁を沿って流れ、身体の形態がよろめき、963の安全地帯へと帰った。ジャックは自身が長続きしないことを知っていた。 最後の意思で、彼はその生物を元に戻し、戻ってくるよう命令した。そして彼もまた彼の悪夢の安全の為に退却した。
ブライトはベッドの柔らかい感触を彼の下に感じた。肌触りの良いコットンシートだから、自分のベッドではない。薄いマットレス、消毒剤の匂い、彼の手首、首、胸と足にある革バンド……そう、彼は医療機関に居るに違いなかった。 「患者が目覚めました、監督官」 ブライトは、冷たい金属がこめかみに押し付けられた感触に気づき、ゆっくりと目を開けた。最初に彼の目は銃を持っている人物、監督官の分隊の一人に向けられたが、思い出せるような人ではなかった。そして愛らしいライト博士が医療の仕事をする声が響いていた。彼のベッドのそばに残された最後の空間にはモニターがあり、そこには人の黒い輪郭が見えた。 機械的な声が、識別マーカーを取り除く為に注意深くフィルターされ、彼に話しかけた。「自己証明をするんだ」識別マーカーの有無に関わらず、ブライトは輪郭の背後に誰がいるかを知っていた。 「ジャック・ブライト博士、レベル5研究員、多くのサイトの人事局長、その他なんだかんだ」 「お前の妹は誰だ?」と声は続けた。ブライトは、彼が自分自身であると証明する為に、それが質問されるべき問題だと知っていた。 「クレア・ピアース。あと、他の3つの質問にも答えておくと、31-20-35、エボラウイルス、紫の猿の食洗機だ」 「本人確認完了。ブライト博士、最後の記憶は?」 ブライトはしばらく考え込み、話し始めた。「私は……682に抵抗した、そうだよな? あぁ、杖も何もかも揃っていた!彼は963に噛み付けなかったろ、ええ?」
「ブライト博士、SCP‐963はSCP‐682と接触していた。最初の36時間、SCP‐682は昏睡状態のままだった。その後すぐに巨大な爪が成長し、収容コンテナを貫通して大規模な亀裂が生じた。信じられないことだが、SCP‐682は一人の研究員を負傷させただけで、その後大人しく収容コンテナに戻された。682は更に24時間部屋を歩き回ったが、その時点で再び昏睡状態に陥った。10時間前、SCP‐682の額からSCP‐963が排泄された。チームがそれを回収し、すぐに君が今居る身体の上に置いた。それ以来、君は何もしていない。これに何か付け加えることはあるか?」 「すまないシックス。私には何も無い。だが……」ブライトは眉をひそめ、唇を舐めた。「なんでバーベキューソースの味がするんだ?」
それ以外のどこかでは、ドラゴンは最近の取得物の周りで丸まっていた。ちっぽけな奴だな。この汚れた生物らが何かを教えてくれるとは思ってもみなかった。でもそのうちの一つは。 その獣はデイモン・スミスの記憶の周りを回り、それらを吸収し自分のものにした。そしてどのように恐怖するかを学ぶ中でその膨大な武器庫にもうひとつの道具を加え、自分自身を変化させることが出来るもうひとつの方法を加え、最終的に人間と呼ばれる災いを取り除くことができた。
俺☆
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